【親の介護】お金がない時どうする?制度をうまく活用した対処法を解説

介護とお金
  • 親に介護が必要になったけれど、自分の生活だけで精一杯!
  • お金に余裕がないけれど施設に入れる?
  • そもそも親の介護費用は誰が出すの?

このような不安や疑問をお持ちではないでしょうか。

介護保険制度が利用できるとはいえ、介護にかかる費用は思っている以上にかかるものです。

介護が始まったばかりの方にも、介護の期間が長期化している方にも、今後どれくらいの費用負担が続くのか不安になっている方もいるでしょう。

この記事では、親の介護にかけるお金がないとお困りの方に対して、少しでも負担が軽減できる対処法をご紹介します。

いつまで続くか分からない介護の費用負担について考えてみてください。

親の介護にかかる費用は誰が負担する?

通帳を見る高齢者

基本的に、親は自分の介護にかかる費用は自分自身が支払うべきです。子どもにも自分たちの生活があるので、親の介護で発生する費用は親の老後資金で払ってもらうのがベストです。

ただし、費用の支払いが遅延してしまった場合は、身元保証人が支払わなければいけません。施設の入居時などでは身元保証人を子どもに設定しているケースも多く、その場合は子どもに支払い義務が発生します。また、直系家族である子どもには扶養義務があり、法律上は親の扶養は放棄できません

このことから、介護の費用は親が自身で負担すべきと思っていても、親に支払い能力がなければ家族の負担になってしまうケースもあります。

介護にかかる費用の平均は?

公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査 令和3年」では、月額でかかる介護保険サービスの自己負担費用は、施設介護の平均が12.2万円在宅介護の平均が4.8万円です。他に、施設の入居一時金や、自宅の住宅改修、福祉用具の購入など、一時的に大きく費用がかかる期間もあります。

この結果は親の介護度や、介護をする場所、家族の介護状況によっても異なります。調査によると、介護をしている方の介護を始めてからの期間は平均で5年1カ月です。介護期間が長く続けば続くほど負担が大きく不安になっていくでしょう。

親の経済状況を確認しておくのも大切

少し聞きにくいことですが、親の年金額や貯蓄額などは早めに確認しておきましょう。認知症が進行してしまうと、確認できないケースもあります。

また、今後どのような生活を望んでいるのかも聞いておくことが大切です。親も、子どもに面倒をかけたくないし、兄弟間のトラブルは望んでいないでしょう。家族が資金援助しなければいけない場合は、家族間のトラブルにもつながりかねません。なるべく、親の資金で老後生活を送ってもらえるようにしっかりと話し合っておくことが大切です。

介護はプロに任せ、ご家族は介護に関する情報収集や手続き、話し相手になり精神的にサポートするなど役割分担をしても良いでしょう。

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【対処法1】費用の軽減制度を利用する

補助金の封筒に入ったお札

ここからは、少しでも介護にかかる費用負担を軽減できる制度をご紹介します。

医療費控除

「医療費控除」は1年間の医療費が多くなったときに税金を減らしてくれる制度です。病院などの医療費だけでなく、介護保険サービスの中の医療系サービスにも医療費控除が適応されるものがあります。

介護保険で医療費控除の対象になるサービスは以下の通りです。

【居宅サービス】

  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 通所リハビリテーション
  • 短期入所療養介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 看護・小規模多機能型居宅介護

【施設サービス】

  • 特別養護老人ホーム(支払った額の2分の1が控除)
  • 介護老人保健施設
  • 指定介護療養型医療施設
  • 介護医療院

上記の医療系サービス利用中に、他の介護サービスを併せて利用した場合にも控除の対象になるケースもあるので、あわせて確認しておきましょう。

また、オムツを使用している方は主治医に「おむつ使用証明書」を発行してもらうと、オムツ代も医療費控除が受けられます。

参考:国税庁 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価

介護保険負担限度額認定制度

介護保険施設への長期入居やショートステイの利用は介護保険が適応されますが、そこでかかる食費や居住費は全額自己負担です。しかし「介護保険負担限度額認定制度」の要件を満たすと、食費や居住費の全額自己負担分を軽減できます。特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの公的施設が対象で、有料老人ホームなどの民間施設は対象外です。

介護保険負担限度額認定制度対象者の要件は以下の通りです。

  1. 本人を含む世帯全員が住民税非課税である
  2. 預貯金額等が一定額以下

認定証の申請はお住まいの自治体窓口で行います。申請には通帳の写しなど資産のわかるものが必要になります。

利用者負担軽減制度

社会福祉法人等が提供するサービスを利用する場合に、低所得で生計が困難な方の利用者負担を軽減するのが「利用者負担軽減制度」です。社会福祉法人等の協力で軽減される費用の割合は利用者負担の4分の1の額です。生活保護受給中の方は、個室の居住費にかかる利用者負担額の全額が免除されます。

条件を満たした方には「軽減確認証」が交付されますので市町村に問い合わせてみてください。

家族介護慰労金

「家族介護慰労金」は、介護度の高い方を家族だけで在宅介護をしている場合に補助金が支給される制度です。

要介護4又は要介護5の高齢者を、1年間介護保険サービスを利用せずに介護した家族が対象です。支給の相場は年間10万円程度ですが、住民税非課税世帯が対象であり、税金の支払いが滞納している場合は支給されないため注意しましょう。

介護度が高い方の介護であれば、介護サービスを利用したり施設に入居してもらったりして、プロの力を借りたいところです。しかし、本人の拒否などでどうしても介護サービスが利用できない場合などは、この制度をうまく活用しましょう。

詳細は住んでいる自治体により異なるので確認が必要です。

高額介護サービス費制度

介護保険サービスの1割〜3割の自己負担額が一定額を超えた場合に、申請すれば超えた分の費用が還付される制度です。

負担限度額は所得に応じて異なります。

参考:厚生労働省 高額介護サービス費の自己負担限度額

高額介護サービス費は、居宅サービス介護施設サービス地域密着型サービスの自己負担額が対象です。福祉用具購入・住宅改修・施設サービスの食費・居住費・日常生活費などは支給対象外なので注意してください。

高額医療・高額介護合算制度

高額医療・高額介護合算制度とは、1年間(毎年8月1日〜翌年の7月31日)にかかった医療と介護の自己負担額が高額になった場合に、負担を軽減する制度です。自己負担の合算が限度額を超えたときに、超過分が支給されます。

自己負担限度額は年齢や年収によって異なり、以下の通りです。

参考:大阪市役所 高額医療合算介護(介護予防)サービス費(相当事業費)の世帯負担上限額

加入している公的医療保険が申請窓口です。国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合は、自治体から通知が届きます。 会社などの健康保険に加入している方には通知がされませんので、忘れずに手続きしましょう。

【対処法2】費用が抑えられる介護施設を探す

年金手帳や保険の資料

親を施設に入れたいけれどお金がないとお悩みの方は、費用が抑えられる介護施設を探しましょう。費用が抑えられる介護施設は、地方自治体や社会福祉法人などの公的機関が運営している施設です。公的施設は、国が補助金を出すため費用が安く設定されています。

親の年金額の範囲で施設に入居できれば、費用の負担と共に介護の負担も大幅に軽くなります。

公的施設には以下の施設があります。

  • 特別養護老人ホーム
  • 老人保健施設
  • 介護医療院
  • 軽費老人ホーム(A型・B型)
  • ケアハウス(軽費老人ホームC型)

公的施設にはデメリットもあります。費用が安いため入居待ちが多く、なかなか入居できない施設が多いのはよく聞く話です。入居判定会議で入居の必要性が高いと判断されている方が優先的に入居ができるようになっているため、入居待ちの覚悟がいるでしょう。また、入居条件が設定されており、例えば「特別養護老人ホーム」であれば原則要介護3以上の方が対象です。

有料老人ホームなどの民間施設に比べるとイベントなどの娯楽が少ない場合や、相部屋であればプライベートが確保しにくい可能性があります。

お金がない場合は公的施設が選択肢となりますが、デメリットも頭に入れておきながら施設選びをしてください。

【対処法3】資産を活用する

前述しましたが、親の経済状況は早めに確認しておきましょう。

年金がいくらあるのかやどれくらい貯蓄をしているのかを把握しておくのは大切です。

持ち家があれば、売却すれば資金になる可能性もあります。施設に入居した場合、住まいが空のままで維持費だけかかってしまいます。

自宅に住み続ける方や手放したくないのなら、自宅に住みながら自宅を担保にして融資が受けられる「リバースモーゲージ」という方法も。リバースモーゲージは金融機関や社会福祉協議会の一部で取り扱っており、契約者が亡くなるなどで契約が満了したときは、自宅を売却するか相続人が一括返済する方法でお金が借りられます。

【対処法4】生活福祉資金貸付制度で資金を借りる

低所得世帯や障がい者世帯、高齢者世帯向けの融資制度に、「生活福祉資金貸付制度」があります。都道府県の社会福祉協議会が窓口で、介護サービスを受けるための融資も可能です。

貸付を受けるときの連帯保証は原則必要で、連帯保証人を立てる場合は貸付の利子が無利子になります。連帯保証人を立てられない場合も貸付は可能ですが、利子が年1.5%になります。

ただし、あくまでも貸付であり返済が必要なものなので注意してください。

【対処法5】生活保護を申請する

生活保護申請書

最終的な手段かもしれませんが、日常生活に困窮するような場合は「生活保護制度」の利用も検討が必要です。生活保護は「健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度」とされています。

​​​​困窮の程度に応じて必要な保護をしてくれるので、どうしても限界を感じている場合は申請するのも一つです。

ただし、親族等から生活費の援助を受けることができる場合は援助を受けなければいけません。そのうえで、調査が実施され生活保護の適用が決定されます。申請の窓口は住んでいる地域の福祉事務所です。

生活保護を申請した場合は、利用できる介護サービスは生活保護指定を受けた事業所のみになります。

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お金がない場合は制度をうまく活用しよう!

親の介護は、まだまだ先のことだと思っていてもいつ必要になるかわかりません。費用に関しては非常に大切で、親子間や兄弟姉妹間でトラブルに発展することもあります。万が一に備えて家族で話し合って対策しておくことが大切です。

この記事を参考に、国の制度を理解しておきうまく活用しましょう!

投稿者プロフィール

tomo
tomo
特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。

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