家族の介護ストレスが限界の時の対処法は?実例からの教訓とストレス解消法

介護の悩み

家族の介護ストレスが限界に達したと感じている方へ。介護のストレスは、時には自分を追い詰め、うまく立ち回れないこともあります。 今回の記事では、実際の事例を基に、介護が限界に達した時の対処法とその影響、そしてストレスを効果的に解消する方法について詳しく説明します。

介護が長期化すると「もう限界だ」「生きていても楽しくない」と感じてしまいますよね。介護の体験をベースに、具体的な対処法をご紹介します。一時的・継続的なストレス解消法も是非参考にしてみてください。

家族の介護ストレスが限界に達した経験

ヒビがはいるガラスのハート

介護している人は、家族として常に相手のことを考え、自分自身の気持ちを我慢しなければなりません。そのため、ストレスが溜まってしまうことがあります。筆者も、様々なストレスが毎日ありました。

最初は、家族を支えることができると思っていましたが、時間が経つにつれて、相手の要望に応えることができず、
イライラしてしまい、慣れない介護ということもあり衝突しました。親の介護には、家族だからこそ生まれるストレスがあります。

介護者の気持ち

私は30代半ばまで、東京でバリバリ働く人間でした。それが、父の介護がきっかけで地方に引っ越し、仕事の拠点もそちらに移して、介護と仕事の2足のわらじをこなす毎日が始まりました。

父は脳内出血による後遺症があり、言語障害や身体の麻痺だけでなく、怒鳴る、暴れる、殴る蹴るなどの症状もあったのです。自分のやることを後回しにしなければならない、終わりの見えない介護と仕事で心が荒んでいき、

「私は幸せになれない」
「介護で人生が変わってしまった」

と思い詰めるようになりました。

介護が必要となった父

父は、脳内出血で2回倒れており、「高次脳機能障害」があります。この後遺症にうまく対応できず衝突したり、生活環境の変化が心身ともに大きな影響を与えていました。

歩く時には右側を誰かに掴まりながら歩きます。食事やお薬の補助も必要なので、誰かがいないと生活ができません。呂律が回らないので、ほとんどの会話に通訳が必要となります。

脳梗塞など脳卒中の方の介護をされている人はご存じかと思いますが、脳の損傷した部分により、後遺症も様々です。

高次脳機能障害とは?

交通事故や頭部のけが、脳卒中などで脳が部分的に損傷を受けたため、言語や記憶などの機能に障害が起きた状態を言います。

注意力や集中力の低下、比較的古い記憶は保たれているのに新しいことは覚えられない、感情や行動の抑制がきかなくなるなどの精神・心理的症状が現れ、周囲の状況にあった適切な行動が選べなくなり、生活に支障をきたすようになります。

引用:東京都心身障害者福祉センター

父の主な症状としては、下記の4つでした。

・右半身の麻痺
・言語障害
・順序や、数字などの細かい思考の低下
・感情のコントロール



ストレスの原因

ミニチュアの椅子とリーズンの文字ブロック

父親の世話をしながら、仕事もこなす毎日。自分のことは後回しにしなければなりません。
そんな慣れない介護生活の中、ストレスがどんどん溜まっていきました。

時間の管理

時計とタイムの文字のブロック

介護と仕事、家事の両立は、こなさなければいけない事が多く、常に時間に追われていました。父は、生活全般に介助が必要なため、仕事の合間に、薬の介助から食事の介助までこなさなければいけません。
介護が始まると、毎日の生活リズムが変わり、自分のことは後回しの生活です。仕事は進まず、イライラが募ります。急な病院の付き添いなども発生してしまい、毎日の時間の管理がとても負担に感じていました。

自分のことができない、仕事や家事が溜まってしまうということに大きなストレスを感じたのです。

相手とのコミュニケーション

口論する女性と高齢者

思うように動かない身体や、判断力の低下により、介護される側もイライラしています。そのストレスを真っ先にぶつけるのは、傍にいる家族です。

「言いたいことが分からない」
「言ったように動いてくれない」
「わがままばかり」


コミュニケーションがうまくいかず、お互いにストレスになり、関係もギクシャクしていきます。

特に認知症や脳卒中など脳の疾患を抱えていると、記憶や感情のコントロールもうまくいかず、私たち介護者とのすれ違いや価値観の違いから、衝突することも珍しくありません。

生活の変化

育児と仕事と介護のマークと女性のミニチュア

介護には、食事、入浴、排泄など、日常生活の支援が必要です。時間や労力を使わなければ、十分なケアができません。そのため、介護者の生活が大きく変わってしまうこともあります。

自分たちで介護できない場合、介護施設への入所を検討してもいいでしょう。しかし、施設への入所費用や、毎月の費用がかかるため、経済的な負担が大きくなります。その費用を捻出するために家族の生活が変化することもあります。

このように、様々な理由から、介護により生活スタイルが変わってしまい、それがストレスとなってしまうことがあるのです。

家族の介護ストレスが限界に達したときのサイン


親の介護は、長期間にわたって続くことが多く、介護によるストレスは、うつ病や不眠症などの身体的・心理的な病気を引き起こすことがあります。

ストレスを感じること自体は自然なことですが、限界に近づくと、いくつかのサインが現れます。
筆者の場合は不眠だけでなく、無力感や社会からの孤立感もありました。

これからお伝えする「限界のサイン」が現れたら、早めの対処が必要です。

身体的なサイン

ストレスが限界まで達すると身体的なサインが現れます。
異常に疲れやすかったり、疲れているのに眠れない、なぜか食欲が出ないなど、身体がSOSを発信してきます。

疲れがたまる
夜眠れなくなる
食欲が減退する
体調が悪化する(身体のリズムが崩れる)

女性ですと、ホルモンバランスが崩れ、いつもと違う症状が出ることもあります。

「たいしたことないから大丈夫」
「すぐによくなるだろう」

介護者は、そう思いがちですが、自分を労わることも大切です。気付いたときに身体を休めましょう。

心理的なサイン

心理的なサインには注意が必要です。精神的な限界は、一人では対処できないこともあるからです。
症状を自覚しているうちに対処しないと、介護うつを引き起こす可能性もあります。

無気力
うつ状態
イライラが募る
感情的になる
涙が止まらない

感情的になったり、イライラが募ったり、限界をむかえると、心も上手にコントロールできなくなります。

そのような状態が続くと、認知症の親への暴力や、ストレスの矛先が自分自身に向けられることもあります。私の場合は自分自身でした。

【自身の経験】介護ストレスから包丁を自分に向けた

父の本格的な介護生活が始まってしばらくすると、介護と仕事のストレスで、毎日が憂鬱な日々が続きました。夜になり、ポロリと涙が出始めると、止まらなくなり、明日が来るのが嫌になってしまったのです。

「あの怒鳴りは聞きたくない、世話もしたくない」

そばにいたくないのに、世話をしなければならない、その時間がとても苦痛だったのです。そして、我慢が限界になり、

「明日なんて来なければいいのに」「死んだらつらい毎日が楽になる」

そんな思考にのまれたある夜に、包丁を握りしめていました。

一線を越えなかった理由


包丁を握りしめながら、思いました。

「痛いんだろうな、でも楽になれるかもしれない」

そう思って力を込めた時に、頭に浮かんだのは愛犬の笑顔でした。10年近く共に生きてきたわが子のような愛犬です。

その瞬間、一気に思考が変わりました。楽になりたいと思ってたのが「絶対に嫌だ!」に180度変わりました。

「(愛犬に)触れなくなるより、重要なことなのか?死ぬなんていつでもできる。
だったら嫌なこと手放してしまえばいい。地球が終わる訳でもないしなんとかなるだろう」

そう、この瞬間に開き直ったのです。気持ちがうんと軽くなったのを覚えています。

今思えば、その頃の自分は、一人で思いつめて、気持ちに出口がなくなっていたのだと思います。

実践から学ぶ:ストレスが限界に達した時の対処法

対処法の大きなメモとペンとスマホ

理想的なのは、介護から離れる時間を作り、ストレスをため込まず、家族との時間をより良いものにすることです。それでも「限界かもしれない」そう思った時は、介護の専門家に相談したり、施設への入所を考えてもいいかもしれません。

介護と離れる時間を作るには、一時的なものとして通所のデイサービスなどが挙げられます。

ですが、どうしても気持ちの整理が追い付かない時もあります。筆者は介護からの一時避難をしました。

介護から一時避難する

大きな手に追われる女性

親との衝突を避けるために、まずは、何がわからないのか?違うならどうしてほしいのか?など、素直にこちらの気持ちを伝えるようにしました。
そして、目の前に溜まっている仕事も進めます。それでも父が暴れだし、イライラの限界に来たら、家を飛び出しました。

目の前の「介護」から一時避難です。

こうして何度か逃げ出すうちに、父の暴力がうんと少なくなったのです!距離を置いたことで、父は冷静になったのだと思います。「ごめんなさい。戻ってきて」介護生活5年目にして初めて聞いた謝罪の言葉でした。

離れていた数時間で、私自身も冷静になれました。「怒っているばかりじゃだめだ、何も解決しない」これからも続く介護の生活に前向きになれました。これはお互いが「家族だから」できる技だと思います。

十人十色と言いますが、介護も十家十色。それぞれのカタチがあっていいのではないでしょうか?今では思いつめることがなくなりました。

身体が思うように動かないストレスを、父も抱えていたのだと思います。その矛先が、一番近くにいる家族になってしまうのが「家族の介護」なのかもしれません。

ですが、我慢を続けるにも限度があります。「介護からの一時避難」も場合によっては必要だと思います。

要介護者を、デイサービスなどの介護施設に通わせたり、数時間だけ兄弟や他の人に見てもらい、その間に日帰り旅行に行くのもいいかもしれません。

介護と離れる時間を作ってください。休息時間をつくるためにもレスパイトケア(休息)を心がけてみましょう。

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相手の気持ちを考える

介護をしていると、イライラが収まらず、自分本位な介護になってしまいます。ですが、相手が何を考えているのか?理解できれば捉え方も変わってきます。

ほんの少しだけ、少しでいいんです。介護している相手の気持ちを考えてみましょう。衝突も避けられます。

家族の認知症介護の実例や、「介護される人の気持ち」を理解するための書籍を紹介しておきます。是非ご覧ください。

マンガ介護する人・される人のきもちがわかる本
元・介護職のマンガ家北川なつさんが、みんなが抱える介護の悩みから、日々の本音、介護現場の現状までマンガ+文で解説します。現役の介護職員107名のアンケートを実施。
介護する人、される人のきもちが知りたいすべての人へおすすめです!

人に話す

喫茶店で会話する娘と母


「そろそろ限界かもな」

そう感じていたら、一人で抱え込まず、誰かに話してください。ケアマネージャーさんや、地域の介護専門施設の包括センター、役所の福祉課などがいいでしょう。

もちろん友人知人でも構いません。同じ境遇の知人と出会える場所に出向くのもいいかもしれません。家族以外の人の言葉が、救いになることもあります。

また、家族とコミュニケーションを取り、一緒に話し合うことでストレスを軽減することができます。介護をする人だけでなく、家族全員が協力し合い、負担を分担することも重要です。

我が家では、私と母が仕事の合間をぬって役割分担をしています。

話せる相手がいない時

打ち明けられる相手がいない時は、インターネットを利用したり、介護者が集まる場所へ出向いてみましょう。

どちらも同じ介護をしている者同士、きっと共感してくれます。家族介護は、各ご家庭で独特の悩みがあるかもしれません。ですが、同じ介護者同士ならきっと理解してくれるはずです。

インターネットを利用

匿名で話せるサイトや、悩みを相談できるもの、SNSで介護者同士の集まりに参加してもいいかもしれません。

キャプスにも匿名の掲示板があります。名前は公開されません。だれにも分からずに愚痴をこぼしていいんです。遠慮せずに是非、利用してみてくださいね。

つぶやきたい画面

介護者が集まる場所に出向く

自治体や、介護施設などで介護者を支援する催しがあります。内容も様々で、介護に役立つセミナーや、アロマセラピー、温泉旅行、喫茶店の割引利用など、多種多様に用意されています。

介護施設の利用料金の補助券なども発行している自治体もあります。積極的に利用しましょう。

ストレスを受け入れる・発散させる

いるいらないの矢印

コミュニケーションがうまくいかなかったり、イライラが収まらない時に、自分の気持ちと向き合うことも大切です。

「あ、すっごいイライラしてる」

このように自分の感情をそのまま素直に受け入れてみてください。そうすることで、気持ちに余裕が出てきます。そうして「その日のうちにストレスを解消できたら楽になる!」ということに気づきました。心がけたことは2つ

● 自分の感情を受け止めてみる 
● イライラ・ムカムカ感情はその日のうちに手放す

それからすぐに行動に移しました。「すぐにできること」「すっきりすること」これを軸にいろいろと試してみました。

● 大声を出す
● 体を動かす
● 涙を流す

カラオケで思いっきり歌ったり、ジョギングしたり、室内でストレッチもいいと思います。読書や映画鑑賞などで泣ける作品をみて気分転換してもいいかもしれません。

このように、無理のない範囲で「すぐに」出来ることを試してみましょう。気持ちもスッキリしていきます。詳しい方法はこちらをご覧ください。



さらに、読書もおすすめです。筆者は介護の参考書から、ストレス発散に役立つ書籍をたくさん読みました。辛い毎介護生活の中で、本は先生と言っても過言ではありません。

この時の多読のおかげで、笑いが増える介護生活へと変化しました。その時に読んだうちの一冊をご紹介しておきます。

まとめ

介護される方も、思いどおりにいかない身体や行動でイライラしています。私たち家族も、そのストレスと上手に付き合っていかなければいけません。

限界かな?そう感じたら、下記の5つを試してみてください。


・人に話す
・一時避難
・自分の感情を受け止めてみる 
・ストレスはその日のうちに手放す
・声を出す、身体を動かす、涙を流す

何でもない様に思えますが、少しのことで心も軽くなります。読書は本当におすすめします。

たくさん読めば読むほど、知識が増える分、考え方も捉え方も変わってきます。今の自分に「ピンッ」と感じる本があれば、息抜きに1冊手に取ってみてください。



それでも、介護のストレスで辛いときは、吐き出してください。私たちキャプスには「介護の専門家」が多数在籍しています。公式LINEでは、それぞれの専門家たちが、出来る限り質問にお答えいたします。もちろん無料です。

「親の介護が限界、どうしたらいいの」
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投稿者プロフィール

音野 響
音野 響
元銀行員。40代副業ライター。
得意分野は介護と金融
時々犬(愛犬家・証券外務員2種保有)

脳卒中による半身麻痺、
大腸がんなど病気のオンパレードで
認知症状も増えてきた父親の介護を
10年以上やっています。

モットーは「毎日明るく」マンガと小説好き。
介護ストレスと上手に付き合っています。

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