在宅介護で看取りを行うことはとても大変だと言われています。
多くの人が自宅で最期を迎えたいと考えていますが、実際は74.6%が病院で、自宅で亡くなった人は12.7%と、多くの人が病院で最期を迎えているそうです。
在宅で看取りをするためには覚悟はもちろん、たくさんの準備と知識、サポートが必要です。在宅介護で看取りを考える人に、私自身の体験談をお伝えします。何か少しでも参考になれば幸いです。
在宅で看取りを希望する母と家族の気持ち
母は60代で末期の癌が見つかり、見つかったときには既に手術ができない状態でした。自分の状態をわかっていた母は、自宅に戻ることを希望し、自宅療養を開始しました。
状態は非常に悪く、食事はなかなか摂れない状態だったので、点滴で栄養を入れる処置や、痛みを緩和するための薬など、訪問看護による往診が毎日続きました。
自宅療養といっても私たち家族ができることは限られており、体をさすってあげたり拭いてあげたりするぐらいです。目の前で苦しむ姿を見るのもとても辛く、正直私は病院にいてくれたらと何度も思ってしまいました。
在宅での看取りは、本当に覚悟だと思います。
目の前で死へと向かっていく人をずっと見続けることの苦しみと闘わなくてはいけません。泣きたくても、本人の前ではぐっとこらえるということの繰り返し。私はお風呂の中でだけ泣いていました。
本人は住み慣れた家の環境で、家族の存在を感じられるのは良かったのだと思います。しかし、状態が悪化していくにつれ、死への不安感や、家族への申し訳なさも感じていたように思います。
訪問看護のありがたさ
看取りケアを在宅で行うことを選択した場合、訪問看護などの在宅サービスを組み合わせ、たくさんのサポートを受けることになります。状態が悪化してからは夜間も訪問看護師さんが処置にきてくださいました。
痛みや嘔吐でベッドの上で苦しむ母を見ながらどうすることもできない私たちに代わり、適切に処置を行ってくれる姿を見て、どんなに心強かったことでしょう。
訪問看護の皆さんは、母の処置だけでなく、時には母の不安への声掛けをしてくれたり、私たち家族の心のケアをしてくれたりと、訪問看護師さんがいなければ乗り越えられなかったと思います。
母の希望通り、家での看取りをと考えてはいましたが、苦しんでいたり、いつもと様子が違うというときに、お医者さまや看護師さんを待てず、救急車を呼びそうになったことも何度もあります。
そんなとき、電話口で訪問看護師さんに必ず声をかけていただき、落ち着かせていただいていました。
看取りのとき
お医者さまから「そろそろだ」と聞かされてからは、家族ができるだけ家にいて、母の側に付き添いました。
看取りについては事前に各関係者から注意点を聞いていました。
亡くなった瞬間に医師が立ち会っているかいないかで、その後の対応が変わります。亡くなった瞬間に医師が立ち会い、死亡確認ができた場合は、そのまま死亡診断書を書いてもらうなどの流れになりますが、そうでない場合、警察により検死を行う必要があります。すでに亡くなっている場合は、救急車で搬送することもできないのだそうです。
亡くなって検死となるのは避けたいと、状態に変化があったらすぐに連絡するよう心づもりはしていましたが、母の死に直面する寂しさと不安が入り混じり、穏やかな気持ちにはなれませんでした。
結局母は、お医者様の往診の時間に、家族全員が見守る中、この世を旅立ちました。
最期にはもう意思疎通ができない状態になっていましたが、ほんの少し手を握り返してくれたように思いました。穏やかな最期でした。
在宅で看取りを行う場合は知識が必要
医療や介護関係のたくさんのサポートがあり、無事、母の在宅での看取りを終えることができましたが、こんなにもたくさんの人に支えていただけるんだという驚きと、安心感はありました。
また、症状の変化にどうしても慌ててしまうこともあり、どういうときに連絡が必要か、必要でないのかなど、たくさんの知識も必要だと感じました。医療関係者の皆さんにいろいろと教えていただき、冷静に対処することができた部分もありますが、もっと自分が知っておけば、と思ったことは一度ではありません。
改めて関わってくださったたくさんの方に感謝するとともに、自分自身の最期の場所をどうするか、考えるきっかけにもなりました。
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