介護しながら時間を捻出するには?すぐできる時間捻出の8つの方法

介護の豆知識

家族の介護をしながら、自分の時間や仕事の時間を捻出するのは大変ですよね。しかし、このまま何もしないと大変な現状は変わりません。実は、ちょっとした工夫をすることで、自分の時間や仕事の時間を取り戻すことができます。

今回は、介護中でも時間を捻出する8つの方法をご紹介します。時間の棚卸をするだけで、意外な発見もあります。毎日に埋もれているすきま時間を有効活用して、充実した介護ライフを実現させてください。

なぜ介護をすると時間が捻出しにくいのか?

こめかみに指をあてている女性

筆者も仕事をしながら介護をしており、時間が足りないという問題は深刻でした。 特に、必要なケアをしながら急ぎの仕事もやりつつ、自分自身の時間も確保するのは一筋縄ではいきません。

知人も、介護者として仕事と介護をしていました。 彼女は毎日12時間以上の勤務をこなし、自宅では生活の介助全般を家族とともに行っていました。そのため、休憩もろくに取れない日々を過ごしていました。

「休みたいけど休めない」という悩み。彼女の声には、多くの介護者が共感する問題が詰まっていました。

介護にかかる時間は意外と少ない

円グラフと横に立つミニチュア人形

実際に介護に関わっている時間は、どれくらいなのでしょうか?
総務省の統計によりますと、一週間の介護時間の平均は、男女ともに、2時間台となっています。※1

要介護度が高いほど介護時間は増えますが、介護者のほとんどは「手を貸す程度」となっており、要介護5の介護者でも終日介護の人は約半数となっています。※2

介護時間のグラフ

体感では、あれもこれもやっていて時間がとれないと感じますが、介護にかかっている時間は案外少ないのが現状です。

あくまでも統計上ですが、一日のなかで睡眠や食事を引いても、自由時間は作ろうと思えば作れるのです。時間のやりくりで、一日の満足感も変わってきます。

※1 総務省 令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 より
※2 公益財団法人 生命保険文化センター「介護をする人が介護にかける時間はどれくらい?」

時間を捻出する8つの解決策

介護者の時間を効率的に捻出するためには、いくつかの方法が考えられます。大切なことは、やらないことを決めること、日常のすきま時間を生かすことです。

まずは、日常のルーチンを改めて考えることが重要です。次に効率的な介護ツールやITを活用することで、手間を減らし、時間を有効に使う方法も探しましょう。

24時間の中で生まれる「すきま時間」は、つもれば結構な時間になります。そして最後に、周囲のサポートを積極的に求めることで、負担を軽減し、より多くの自分の時間を確保する方法を考えます。

1.毎日の行動を書き出してみる

1日の動きというものは、意識をしていないとなかなか把握できません。24時間の行動を書き出してみてください。

筆者は円グラフにしていました。上のグラフは1日のグラフです。お薬の介助、食事、排泄の介助、病院付き添い。介護をしている時間を知りたくて、紙に書き出してみたら、数時間でした。

体感するほど、時間はかかってないことに驚きました。このように、書き出して把握してみると気持ちも軽くなり、心に余裕も生まれます。

ですが、仕事をしたい時間に介護をしなければいけないことも多く、それがストレスの原因となっていました。どうしたらうまく動けるのかが、ずっと悩みの種でした。

例えば、介護と仕事時間を両立したい場合、体感では、介護時間が多いと感じてしまいますが、実際は1日の3分の1程度。それでも、仕事時間が足りないと感じていました。原因は、身体の疲れ。機敏に動けなくなっていました。

せめて、病院に付きそう時間帯を何とかしたいと思い、それ以降、父の病院は、毎回午前中の一番早い時間に変更。この「時間帯の移動」だけでも、午後は仕事にあてて、夜は自分のために使えるようになりました。

このように、「紙に書き出す」ことで、一日の行動の整理整頓ができます。どれくらい介護にかかっていて、どうすれば時間が捻出できるのか?ご自身の負担を軽くする手助けにもなりますよね。是非、紙に書き出してみてください。

紙に書き出したら、時間を捻出する方法を考えてみましょう。

やることに優先順位をつける

あれもこれもやっていると、すぐに時間が過ぎていきます。そんな時は、やることに優先順位をつけてしまいましょう。

とくに、一人で介護をされている人、介護と育児もされている人は、1日が24時間では足りないと感じる方もいらっしゃるでしょう。

「洗濯もやらなきゃ」
「子供のお迎えに行かなきゃ」

どれも完璧にこなすのは不可能です。自分が介護や仕事にあてている時間はどれくらいか?残った時間を有効に使うためにも、24時間の使い方を一度考えて、優先順位をつけてしまいましょう。

時短勤務など、日中は仕事で動けない人もいます。また、病院の付きそいなども、どうしても外せません。最低限「やるべきこと」を優先して、残った時間をどう使うか考えるほうが、気持ちも楽になります。

やらないことを明確にする

意外とできていないことは「やらないこと」を決めることです。紙に書き出して優先順位が決まったら、時間内でどうしてもこなせないことは、別の日に持ち越すことも必要です。本当に必要な介護は、案外多くはありません。

介護をしている人たちは、真面目な人も多く、「あれもできない」「自分は未熟だ」とご自身を責めてしまいがち。やることはやる、できないことはできないと線引きをすることが、介護を負担なく続ける秘訣です。

そのためにも「やらないことをきめる」ことが、時間の捻出の第一歩となります。

2.すきま時間を見逃さない

時計とマグカップ、積み上げられた本

介護生活の中で時間を捻出する一番の方法は「すきま時間の活用」です。介護は大変ですが、かかっている時間は、思った以上に短いので、活用できる時間は見つかるはずです。実際、この執筆もすきま時間だけで書いています。

我が家は父のリハビリのために、毎朝全員で散歩をしています。車でお迎えも必要なので、365日補助する私もお休みはありません。その朝散歩が終わってから、朝食までの30分をすきま時間として、執筆にあてました。

毎日のやることを紙に書き出したら、冷静に考えてみてください。

「あら?ここの30分と、午後のここだけで1時間も時間ができるな」

うれしい発見があるかもしれません。すきま時間を、休憩にあててもいいですし、読書もいいですよね。あなただけの「すきま時間」を満喫してください。

3.短い休息 レスパイト時間を作る

「レスパイトケア」は介護者に使われる言葉で、レスパイトとは小休憩の意味。1日中、ずっと動き回れる人はいません。疲れた身体と心のままでは動きも鈍くなり、頭も回らなくなります。

10分でも20分でもいいので、ちょっと小休憩を入れてみてください。時間を捻出するための、休憩時間です。その後の動きにもキレがでて、優先順位にあげたことが、テキパキとこなせるようになります。この小休憩は効果絶大です。

やるべきことを済ませてしまえば、10分20分の時間は生まれます。大切なのは、短い時間でもしっかりと休憩すること。気がぬけない介護と、集中が必要な仕事、心とからだが疲れていればいるほど、この短いレスパイト時間は、効果を発揮してくれます。

4.専門家や公的機関に相談する

患者と看護婦


認知症の介護をなさっている方、寝たきで要介護度が高い人の介護をされている方などは、なかかな休憩も難しい場合もあります。介護保険が使えなくて、デイサービスも使えない場合もあります。

介護サービスには、シルバー人材派遣などの、格安のサービスもあります。調理の時間が負担に感じていたら、民間の配食サービスも利用できます。徘徊や暴力が頻繁なら、かかりつけ医だけでなく、認知症の専門医を受診して、お薬の処方を相談してもいいかもしれません。

「うちなんて何も使えない」

あきらめる前に、専門家や公的のサービス機関に相談することをおすすめします。

サービスを利用するしないにかかわらず、地域の包括センターに相談してみてください。包括センターとは、お住いの地域によって設置されている、介護の相談窓口です。無料で相談ができます。電話やメールでの相談も可能。

「どうせ何もかわらない」

あきらめる前に、一度連絡だけでもしてみてください。第三者の意見は、ご自身が思う以上に支えとなります。

5.公的制度を利用する

日本国憲法には、働く介護者を守る法律もあります。時間単位で休暇を取得できる「介護休業法」があり、「介護休暇」と「介護休業」の2種類が定められています。休暇の場合は半日か1日単位、休業の場合は通算93日間、3回まで長期休暇(休業)が取得できます。

ただ、現実的に介護休暇を取得している人は少ないのも現実です。職場によっては制度の利用がためらわれたり、周りに周知されていないこともあり、なかなかこの制度は浸透していません。

そんな時は、「時短勤務」という方法も考えてみてください。時短勤務なら、今まで積み上げたキャリアも無駄にならず、引き続き仕事も続けられます。

ただ、同僚や上司などに自分が時短した分、仕事の負担がかかってしまう心配もあります。反発が起きないよう周りの人たちに介護をしている理解を得ると共に、普段からコミュニケーションも図りましょう。

6.代行サービスを利用する

介護保険を利用したヘルパーさんは、何をどこまでやるのか、サービスの範囲が決められてます。範囲以外のちょっとしたことを依頼したいときは、代行サービスもあります。

例えば、病院の付き添いと買い物、お庭の草むしりと掃除全般など、やるべき作業は家事代行サービスを利用することで解消できます。有償にはなりますが、家事全般の代行や介護食の宅配などもあります。

料金も様々です。食事の宅配は、おかずだけなら数百円のところもあります。徘徊などの認知症介護や、要介護度の高い方のお世話を毎日していては、体力的に大変です。せめて、食事だけでもサービスを使うことも視野に入れてみてください。

7.生協・インターネットの活用

毎日の生活の中で買い物時間は欠かせません。育児中の人は生協などの共済の宅配を利用される方も多く、介護しているなら、買い物はインターネットで済ませる方法もあります。

メリットは、重い物も玄関まで運んできてくれること、ぽちっと押すだけで注文完了するので、外出して買い物した場合と比べると、かなりの時間が節約できます。冬場なら、灯油の宅配も頼めますし、重量のある飲料水やお米なども、インターネットで注文されている介護者さんもいます。

8.介護サポートグッズを利用

介護に役立つグッズもたくさんの種類が出ています。グッズを利用することで、常に張り付いた介護よりも時間の融通がききます。

Webカメラなどは動きを感知したら、スマートフォンにお知らせしてくれるものや、会話できるカメラもあります。ただのカメラですと、設置を拒否されてしまいそうですが、会話できるなら、コミュニケーションのアイテムとして検討してもいいかもしれません。

また、夜の睡眠時に活躍してくれる介護用品もこだわってみましょう。夜に少しでも時間ができれば、介護者の負担が随分と変わります。

長時間用おむつだけでなく、漏れ防止のパットやパンツ、防水シーツなどを組み合わせれば、朝までの数時間の確保ができます。おむつはお試しパックも販売されているので、是非一度使ってみてはいかがでしょうか?

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介護中に捻出した時間の有効活用

本とティーカップと花

介護の時間を効率的に捻出することは大切ですが、その時間をどのように活用するかもまた重要です。

自分のために使ってもいいですし、介護の技術向上のための勉強でもいいでしょう。すきま時間を使って、生活費を作る時間に当ててもいいかもしれません。

自分のための時間にする

自分自身のためにすきま時間を使うなら、趣味や好きなことに時間を使うことをおすすめします。 読書、映画鑑賞、散歩、趣味の手芸や料理など、心を落ち着ける活動を取り入れることで、日々のストレスを軽減することができます。

さらに、友人や家族とのコミュニケーションの時間として過ごすことで、人間関係が深くできます。 長い間会っていない友人との再会や、家族との質の高い時間を過ごすことで、心からリフレッシュできるでしょう。

学びの時間にする

自己啓発や学びの時間として活用する方法もあります。介助の方法を学ぶことで、毎日の介護生活を向上させることもできます。絵を描きたいのなら、おもいきって絵画教室に通うこともできます。

外出が難しいならオンライン講座やセミナーを受講することで、自宅にいながら新しい知識やスキルを身につけることができます。

在宅で収入を増やす

すきま時間を活用して収入を増やす方法もあります。例えば、インターネットのフリーマーケットサイトに、家の不用品を出品してみたり、ご自身の経験を活かしたオンラインでのフリーランスの仕事なども可能です。

介護で仕事を辞めてしまった方も、自宅にいながら収入を得ることもできますよね。介護を理由に積み上げたキャリアをなくすより、すこしの時間で収入を作ることもできます。これらの活動は、時間と場所に縛られずに済むため、介護の合間に取り組むことが可能です

まとめ

介護しながら、時間を捻出する方は8つ。

行動を書き出す
すきま時間を見逃さない
休憩時間を確保する

専門家に相談する
公的制度を活用する

代行サービスを利用する
インターネットを活用する
介護のサポートグッズを利用する

まずは、すぐにできるものから始めてみましょう。ほんの少しの時間が、一日を充実したものに変えてくれます。
紙に書き出す、やらないことを決める、優先順位を変えてみる。
限られた時間を充実するためにも、動き方を見直してみることは必要です。是非、時間の捻出方法を試してみてください。

投稿者プロフィール

音野 響
音野 響
元銀行員。40代副業ライター。
得意分野は介護と金融
時々犬(愛犬家・証券外務員2種保有)

脳卒中による半身麻痺、
大腸がんなど病気のオンパレードで
認知症状も増えてきた父親の介護を
10年以上やっています。

モットーは「毎日明るく」マンガと小説好き。
介護ストレスと上手に付き合っています。

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