親の介護とお金の管理|困る前に知っておきたい知識と対策まとめ

介護の豆知識

親の介護において切り離すことができないのがお金の管理の問題です。

家族間でもなかなか話しにくいことではありますが、介護にも当然お金が必要になります。親の介護費用は親の貯蓄や年金から支払うのが一般的ですが、本人が認知症になってしまった場合はお金を引き出すことができないという実例もあります。

この記事では、親の介護に関するお金の管理の問題点と、困る前に知っておきたい知識についてまとめていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

親の介護とお金の管理の関係性

親を在宅で、介護サービスを利用して介護した場合、月額費用の平均は5万円となっています。(公益財団法人 家計経済研究所の調査より)介護度や、施設に入所するかどうかで差が出てきますが、こうした費用が毎月かかるとなると、小さな負担ではありません

多くの場合、親の介護は突然始まります。さて、みなさんは、親のお金について普段から話をしていますか?ほとんどの方が、親の貯蓄額を知らない、どう管理しているか知らない、と答えられるでしょう。

その状態で突然介護が始まると、お金をどうおろせばいいのか、本人に貯蓄がない場合、どうしたらいいのかと焦ってしまいますね。もしも、認知症により認知機能が落ちている場合は、さらに大変です。

親の介護のお金の管理は誰がする?

介護トラブルで最も多いのがお金のトラブルです。家族や親戚間の仲が良好であっても、ちょっとした考え方の違いやお金の管理方法で大きなトラブルに発展することがあります。

親の認知機能がしっかりしている場合は、介護サービスを利用するなど、介護費用が発生する前にきちんと話し合いをしておくことが大切です。今後、どういったことにどれくらい費用が必要で、どこからそれを捻出したらよいかを確認しておきましょう。

親の介護にかかるお金の管理は、本人の認知機能がしっかりしているのであれば本人が管理するのが良いでしょう。しかし、事情により本人以外の人がお金を管理する場合、何のためにいくら下ろし、いくら使ったということをきちんと記録として残しておくことも大切です。
家族関係が良い状態であったとしても、ちょっとした伝達トラブルで関係性が悪化するというケースはよくあります。本人、家族間でしっかりと相談、記録することで、トラブルを回避することができます。

また、本人の判断能力が低下してしまうと、銀行がお金の引き出しを停止し、口座を凍結することがあります。口座が凍結してからでも手続きを踏むことでお金を引き出すことができるようになりますが、口座を利用できるようになるまで長い時間がかかる、お金の使い道が限られるといったデメリットも存在します。親の判断能力が低下する前にしっかりと話し合いを行い、場合によっては誰がどのように管理する、ということをきちんと決めておくことで、こうしたリスクも回避することができます。

では、もしも親の貯蓄や年金で捻出できない場合はどうしたらいいのでしょうか。
家族には「扶養義務」があり、できる範囲で支援をしなければなりません。もちろん、自分たちの生活を犠牲にしてまで担う必要はありませんが、介護費用について家族や親族が負担しなければならない場合も、誰がどのように負担をしていくのか、最初の時点でしっかりと話し合いをしておきましょう

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親のお金の管理を支援する3つの制度

続いて、親のお金の管理を考える際に知っておいていただきたい、3つの制度を紹介します。

これらの制度については市区町村の高齢者福祉課等、社会福祉協議会、地域包括支援センター、成年後見を業務とするNPOなどに相談が可能です。

成年後見制度

成年後見制度とは、ひとりで決断することが心配な人が財産管理や施設の契約締結、入院の手続きなどをする際に法的に保護し、生活の手伝いをする制度です。
成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。
任意後見制度とは認知症などによって自身の判断能力が低下する前にあらかじめ任意後見人を決めておき、ひとりで決断することが心配になったときに代わりにしてもらいたいことを契約で決めておく制度です。
一方で、法定後見制度は判断能力が低下してしまった後でも申請できます。この制度は補助類型、保佐類型、後見類型の3段階に分けられます。障害や認知症の程度に応じて段階が適応され、本人の親族や法律や福祉の専門家など、家庭裁判所によって選ばれた人が本人の代わりに契約や手続きを行う制度です。しかし、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(家庭裁判所によって選任された人)に納得がいかない場合でも不服申し立てができない点にはご注意ください。

https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/ (厚生労働省 「成年後見制度とは?」)

家族信託

続いては家族信託です。この制度は判断能力の低下により自分の財産管理ができなくなったときのため、他の家族に財産管理の権利を託し、管理してもらうものです。
成年後見制度と違い、受託者(財産管理を任される人)を家庭裁判所が介入せず、親族間の話し合いのみで契約することができます。また、託された財産で資産の運用や投資ができる点も成年後見制度と異なります。家族信託の契約は任意後見制度と同じように委託者(契約する前の財産の持ち主)と受託者の双方に意思能力が必要であるため、この制度の利用を希望する人は判断能力が低下する前に契約しなければなりません。

https://www.nomura.co.jp/wp/kcba/bk012/ (野村證券 「認知症から財産を守る―専門家が説く『世界一やさしい家族信託』」)

日常生活自立支援事業

最後は各都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業です。
こちらは福祉サービスの利用や行政手続に関する援助や日常の金銭管理、定期訪問による見守りなどを支援してくれる制度です。この制度の利用対象者は判断能力(判断や意思表示を本人のみで適切に行う能力)が不十分でありながらも日常生活自立支援事業の契約内容について判断できる能力を持っている方です。
そのため、この制度の契約内容についての判断能力がない場合、利用できないのでご注意下さい。このサービスの利用料は地域によって差はありますが、訪問1回あたりの利用料の平均が1200円となっています。また、契約締結前の初期相談や生活保護受給世帯の利用料は無料です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/chiiki-fukusi-yougo/index.html (厚生労働省 「日常生活自立支援事業」)

まとめ

親の介護を考えるうえで、親のお金の管理については切り離すことができない問題ですが、トラブルも多いのが事実です。
親の認知機能がしっかりしているなら、本人が管理を、しかし、先を見据えて早めに家族信託や成年後見制度について親としっかりと話し合いをしておく必要があります。
また、認知機能の低下が不安な場合は成年後見制度(法定後見制度)を活用し、家族・親戚間で認識を合わせておくことが大切です。
「成年後見制度」、「家族信託」、「日常生活自立支援事業」を上手に活用し、それぞれのご家庭に合った形で金銭管理をできるようにしましょう。

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投稿者プロフィール

Natsu
Natsu
広島県在住。大学でリベラルアーツを学びながら、中高生を対象に学習塾で講師アルバイトを経験。趣味は生け花。

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