親が認知症になった!日常生活に利用できる日常生活自立支援制度とは?

認知症

親が認知症になったかも?と思ったら、知っておいていただきたい日常生活自立支援制度についてまとめています。

困ったときに利用できる日常生活自立支援事業とは?

「なんだかこの頃おかしいな」と、年老いた親を見ながら不安を感じている人へ、今日はちょっと安心するお話をしたいと思います。

私には85歳の母親がいます。ついこの間まで、しゃんしゃんと元気だったのが、最近ちょっとおかしい。お願いしたことを忘れるし、宅急便で化粧品(!?)や健康食品がやたら送られて来る。この間は、乳酸菌飲料の契約をしていました。

「もしや、認知症か?」

ある程度の判断力はあるし、理解力もある…しばらく様子を見てみることにしましたが、今後の成り行き次第でどうなることやら。

と、いうわけで今回は、「ん?なんか変だな、うちの親…」「うちの親、一人暮らしだけど大丈夫かな?」と感じた時に知っておいた方が良い事業、『日常生活自立支援事業』についてお話しいたします。

日常生活自立支援事業の成り立ち

「日常生活自立支援事業」は、もとは「地域福祉権利擁護事業」という名前で行われており、平成19年に事業名称が変更されました。現在も「地域福祉権利擁護事業」と呼んでいるところもあります。

現在は、地域の住民に最も身近な市区町村社会福祉協議会を窓口に、都道府県社会福祉協議会を実施主体としています。

日常生活自立支援事業ってどんな事業?

日常生活自立支援事業とは、軽度の認知症や障害によって判断能力が不十分な人が、地域において自立した生活が送れるよう、契約に基づき、金銭管理や福祉サービスの利用などを支援する事業です。                    

全国の社会福祉協議会によって実施されています。

所属する「専門員」や地域から派遣される「生活支援員」が、利用者の生活の援助を行います。

市町村の社会福祉協議会には、分かりやすいパンフレットやリーフレットが準備してあります。ちょっと立ち寄って探してみると、案外すぐに見つかりますよ。

日常生活自立支援事業の支援内容は?

日常生活自立支援事業の支援内容は以下のとおりです。(参考:厚労省「日常生活自立支援事業の概要」)

〇援助内容                                    

ア、 本事業に基づく援助の内容は、次に掲げるものを基準とする。

a 福祉サービスの利用援助
b 苦情解決制度の利用援助
c 住宅改造、居住家屋の賃借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等

イ、 アに伴う援助の内容は、次に掲げるものを基準とする。

a 預金の払い戻し、預金の解約、預金の預け入れの手続き等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭 管理)
b 定期的な訪問による生活変化の察知

それぞれのサービス内容について詳しくみていきましょう。

1.福祉サービス利用援助

高齢者や障害者が「介護保険制度」や「障害者自立支援法」等に基づく福祉サービスを利用する際の情報提供や手続きの支援を行います。

・さまざまな福祉サービスの利用に関する情報の提供や相談
・福祉サービスの利用における申し込み、契約の代行や代理
・入所、入院している施設や病院のサービスや利用に関する相談
・福祉サービスに関する苦情解決制度の利用手続きの支援

2.金銭管理

医療費や家賃、公共料金の支払い、預金の引き出しなど日常的な範囲の金銭管理を行います。

・福祉サービスの利用料金の支払い代行
・病院への医療費の支払いの手続き
・年金や福祉手当の受領に必要な手続き
・税金や社会保険料、電気、ガス、水道等の公共料金の支払いの手続き
・日用品購入の代金支払いの手続き
・預金の出し入れ、また預金の解約の手続き

利用関係機関や医療機関、民生委員さん、ケアマネージャーさんから持ち込まれる相談内容として一番多いのが、この金銭管理の部分です。支払いが滞ると生命に直結することもありますから、とても大事な支援です。

3.日常生活に必要な手続等の支援

住宅改造、居住家屋の賃借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等を行います。 

・住宅改造や居住家屋の賃借に関する情報提供、相談
・住民票の届け出等に関する手続き
・商品購入に関する簡易な苦情処理制度(クーリング・オフ制度等)の利用手続き

4.重要書類の管理

通帳や銀行印など重要書類等管理の支援を行います。

利用者の希望に応じて、大切な通帳や証書などを安全な場所で預かってくれます。

基本的には書類、印鑑、カード等です。

・年金証書
・預貯金通帳
・証書(保険証書、不動産権利証書、契約書など)
・実印
・銀行印
・その他実施主体が適当と認めた書類(カードを含む)

※ただし、自宅や貸金庫の鍵、遺言書、宝石、書画、骨とう品、貴金属、現金、大きな価格変動がある有価証券は、預かりはできません。

5.見守り

生活変化の見守りを行います。

利用者の日々の生活に寄り添いながら、必要な支援の状況を確認していきます。

日常生活自立支援事業の注意点

医療行為の同意や施設入所にともなう身元引受人や保証人にはなれません。また、外出援助やヘルパーが対応するような買い物、確定申告等もこの事業ではできません。

また、利用には、料金がかかります

1か月の平均利用回数は2回、利用料の平均は1回1,200円です(ただし、契約締結前の初期相談等に係る経費や生活保護受給世帯の利用料については無料となっています)。

契約内容・支援計画にそって生活支援員が定期的に訪問し福祉サービスの利用手続きや預金の出し入れをサポートします。

どんな人が対象?

日常生活自立支援事業は、誰でも利用できるというわけではありません。軽い認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な人で、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手や理解、判断、意思表示などを、本人のみでは適切に行うことが難しい人です。

さらに、こ事業や契約内容の理解や判断できる能力がある人となっています。

厚労省の「日常生活自立支援事業の概要」には、下記のように表記されています。

本事業の対象者は、次のいずれにも該当する者とする。

ア、判断能力が不十分な者(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な者)

イ、本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる者

例えば、軽い認知症の人で、福祉サービスの利用、預貯金の出し入れや日常生活に必要な公共料金の支払い方法がわからないなどで、困っている場合は、日常生活自立支援事業の相談ができるということです。

なお、この事業は、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を持っている人や、認知症の診断を受けている人に、利用が限られるものではありません。

また、入院した場合や、生活保護受給者、グループホームやケアホームに住んでいる人なども利用ができます。

日常生活自立支援事業を利用するには?

1、最寄りの社会福祉協議会等に申請(相談)します。

2、相談受付後、利用希望者の生活状況や希望する援助内容を確認するとともに、「契約締結判定ガイドライン」あるいは契約締結審査会で、本事業の契約の内容に関する判断能力の判定が行われます。

3、要件に該当すると判断された場合、援助する内容を支援計画にまとめ、合意した場合に利用契約を締結します。

4、契約に基づき、生活支援員が援助を行います。

利用開始までにかかる期間は?

初回相談から契約締結までには、約3〜6ヵ月程度かかるようです。本人状況や契約締結審査会の開催時期によっては、それ以上かかることもあります。

また、支援計画は、利用者の必要とする援助内容や判断能力の変化など、利用者の状況を踏まえ、定期的に見直しがあります。

まとめ

日常生活自立支援事業のほかに、判断能力が不十分な人に対する制度としては、「成年後見制度」があります。

日常生活自立支援事業は、足腰が多少衰えたり、一人で銀行に行くなど、日常的な管理が難しくなった人が気軽に利用できるサービスと言えます。

「在宅で安心して生活ができる。」「一人暮らしでも何とかやっていける。」利用者自身も、不安を抱える家族も、「困った」を解決できるサポートが受けられます。

独居高齢者の増加やオレオレ詐欺などのトラブルなど、様々な問題がある現代ですが、馴染みのある場所で、このような支援が受けられる事業があるということは、少し安心材料になるかもしれません。

「どうしようか」と思ったら、ちょっと相談してみよう、と気軽に考えて見ても良いかもしれませんね。


参考:厚労省「日常生活自立支援事業の概要」

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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