認知症になった一人暮らしの親のお金管理どうする?任意後見制度を知ろう

介護とお金

「預金通帳がなくなってる!誰かに盗られたかも!」と82才の一人暮らしの母親から大騒ぎの電話があった。
母と共に銀行の窓口で通帳は再発行してもらい事なきを得たが、母が認知症かも、、、専門医を受診し、初期のアルツハイマー型認知症との診断。少しずつ様子を見ながら服薬をはじめる。
しばらくは私が1日おきに通って母の生活を支えようと思う。

認知症になった一人暮らしの親と任意後見契約を結ぶ

「介護保険のお世話になるかも」
「満期になった定期預金の解約」
「施設探しから契約、入居」
「実家の処分」

そんな一気にふくれあがった心配ごとを、父の相続手続きをお願いした行政書士に相談した。この先生は行政書士の中でも「コスモス成年後見サポートセンター」の会員だということで相談しやすかった。
その結果、母と私は公証役場で「任意後見契約」と、お金の管理を任せる「委任事務契約」を結んだ。
「成年後見制度」のうち、「法定後見」ではなく「任意後見」を選んだ理由は、

◎その理由は母が娘である私後見人になってもらいたいと強く希望したこと。
◎「法定後見」は、親族が選ばれない可能性もあること。

幸い母は認知症の初期段階で、公証人の前で契約を結ぶことができた。近い将来、母の認知症が進み判断能力が低下したら、家庭裁判所に「任意後見監督人」を選んでもらう。「監督」って、強制されたり上から目線で注意されたりするイメージがあるけれどそうではないらしい。
後見制度は「母の権利を守る」制度だから、母が望んだ暮らしが最期までできるように財産をどのように使うか相談に乗ってくれる立場の人。
例えば将来、母の希望する“住み慣れた地域の海の見えるグループホーム”に入居、母の預金だけではお金が足りなくなったら・・・母名義の実家を売却してほしいとの母の希望も、「任意後見監督人」に相談すればスムーズに売却手続きができる。
母の認知症が進んでも財産が凍結して希望するホームに居れなくなる心配はない。

任意後見契約を結んだら母の希望を知っておくこと

母と私の間で、お金の心配がなくなると、母の心身の調子がよい日は、いろんな話ができるようになった。
・これからやりたいこと、やり残していることはないか
・病気、認知症が進んだとき、どんな生活、介護、施設を望んでいるか
・最期の時に家族以外で連絡をしてほしい人のこと、葬儀のこと
・預貯金、保険、持ち家など財産をどうしてほしいか
「任意後見契約」を結んだことをきっかけに、母を私が最期まで看る覚悟が決まったから、
今まで母に聞きにくかったことが聞きやすくなった。

ときどき、同じことを何度も口にする母を、「何度も口にするくらい、そのことが母にとっては大事なこと」と受け止められるようになった。

思い切って、後見制度の専門家に相談してよかった。
そして、母にとって一番身近な私が「任意後見人」になることができてよかったと思う。

任意後見制度とは?

判断能力が不十分になった後、家庭裁判所に申立をして、後見人等が選ばれる法定後見制度とは異なり、判断能力が不十分になる前に、契約(公正証書)で決めておく制度です。
十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合には、あらかじめ本人自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておくことができます。

任意後見契約は、本人と任意後見人になってもらいたい人(受任者)とが公証人の作成する「公正証書」によって結びます。
公正証書としての契約書の内容は、法律の趣旨に反しない限り、本人と受任者との間で自由に決めることができ、具体的な事務(例えば、福祉関係施設の入所契約、金融機関との取引)を、代理権目録に記載します。
また、本人の所有する不動産など重大な財産の処分等については「任意後見監督人」の同意を要すると定めることができます。
本人の判断能力が低下した場合に、家庭裁判所で任意後見人を監督する「任意後見監督人」が選任されて初めて任意後見契約の効力が生じます。

本人を契約時(判断能力が低下する前から死後まで)から支援し続けるために、次の契約を「任意後見契約」と一緒に結ぶ場合もあります。
① 定期的に本人と会って判断能力の変化を見守る「見守り契約」
② 判断能力が低下する前に身体の障害、病気での入院時に備える「委任事務契約」(代理権目録あり)
③ 死後の手続、葬儀、埋葬などを委任しておく「死後事務委任契約」(代理権目録あり)

法定後見制度とは?

本人の判断能力のレベルによって「後見人」「保佐人」「補助人」の3つの類型があります。

■ 後見人

本人の判断能力が欠けているのが通常の状態となっている場合
本人の身上監護(介護、医療などの契約行為の支援)と財産管理といった原則として法律行為の全てを代理することで、本人を支援します。

■ 保佐人

本人の判断能力が著しく不十分な場合
民法13条1項の行為(借金、相続の承認・放棄、自宅の新築・増改築など)と、申立により裁判所が定めた行為の代理人となり、本人の同意のもと本人を支援します。

■ 補助人

判断能力が不十分な場合
日常生活の中での法律行為は本人が行いますが、申立てにより裁判所が定めた行為(例えば、施設入所の費用を作るため自宅を売却する行為)は、代理人となり、本人の同意のもと本人を支援します。

法定後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)、任意後見人に親族がなれるの?

家庭裁判所で後見人等を申立時に候補者として親族を書いておくことは可能です。家庭裁判所が個別具体的に判断し、候補者の親族が選任されることもあります。
候補者の親族が選ばれない場合は、法定後見人の専門職として弁護士、司法書士、社会福祉士が挙げられますが、近年は、行政書士、税理士、精神保健福祉士、さらには市民後見人が選任されるケースも増えています。

任意後見人は、文字通り「任意」でお願いしたい人に任せる契約です。親族でも契約が成立すれば受任することが可能です。

「成年後見制度」は誰に相談したらいい?

成年後見制度の利用について相談したい場合は、実際に後見人としての業務を行っている弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士、税理士等に相談されるとよいでしょう。
お近くに相談できる専門家を見つけられない場合は、各都道府県にある専門職の成年後見制度の団体にお問い合わせください。

■ 弁護士 日本弁護士連合会 弁護士情報提供サービス「ひまわりサーチ」
■ 司法書士 公益社団法人成年後見センター「リーガルサポート」(司法書士)
■ 社会福祉士 公益社団法人日本社会福祉士会権利擁護センター「ばあとなあ」
■ 行政書士 一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター
■ 税理士 日本税理士会連合会成年後見支援センター
■ 公益社団法人日本精神保健福祉士協会

また、本人の権利擁護と地域連携の観点から「後見制度利用促進センター」が各市町村に整いつつありますので、そちらに相談することも可能です。
参考 厚生労働省 成年後見制度利用促進ポータルサイト

「委任事務契約」の「代理権目録」って?

1か月後、母と私は公正証書で「任意後見契約」と同時に、
お金の管理を任す「委任事務契約」(代理権目録あり)も結んだ。

この「委任事務契約」とは「財産管理契約」とも呼ばれています。
「任意後見契約」が発効するまでの間に、判断能力は低下していないけれども身体的な障害、病気での入院、施設の入所などの際に「委任事務契約」の「代理権目録」の範囲で、代理人が、諸々の代理行為をするものです。必ずしも全財産を管理するものではありません。
例)圧迫骨折で入院することになった母(本人)の入院契約を私(代理人)が代理で締結し、入院治療費の支払いのために本人の定期預金の解約を代理で行う。

「代理権目録」(例)

・要介護認定の申請、介護契約、福祉関連施設への入所に関する契約及びその支払い
・医療契約、入院に関する契約及びその支払い
・管理対象財産(生活費口座に限定することも可能)の保全・管理
・管理対象財産に含まれる預貯金の入金、引き出し
・定期的な収入(年金等給付金、家賃等)、臨時的な収入(特別給付金等)を含む収入の受領及びこれらに関する諸手続
・定期的な支出(年金、家賃、地代、公共料金、保険料、税金、そのほか債務)の支払い及びこれらに関する諸手続
・日常生活品等の購入及びその支払
・郵便物の管理
・行政機関、社会保険事務所等の公共機関等に関する諸手続き

「任意後見監督人」とは?

近い将来、母の認知症が進み判断能力が低下したら、家庭裁判所に「任意後見監督人」を選んでもらう。

任意後見監督人を家庭裁判所が選任することにより、任意後見契約が発効し、受任者は「任意後見人」として活動します。任意後見監督人は、任意後見人の事務処理が本人のために適正になされているかをチェックをします。

任意後見人をチェックするポイントは大きく3つ
任意後見契約の代理権の範囲を超えていないか
本人の意思を尊重しているか
本人の心身の状況及び生活の状況に配慮しているか
 
任意後見監督人は「本人を支援するチームの一人」であり、任意後見人が(例えば、本人の入所する施設について)選択や判断に迷いが生じた際には相談できる人とも言えます。
しかし、監督という職務の性質上、家庭裁判所では「任意後見監督人」は第三者である弁護士や司法書士など法律の専門家が選任されます。また、「任意後見監督人」には家庭裁判所が決めた報酬を本人の財産から支払うことになります。

投稿者プロフィール

上田年茂枝
上田年茂枝白ゆり行政書士事務所 代表行政書士
広島で(一社)コスモス成年後見サポートセンターの会員として、「親なきあと」相談室の窓口として、成年後見制度のご相談に応じています。
自身の後見人として活動を通して「お元気なうちにご自身で人生最終章をどのように過ごしたいか、そのために法律的な備えをどのようにしておくか」ということの重要性を実感する日々。広島市認知症サポーター。

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