高齢者が歩行困難になってしまう原因は?治療方法もご紹介

病気・ケガ

生活範囲を維持するうえで重要な役割を担う歩行。しかし、高齢者になると突然歩行障害に悩まされる方も少なくありません。そこで、高齢者の歩行の特徴や原因、心身ともに衰えてしまうフレイルについてご紹介します。家族の歩行は大丈夫なのか気にかけるきっかけになるはずです。

高齢者の歩行における特徴

若い方と高齢者の歩行を比較すると、歩き方が違うように感じることはありませんか?もちろん個人差も大きいですが、歩行は年齢とともに変化していくことがあります。そもそも高齢者の歩行には、どのような特徴があるのかポイントを押さえておきましょう。

歩くスピードの低下

歩行速度は、歩幅と歩行率で決まりますが、高齢者の場合は歩幅が減少し、歩行率が低下する傾向にあります。
歩幅は、加齢などによる筋力低下が原因となることが多いですが、ほかにも神経の問題や転倒への恐怖感などが原因となることもあります。
歩行率の低下は、バランス機能の低下が原因となっていることが多いです。

前のめりで歩く

高齢者の中に、円背姿勢で歩行している方を見かけることもあるのではないでしょうか。前のめりになる原因としては、加齢や骨粗しょう症の脊柱後湾変形などが挙げられます。そのほか、パーキンソン病や、レビー小体型認知症・血管性認知症の疾患が原因となる場合もあるのです。

ちょこちょこ歩き

歩幅が狭くなり、小刻み歩行になるちょこちょこ歩き。ちょこちょこ歩きになると、長距離歩行も難しくなってしまいます。老人のちょこちょこ歩きは、筋力以外に関節の可動域制限なども原因となります。

つまずきやすい

高齢になると、足がしっかり持ち上がっておらず、段差や障害物につま先がぶつかり、つまずきやすくなります。つまずくと、転倒し骨折するなどのリスクが増加してしまうでしょう。つまずきの原因としては、筋力低下だけでなく、認知機能低下やボディイメージ低下も影響していることがあります。

長く歩けない

歩行スピードが低下したりちょこちょこ歩きになったりすると、長距離歩行できなくなってしまい、外出頻度が減り活動量も低下します。その結果、筋力低下や体力低下が起こるという負のループに入ってしまうため、注意が必要です。長距離歩行が困難な場合は、筋力低下以外に長く歩けなくなる原因となる疾患がないかを確認するようにしましょう。

高齢者が起こしやすい歩行障害と原因

高齢者が起こしやすい歩行障害と原因についてご紹介しましょう。

痙性歩行

痙性歩行とは、膝が伸展し、つま先を引きずるように歩く歩き方です。痙性歩行になると、足底が接地できないため、バランスが取りにくかったり、つまずきやすくなったりといった問題が生じます。痙性歩行になる原因は、脳卒中や脊髄損傷などが考えられます。

失調性歩行

失調性歩行とは、ふらついていて、ぎこちなく不安定な歩き方をする歩行です。足の接地位置がバラバラになってしまい、自分の足につまずいたり、バランスを崩したりすることがあります。また失調性歩行は、閉眼時に歩行すると症状が強くなるのが特徴です。脊髄小脳変性症や小脳の脳血管障害といった小脳疾患が原因となることが多いです。

間欠性跛行

間欠性跛行は、歩き続けると疲労感や下肢の痛みが強くなり、足を引きずるようになりますが、休むと再び歩行できるようになります。主な原因は、閉塞性動脈硬化症、腰部脊柱管狭窄症などです。

認知症を原因とする歩行障害

認知症になると、認知機能が低下し、注意障害や記憶障害、失認などが起こります。その結果、以前転倒した場所を忘れてしまい転倒を繰り返したり、障害物をきちんと判断できず転倒したりすることにつながることも多くなるでしょう。また、認知機能と身体機能は強く関わりがあるとされています。活動量や運動量が低下すると、認知機能も次第に低下していき、結果として歩行障害につながると考えられているのです。
また、レビー小体型認知症になると、パーキンソン症状の歩行障害が出現することがあります。筋肉や関節が硬くなり、小刻み歩行や突進歩行が出現する場合もあるのです。

パーキンソン病を原因とする歩行障害

パーキンソン病の歩行には以下のような特徴があります。

・小刻み歩行:歩幅が狭くなる
・すり足歩行:床をすりながら歩く
・突進歩行:徐々に前のめりになり、意図せず歩行速度が上がる

パーキンソン病になると、さまざまな歩行障害が現れます。ほかにも、最初の一歩が出にくくなるすくみ足や、姿勢反射障害の影響で身体のバランスが取りにくくなり、方向転換時に転倒しやすくなるなどの症状が出現することも。

フレイル期を見逃さないで!

介護を必要とせず、自立して日常生活を送れる期間を表した健康寿命。2022年7月に厚生労働省が発表した令和3年簡易生命表において、日本は平均寿命と健康寿命を比較した際に、男性8.79年、女性12.19年健康寿命が短い結果となりました。

最近健康寿命が注目されるようになり、「フレイル」という言葉を耳にすることも増えました。
フレイルとは、年齢を重ねるとともに心身の活力が低下した状態のことです。今後ますます後期高齢者が増加していくため、フレイルの方がさらに増加することが懸念されます。健康寿命を延ばすためにもフレイルをしっかり意識しながら生活することは重要です。

フレイル予防には、運動を継続することが重要です。運動といっても消費エネルギーが高い激しい運動は必要ありません。近所の散歩や階段の上り下りなど、継続しやすい軽い運動を取り入れるのがおすすめです。日本整形外科学会で提唱されている片脚立ちやスクワットといった運動もいいでしょう。

歩行障害の治療方法を知ろう

ここからは、歩行障害の治療方法についてみていきましょう。

・筋力トレーニングを行う

フレイルの高齢者には運動プログラムがおすすめです。ウォーキングや筋力トレーニングにより、歩行が改善することがあります。目標の筋力をつけるには、1週間に2~3回程度のトレーニングが必要です。

・バランストレーニングを行う

平衡感覚に問題が生じている歩行の方には、バランストレーニングが有効です。リハビリに通っている場合には、医療従事者に良い立ち姿勢とバランスの指導を受けます。身体をゆっくり左右前後に傾けながら練習し、片脚立ち10秒ができるようになるのが目標です。
動的なバランストレーニングとして、単純な太極拳の動きやゆっくりとしたダンス、継ぎ足歩行などもいいでしょう。

・補助器具を用いる

安定した歩行のために、杖や歩行器を用いる方法もあります。歩行困難な方にとっての補助器具は、移動能力向上と生活の質維持を助けてくれます。杖は、股・膝関節の関節炎や両足の末梢神経障害がある方に役立ちます。歩行器は前方へ転倒の危険がある場合に、杖は患部の痛みがカバーできない場合に有効です。

まとめ

今回は、高齢者の歩行障害についてご紹介しました。歩行障害が生じると、活動範囲は狭まり、心身機能の低下が生じてしまいます。そのためにも、高齢者に起こりやすい特徴的な歩行の特徴を押さえておき、小さな変化を見逃さないようにしましょう。高齢者がフレイルにならないためにも、日々軽い運動を継続しながら心身の健康を維持できるようにしていきたいものですね。

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