家族に終身介護が必要になったら?生命保険高度障害認定を知ろう!!

介護の豆知識

「もしも家族に終身介護が必要になったら…。」病気や認知症、あるいは不意の事故など。

悲しいことですが、常に何も変わらない明日が来るとは誰にも保証されてはいません。

現役世代が終身介護になると、家計が打撃を受けることも多く、生活に困窮することもあるでしょう。 

転ばぬ先の杖として生命保険に加入している人も多いと思いますが、今回は、その生命保険の中でも重度の要介護状態となった時に役立つ情報をお知らせします。

高度障害状態とは?

高度障害状態とは、ケガや病気などによって体の機能が損われ、自分では通常の日常生活を営むことが極めて困難となった、非常に重い障害状態を指します。

高度障害と認められるためには、次のような状態のいずれかに該当することが条件となります。

  1. 視力の障害
  2. 言語またはそしゃく能力の障害
  3. 中枢神経系・精神または胸腹部臓器の障害による終身介護状態
  4. 両上肢の障害
  5. 両下肢の障害
  6. 一上肢の切断と一下肢の障害
  7. 一上肢の障害と一下肢の切断

2.の状態については、寝たきりの状態を指します。

その介護の状態を具体的に挙げてみます。

介護の状態

  • 食物を摂取できない ・・・ 自らの力で箸やスプーン・フォーク等の食器を使用 し、食物を口まで運ぶことが不可能な状態
  • 排便・排尿ができない ・・・ 洋式トイレを基準として、大便・小便の排出が自分では不可能な状態
  • 排便・排尿の後始末ができない ・・・  大便・小便を排出した後に、汚物の身体への付着をトイレットペーパー等で拭うことが不可能な状態
  • 衣服着脱ができない ・・・ Tシャツやトレーナー等を脱ぎ着することができない状態
  • 起居ができない ・・・ 横になった状態から、自分の力で起き上がり座位を保つことが不可能な状態。
  • 歩行ができない ・・・ 他人の介助がないと、自分の力で歩けない状態。ただし、杖・手すり等を使えば歩行できるなら高度障害に該当しない。
  • 入浴ができない ・・・ 他人の介助がないと、自力で浴槽に入ったり出たりすることが不可能な状態。ただし、手すり等を使って行えるなら高度障害に該当しない。

上記の状態の全てに該当する場合が高度障害と認められます。

以上のように、高度障害とは視力や言語機能を失ったり、寝たきりになったり、手足2本以上が切断や麻痺等で動かせないという、相当に重い障害状態を指します。

この基準は労災や障害年金などの等級、公的介護保険の要介護認定とは異なる保険会社独自の基準です。

要介護度や障害等級の認定で、高度障害保険金が支払われるとは限りません。

生命保険の高度障害保険金について

生命保険(死亡保険)は被保険者が死亡しないと保険金は下りないと、思っている人もいるかもしれません。

しかし高度障害は非常に深刻な状態であるため、被保険者が高度障害になった場合には、死亡保険金と同額のお金が下りるのです。

この下りるお金を「高度障害保険金」と言います。

下りた高度障害保険金は非課税となるので、まとまったお金を受けとっても税金はかかりません。

ただし、加入している生命保険が高度障害保険金を保障対象としていないならば、この保険金はそもそも受け取れません。

高度障害保険金が受け取れる条件は?

高度障害保険金が受け取れる条件は次のようになります。

高度障害の原因が、「責任開始日」以後に発生した約款所定の不慮の事故が原因の障害または発病した病気であること

責任開始日とは、生命保険会社が受取人へ保険金の支払いを開始しなければならない、契約上の責任が発生した時期を言います。

生命保険会社の約款に定める高度障害状態に該当すること

前の章で説明した障害状態に該当すれば問題ありません。

症状の回復がもはや見込めないこと

治療や手術で回復することが見込めない状態を指します。なお、これ以上の悪化を防ぐ リハビリ等を行う場合には、問題なく高度障害保険金が下ります。

高度障害状態になっても保険金の支払いに該当しない時とは?

高度障害保険金が受け取れない主なケースは次の通りです。

告知義務違反

保険契約の際には告知書の質問項目に、ご自分の持病や傷病歴を正直に記載する必要があります。

これを「告知義務」と言います。

契約失効

保険料を滞納してしまった場合があげられます。

責任開始日前に障害状態となった

申込み、告知・診査(告知書や健康診断書等)、初回保険料の払込みの全てが完了しない限り保険金は下りません。

故意に高度障害状態になった

被保険者自身が、自傷・自殺行為等を行い故意(わざと)に約款に定める高度障害状態になったことが該当します。

高度障害保険金を受け取った後の留意点

高度障害保険金を受け取った後に気を付けておかねばならないことがあります。

それは、高度障害保険金を受け取ったら、当該保険契約は解消されるということです。

つまり、高度障害保険金を再び受けられなくなることはもちろん、死亡保険金も下りなくなります。

高度障害状態になった人で、公的介護保険や障害年金等が利用でき介護資金にある程度余裕もある場合は、いきなり高度障害保険金を利用することは慎重に検討しましょう。

団体信用生命保険の高度障害保険金とは?

住宅ローンを組んだときに、多くの人が加入している団体信用生命保険です。

この保険は、万一ローン返済者が死亡してしまった場合に、死亡保険金により残ったローンを返済してくれる保険です。

団体信用生命保険も基本的に生命保険であるため、高度障害状態になると保険金が支払われることになり、ローンの残債が返済されます。

保険金を請求するには

高度障害保険金は被保険者が高度障害状態になった場合、原則として保険金受取人が請求することになります。

生命保険会社へ電話連絡する場合は、できるだけ被保険者の状態、障害の原因等を記載したメモ書きを読みあげて電話担当者に報告し、今後どのような請求手続きを行えば良いか、しっかりと聞いてから行動しましょう。

保険金の受取人が(認知症等で)請求できない場合

高齢の家族が保険金を請求する場合は、保険金受け取りや給付の手続きを適切に行えるかどうかは重要な問題です。以下では、受取人の親が認知症を発症した場合に代理で保険金請求を行う方法についてご紹介します。

指定代理請求特約を利用する

指定代理請求制度とは、被保険者本人に特殊な事情がある場合、代理人が保険金を請求できる制度です。一般的に被保険者の配偶者や3親等以内の親族は代理人になることができます。

指定代理請求特約は生命保険契約後でも指定できます。

成年後見制度を利用する

生命保険金の受取人が認知症になったときに、多くのことに対応できる策として、まず考えられるのは、成年後見制度でしょう。

成年後見制度は、精神上の障害により物事の道理を理解する能力が欠けた状況にある人がいるとき、家族などが家庭裁判所に請求すると成年後見人を選任してくれる制度です。 

法定相続人代表が請求する

受取人が認知症であった場合、法定相続人の代表が保険金を請求できる場合があります。

法定相続人とは、民法によって遺産を相続する人と定められている人のことです。

生命保険会社によって多少違いはありますが、夫の法定相続人が妻と子であれば戸籍謄本等を提出して子が請求できます。

この場合は、生命保険金は受取人である認知症の妻に支給されますので、再度その保険金を金融機関から引き出す手続きが必要になります。

まとめ  高度障害というものがあることを覚えておこう

ここまで見てきたように、高度障害状態には細かい基準があって、条件もかなり厳しいものです。

しかし、保険に加入しているのであれば、自分がどのような保障されているのか、あるいは親や家族がどのような保険に入っているのかは、確認しておきたいものです。

また、普通の生命保険も団体信用生命保険も、加入者側からの請求がなければ保険金の支払いもなかったり、ローンが返済されることもありません。

万一、不幸にも大きな障害や疾病を負ってしまったときには、”もしかしたら高度障害に該当するかもしれない”と思い出して行動を起こせるように…

そのためにも、このような制度があるということを認識し、必要な際には活用していただきたいと願います。

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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