- 親が寝たきりになっても最期まで自宅で過ごさせてあげたい!
- 特養になかなか入れない……他の施設に入るお金はない……
- 本人が施設に入居するのを嫌がっている……
さまざまな理由で、親が寝たきりになっても在宅介護を続けられるのか不安に思っている方もいるのではないでしょうか。
在宅介護を頑張っていても、体力的にも精神的にも介護者の負担になることも多く、施設入所を勧められることもあるでしょう。
しかし、さまざまな制度を利用し工夫さえすれば、寝たきりの方を在宅で介護するのは可能です。
この記事では、寝たきりの親でも最期まで在宅での介護を続ける方法を解説します。
無理なく介護を続けるための参考にしてください。
寝たきりの親を在宅で介護する上での注意点
寝たきりの親を在宅で介護するのは可能ですが、簡単なことではありません。
まずは、注意しておきたい点を確認しておきましょう。
床ずれ対策が必要
床ずれは「褥瘡(じょくそう)」とも言われ、体の一部に圧が集中して循環障害を起こし、進行すると皮膚が壊死してしまう症状をいいます。
褥瘡予防には以下のことに気をつけましょう。
褥瘡予防の注意点
- 適切な体位交換
- エアーマットやクッションなど福祉用具の活用
- 清潔保持
- 栄養をしっかり摂取する
- シーツや衣服のしわを作らない
床ずれは悪化すると感染症で命に危険を及ぼすことも考えられるため、寝たきりの高齢者はとくに注意が必要です。
皮膚の赤みなどを発見したら、早めに主治医やケアマネジャーに相談して対策を検討しましょう。
食事では誤嚥を起こしやすい
高齢になると飲み込む力が衰え、水分や食事がうまく飲み込めなくなってしまいます。また、寝たきりの状態では食事中の姿勢保持も困難になるため、ベッド上の食事介助には注意が必要です。
誤嚥を防ぐために、椅子や車椅子に座れるようであれば、なるべく移乗して姿勢を整えてから食事を摂りましょう。
ベッドで食事をする場合は、リクライニングの角度は45〜80度にして枕やクッションを使用し顎を引いた姿勢を取ると飲み込みやすくなります。ひざ下に枕やクッションを入れておくと姿勢保持もしやすくなります。
食事の形態も、刻み食やペースト食など嚥下状況により工夫が必要です。水分にもとろみが必要になる場合もあります。
食事は生活の楽しみにもなるので、食事の形態や自助具を活用して、なるべく自力で食事を摂取できるように工夫することが大切です。
誤嚥性肺炎は命に関わることがあり、寝たきりの方には注意したいケアの一つです。
寝たきりが続くと廃用症候群になる
長期間の寝たきり状態が続くと、心身の機能が低下してしまい「廃用症候群」になるリスクがあります。
体を動かさないことによって起こる「筋萎縮」や関節の可動範囲が制限される「関節拘縮」、骨量が減る「骨萎縮」などの運動器障害は廃用症候群の代表的な症状です。
体を動かさなくなると運動器障害の他にも、循環器や呼吸器の障害・精神的な障害などが出現する恐れもあります。
廃用症候群を予防するには、運動能力を維持・改善するためにもリハビリテーションを取り入れ、ベッドに寝たままでもできる運動などを無理のない範囲で行うことが大切です。
また、自分でできることはできる限り自分で行う自立支援も体を動かす大切な機会です。
排泄介助は双方に負担が大きい
寝たままで排泄介助をするのは、寝たきりの方の介護で困難なケアの一つです。
寝たきりでも尿意や便意を伝えられる場合は、トイレで排泄ができるように介助することが望まれます。トイレまでの移動が困難な場合はポータブルトイレ、ポータブルトイレへの移動も困難な場合は便器や尿器などの方法もあります。
排泄のケアは自尊心が傷ついてしまわないように配慮が必要です。トイレで排泄することは筋力維持につながり、座った状態は腹圧がかかり自然な便意を促す効果もあります。
トイレでの排泄や便器・尿器の使用も困難な場合は、ベッド上でテープタイプのおむつを使用すると、交換がしやすくなります。
寝ている状態での排泄介助は、ベッド上で体を動かしながら手早く行わなければいけない大変な介助です。介助する側もされる側にとっても負担がかかるケアであるため、正しい排泄ケアの方法を知ることが大切です。
家族が介護疲れを起こしやすい
寝たきりの方の在宅介護は介護者の身体的な負担が大きいのはもちろんですが、精神的な負担もかかるため介護うつなどを引き起こしやすくなります。
仕事や家族との時間、プライベートの時間など自分の時間を犠牲にしなければいけなかったり、真面目な方は一人で抱え込んでしまったりすることも。
ストレスが限界に達してしまうと、共倒れの危険性もあるため注意が必要です。
寝たきりの親を在宅で介護するコツ
寝たきりの親を在宅で介護する際の注意点を確認しました。注意点を踏まえ、ここからは寝たきりの親を在宅で介護するコツを確認していきましょう。
介護保険制度を活用する
寝たきりの方を在宅で介護するために頼りになる介護保険サービスはたくさんあります。介護保険制度を利用していない方は、まず地域包括支援センターに相談してみましょう。
地域包括支援センターは、地域の高齢者の総合相談窓口です。何から始めたらいいかわからない場合も相談に乗ってもらえます。
担当のケアマネジャーが決定したら、自宅に来てくれる訪問介護や訪問看護、訪問リハビリなどのサービスを手配してもらえます。
また、通所サービスや泊まりのショートステイなどは用事がある時やリフレッシュなど、介護者側の都合でも利用ができる介護サービスです。
他にも、ベッドや車椅子などの福祉用具レンタル・ポータブルトイレなどの福祉用具購入・介護しやすいように自宅をリフォームする住宅改修などのサービスも介護負担の軽減に役立ちます。
ケアマネジャーに相談することで、心身の状況に合ったサービスや介護負担を軽減するためのサービスを紹介してもらえます。
介護度を見直す
介護保険の在宅介護サービスは、介護度により区分支給限度額が決められています。区分支給限度額とは、ひと月に利用できる介護サービス単位数の上限額です。
現在ほとんど自宅で寝たきりであれば、心身の状況により要介護4に分類される方もいますが要介護度は最も重度の要介護5の状態です。
介護度により受けられる介護サービスの範囲が広がります。現在の介護度が心身の状況に合っていない場合はケアマネジャーに相談しましょう。
ボディメカニクスを身につける
ボディメカニクスとは、介護者の体の負担を減らして、疲れにくくするテクニックです。介護者だけなく、介護される方の負担も軽減できます。
ボディメカニクス
1.重心を低くして体の面積を広くする
介護者の両足をしっかり開いて面積を広くとり、腰を下げて重心を低く落とす
2.できる限り体を近づける
被介護者としっかり体を密着させて介助する
3.てこの原理を使う
支点・力点・作用点を利用して被介護者の体を動かす
4.体を小さくまとめる
被介護者の膝を立てたり、胸の上で腕を組んでもらったりして体を小さくまとめて介助する
ボディメカニクスは、介護職の方でも腰痛をはじめとした体の負担を軽減するために学ぶ介護技術です。寝たきりの方の在宅介護を行う家族も身につけておくべき技術の一つです。
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家族で役割分担する
親の介護は自分一人で抱え込まず、他の親族からの援助も借りられるか相談しましょう。血縁者には親を介護する義務があります。ただし、長男・長女がみるという決まりなどはありません。
別居している家族でも介護を負担すべきです。日々の介護を手伝ってもらうのが物理的に困難な場合は、金銭的な負担をしてもらうのも一つです。
介護で休職が必要な時は介護休暇を取る
介護が理由で仕事を休まなければいけない時は、休暇の制度が利用できます。
介護をするために取得できる休みには「介護休暇」と「介護休業」があり、育児・介護休業法で定められた労働者の権利です。
介護休業で長期的な休暇を取得した場合は「介護休業給付金」を受給することも可能です。
すぐに介護離職しなくても、休暇の取得で解決するケースもあります。上司や事業主と相談しながら国の休暇制度をうまく活用しましょう。
寝たきりでも在宅介護は可能!
今回の記事では、寝たきりの親の在宅介護について注意点やコツを解説しました。
説明してきた通り、寝たきりの親の在宅介護は可能です。
ただし、自分一人で抱え込んでしまうとうまく乗り切ることができません。周囲の力を借りて、さまざまな制度を活用するのことが大切です。
親に最期まで住みなれた自宅で過ごしてほしいと願っている方はぜひ参考にしてください。
投稿者プロフィール
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特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。
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