親の介護と仕事の両立のために時短勤務について知ろう!

介護の豆知識

親の介護と仕事の両立のためには、時短勤務を利用することもひとつです。
親の介護をしなければならなくなり働きたくても今までと同じ働き方を続けることが難しくなる方もいらっしゃると思います。そのような際には時短勤務を利用しましょう。本記事では、時短勤務の制度やメリット・デメリットを解説していきます。

親の介護と仕事の両立

頭を抱えている女性

近年、高齢化が進み、親の介護をしなければならない人が増えてきています。
親に介護が必要となる年齢は、多くの子供が「働き盛り」の年代にあたります。
しかし、
介護で休むことが多くなってしまった
病院の付き添いや介助のため、早退や遅刻が多くなってしまう
親を家にひとりにするのは心配
といった面から、介護と仕事を両立するのは難しいと感じ、実際に離職してしまう人も多くいます。

しかし、介護が原因で仕事を辞めてしまうと、復職したいと思ったときになかなか採用がかなわなかったり、介護だけの毎日に心身ともに疲弊してしまう、金銭的に余裕がなくなるなど、デメリットも多いのが事実です。
そのような方におすすめしたいのが時短勤務です。時短勤務は短時間勤務とも呼ばれ、決められている労働時間を短縮することができる働き方です。

時短勤務について

時短勤務の概要は以下のとおりです。

<介護を理由として時短勤務で働くことができる人>
要介護状態(負傷や疫病または身体上もしくは精神上の障害によって、2週間以上の期間、常に介護を必要とする状態)の家族を介護する必要がある人

<家族(要介護者)の範囲>
父親・母親・配偶者(事実婚も含む)、子(養子を含む法律上の親子関係がある子)、配偶者の父親や母親、祖父母、兄弟姉妹、孫

<時短勤務の代替措置>
会社によっては時短勤務の制度を設けていないところもあるかもしれません。
しかし、会社側は介護をしなければならない労働者に対し、時短勤務を含め次のうち1つ以上の制度を設ける必要があります。

  1. 時短勤務(短時間勤務制度)
    • この記事のメインテーマである制度です。時短勤務は1日、週または月の所定労働時間を短縮するものです。
  2. フレックスタイム制
    • 必ず勤務すべき時間帯とある時間帯の中であれば労働者が各自で出勤・退勤時間を設定することで働く時間帯をそれぞれの労働者に委ねる制度です。
  3. 時差出勤
    • 始業または就業の時刻を繰り上げもしくは繰り下げることで時間をずらして働くものです。
  4. 労働者が利用する介護サービスの費用の助成
    • 会社で働いているからこそ利用することができる控除制度や補助金制度もしくは介護サービス費用の助成に準ずる制度があります。

会社に時短勤務がない場合でもこれらの制度がないか確認してみてください。
しかし、入社1年未満の方や1週間の所定労働日数が2日以下の方は時短勤務を申請する対象にならないので注意が必要です。
(参考:厚生労働省「短時間勤務等の措置について」

時短勤務のメリット・デメリット

会社で会議をする人たち

続いて、時短勤務のメリット・デメリットについて知っておきましょう。

〈メリット〉

仕事以外の時間が増えることで精神的に楽になる
まず1つ目に挙げられるのは精神的に楽になるということです。フルタイムで働き介護もしていると、自分の時間が少なくなります。自分の時間がなくなると心に余裕がなくなり、つい要介護者の方に当たってしまうという例もたびたび耳にします。
逆に、離職をしてしまい、介護のみの生活になってしまうと、社会とのつながりがなくなり、心身が疲弊してしまうこともあります。
時短勤務により、仕事と介護の両立をすることで、ある程度バランスを保つことが可能になります。

キャリアが継続しやすくなる
厚生労働省の調査によると、介護・看護を理由に離職した人のうち再就職を希望している人は40代で約7割、50代で約6割、60代で約3割となっています。
しかし、正社員として働きたくても非正規雇用でしか雇われなかったり、職歴に空白期間ができたことにより採用されにくくなったりするため、一度職場を離れると自分の希望通りに働きにくくなるのが現状です。
介護が原因で離職・退職するよりも、時短勤務で仕事を続けることで、その後のキャリアに大きく有利になるでしょう。
(参考:内閣府 「仕事と生活の調和」推進サイト

〈デメリット〉

収入が減る
デメリットとして最も大きいのは、収入が減ることです。厚生労働省は時短勤務をする人の基本給を労働時間に比例して減額することを認めています。そのため、成果や売り上げに応じて給料が決定する歩合制でない限り、ほとんどの会社では働いていない分の給料を減らされてしまいます。
介護は公的サービスが利用できたり、さまざまな控除などがありますが、どうしてもお金はかかります。収入が減ることで経済的な面でストレスを抱えてしまう可能性があります。
一方、「育児・介護休業法」では介護による時短勤務を理由として会社が従業員を正当な評価をせず、給与の減額や賞与をなくすことを禁止しています。トラブルを避けるために、時短勤務をする前には会社側と話し合いをしておくことが大切です。
(参考:厚生労働省 「多様な生き方の実現応援サイト」

上司や同僚の目が気になる
時短勤務になると自分自身が本来やるべき仕事を上司や同僚が代わりにすることになり、申し訳なくなったり不安に思ったりするかもしれません。
実際、同じ職場の人からの、「時短勤務制度を利用している人がいると仕事量が増える」、「責任のある仕事を任せることができない」といった意見も見受けられます。
こうした声や他人の目が気になり、やむなく退職を選んでしまう人も多いでしょう。
上司や同僚の目が気になり、時短勤務をすることに不安を持っている場合は会社に相談してみてはいかがでしょうか。自分の現状を詳しく話すことで周囲からの理解が得られやすくなったという事例もあります。もちろん、上司や同僚からの理解を得るためには、自分自身の努力も必要です。時間内に最大限の効率で仕事に取り組む、引き継ぎをきちんと行うなど、自分で出来ることをしたうえで周りの人に協力してもらいましょう。

時短勤務により介護と仕事を両立した同僚

筆者の同僚は、母親に介護が必要となり、半年ほど時短勤務となりました。
介護がスタートしてすぐの頃は親の状態も悪く、しょっちゅう本人やケアマネージャーなどから電話がかかってくる状態、通院のために朝遅れてきたり休む日も多くなっていました。

会社としては介護や育児などにもかなり理解があり、有給も取りやすい会社だったのですが、それでも介護による心身の疲労、度重なる遅刻や休みに精神的に負担を感じていき、介護うつの傾向も出てくるようになってきました。

ある日、「自分は会社を辞めたほうがいいと思う」と本人から申し入れがありましたが、離職することで彼女の介護うつ状態が進行する可能性もあると感じ、時短勤務を勧めることにしたのです。

その後、時短勤務を活用しながら、親のデイサービスを探したり、通院付き添いをしたりし、在宅介護の体制を整えることができました。

今では介護サービスを活用しながら、母親の状態も落ち着き、本人はフルタイム勤務に戻っています。

一番大変なのは、介護が始まってすぐの頃とも言います。突然のことで起こるショック、慣れない生活、どうしていいかがわからない不安、心身ともに疲弊してしまいます。
会社の理解があるかどうかにも大きく拠るところではありますが、身近な人に相談しながら、時短勤務を活用しながら、介護と仕事の両立体制を作っていくことがその後の生活に大きく影響していきます。

あわせて読みたい

時短勤務以外にも、介護と仕事を両立させる方法はいろいろとあります。無理のないよう、ぜひ参考にしてみてくださいね。

まとめ

時短勤務は働く時間を短くしながらも離職・退職することなく働き続けることができる働き方です。
収入が減ってしまったり上司や同僚の目が気になったりするといったデメリットがある一方で、働きながら自分の時間を確保することができたりキャリアを継続しやすくなったりするといったメリットがあります。
フルタイムで働いて心身ともに限界を迎える前に、介護を理由として会社を辞める前に一度、時短勤務という働き方を検討してみてはいかがでしょうか。

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投稿者プロフィール

Natsu
Natsu
広島県在住。大学でリベラルアーツを学びながら、中高生を対象に学習塾で講師アルバイトを経験。趣味は生け花。

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