高齢者に多い脳梗塞|病気の解説と介護の注意点について

病気・ケガ

脳梗塞は高齢者に発症しやすい病気です。発症率は60代以降に高くなり、80代頃に最も多くなっています 。「80代の両親が脳梗塞になったら、余命はどれくらいだろうか」「後遺症が残ったら、介護が必要なのでは」と不安に思う方もいるでしょう。この記事では、脳梗塞の原因や治療、介護が必要になった場合の注意点について解説します。

高齢者に多い脳梗塞は突然発症する?脳梗塞の予兆について

脳梗塞は、多くの場合、突然発症します。朝起きた時や、夜中にトイレに起きた時など、時間帯はさまざまですが、「〇時頃から手がしびれ始めた」と症状が出たタイミングをはっきり認識できることも多いです。
また、予兆がある場合もあります。もともと狭くなっている血管に一時的に血栓が詰まることで、一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる状態が起こるのです。TIAの症状はさまざまで、急にろれつが回らなくなったり、顔が半分麻痺したり、片方の視力が急に落ちたりする場合があります。
TIAは多くの場合、数分~30分程度で症状が一旦治まります。そのため放置してしまう人も多いのですが、TIAが起きたということは脳血管が詰まりやすくなっている状態なので、脳梗塞が発症する可能性が高いです。このような症状があったときには、すぐに病院を受診してください。

血管が詰まる原因は?脳梗塞の種類と症状について

脳梗塞は、血管が詰まる原因によって3つの種類に分けられます。なぜ高齢者が脳梗塞になりやすいのかは、それらの原因を考えると分かりやすいでしょう。一つずつ解説します。

ラクナ梗塞

脳の深いところにある細い血管が詰まる脳塞栓です。高血圧が最も大きな要因で、他にも糖尿病、脂質異常症、喫煙などが影響します。徐々に血管が細くなり詰まっていくため、症状の進行もゆっくりで、朝起きると手足のしびれや話しにくさがある、という場合もあります。意識障害を起こす事はほぼありませんが、多発したり再発したりするため、基礎疾患の管理が重要です。

アテローム血栓性脳梗塞

アテローム血栓性脳梗塞は、中高年に多く、脳の比較的太い血管の動脈硬化が進むことで起こる脳梗塞です。高血圧、脂質異常症、糖尿病などがあると動脈硬化が起きやすくなり、徐々に血管が詰まっていきます。このタイプの場合、予兆であるTIAが起こっている場合も多いので、違和感があれば放置しないようにしましょう。

心原性脳塞栓

不整脈や心房細動があることによって心臓でできた血栓が、脳の大きな血管に詰まって起こる、危険性の高い脳梗塞です。近年、高齢者で増加しています。心原性脳塞栓は一気に大きな血管が詰まるため、急激に発症するのが特徴です。脳へ与えるダメージも大きく、強い麻痺や感覚障害、失語症といった症状や、死に至ることもあります。

早期治療が重要!脳梗塞で行われる治療について

高齢者の脳梗塞は、必ずしも予後が悪く、余命の少ない病気ではありません。早期に効果的な治療を行うことが重要です。脳梗塞の治療には、主に「t-PA」と「血管内治療」があります。

t-PA

脳梗塞の発症から4時間半以内は超急性期と呼ばれます。症状を劇的に改善するためには、この時間にt-PA治療を行い、詰まった血管に血流を再開させることが重要です。t-PAとは血栓を溶かす薬で、静脈内に注射します。

血管内治療

血管内治療は、詰まった血管にカテーテルという管を通し、血栓を吸い取ったり、削り取ったりする治療です。発症8時間以内で、t-PAで治療できない場合などに行います。大きな血管が詰まった脳梗塞でも、後遺症を少なくすることが可能です。

脳梗塞で介護が必要になった場合に気を付けたいポイント

脳梗塞は、発症後に麻痺や言語障害などの後遺症が残ることもあります。後遺症があると「回復の見込みはない」と落ち込んでしまう場合もあるでしょう。しかし高齢者でも、リハビリを行い、残された身体能力を最大限使うことで、身体機能を維持することができます。脳梗塞で介護が必要になった際のポイントをまとめました。

脳梗塞と後遺症の知識を身に付けよう

脳梗塞の後遺症はさまざまなため、必要な介護も人それぞれです。全身に麻痺が残ってしまった場合は、寝返りや食事、入浴など、生活におけるすべてのことに介助が必要になります。介護が必要になった親の目線に立って、どんなことが必要かイメージしましょう。
また脳梗塞は、再発率も高い病気です。再発を予防するためには、内服薬の服用や、生活習慣の見直しも大切になります。

機能維持のために自分でできることは自分でしてもらうことが大切

脳梗塞の後遺症には、リハビリが効果的です。思うように身体が動かなくても、積極的に動かすようにしてもらいましょう。普段使っていない方の能力は、徐々に衰えていってしまいます。半身麻痺の場合は、動かしやすい方ばかりを使うのではなく、麻痺のある方も動かすことが大切です。なんでもサポートしてしまうのではなく、着替えや歯磨きなど、自分でできることはなるべく自分でしてもらうよう意識しましょう。

家族の介護負担を減らすためにサービスを活用しよう

家族だけで介護をすることは、身体的・精神的に大きな負担を伴います。自分自身の体調を崩してしまわないように、負担はひとりで抱え込まず、分担することが大切です。
脳梗塞で介護が必要になった場合、要介護認定を受ければ、介護保険を利用して介護サービスを受けられます。受けられるサービスは、主に訪問介護やデイサービスの利用、自宅のバリアフリー化などがあり、利用すると家族の介護負担は軽減できるでしょう。

まとめ

脳梗塞は高齢者に発症しやすく、後遺症が残る可能性があります。普段から基礎疾患の管理や、予兆があれば放置しないよう心がけましょう。脳梗塞になって介護が必要になった場合、介護の程度は症状によってさまざまですが、リハビリを行えば機能維持をすることができます。家族だけが負担を抱えることなく、公的サービスも利用することで、その人らしい生活を維持できるでしょう。

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