親が認知症になったらなにをどのように手続きしたらいのでしょうか。
お金のことも気になりますね。
いろいろな支援サービスを利用することで、ある程度介護の負担が軽減できることをご存知でしょうか。
ここでは、認知症の人やご家族が利用できる制度や手続きの方法をご紹介します。
あなたに合った制度と必要な手続きを、この記事で見つけて頂ければ幸いです。
「認知症」ってどんな病気?

「認知症」とは、さまざまな脳の病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態をいいます。
認知症の人が受けられる制度・手続き
認知症になると、普段通りの生活を送ることが徐々に難しくなっていきます。
でも、援助や手助けがあれば、暮らしの継続ができる可能性があるのです。
介護保険の手続き
医者から認知症と診断されたら介護認定を受け、介護保険を受けられるように手続きすることをおすすめします。
今は特に介護の必要がないと思っていても、今後症状が進行することもあります。
要支援に認定されれば自己負担1~3割で介護予防などの様々なサービスが利用できるようになります。
申請はどうする?
介護保険の申請は、地域包括支援センターや市区町村の窓口で行います。
親が認知症と診断されて即座にサービス利用の希望があれば、センターや市町村の窓口で事情を説明して速やかな申請をお願いしましょう。
介護費用の負担は?
介護保険のサービスには介護度に応じた利用限度額があり、所得によって1~3割の自己負担割合で利用することができます。
申請の窓口は、介護認定申請の窓口と同様です。
また、実際にかかった介護費用について、負担軽減の制度があります。以下に簡単に紹介します。
高額介護(予防)サービス制度
介護サービスを利用したときの自己負担額の合計額が、同月の所得に応じた限度額を超えた場合、市区町村の窓口で申請すると払い戻しが受けられる制度です。
一度申請すると次回からは自動計算され、払い戻しが受けられます。
高額医療・高額介護合算療養費制度
世帯内の同一の医療保険加入者について、毎年8月1日から翌年7月31日までの12か月間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額の合計額が、所得に応じた限度額を超えた場合に申請すると、その超えた金額が医療保険から「高額介護合算療養費」、介護保険から「高額医療合算介護(予防)サービス費」として払い戻される制度です。

身近な人に介護が必要になったときの手続きのすべて
鈩 裕和 (監修)
親が倒れた! どうする?
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医療費負担軽減のための手続き

医療費負担軽減の制度もあります。
高額療養制度
同一の医療機関の窓口で1カ月に支払う医療費の自己負担が高額になった場合、医療費の自己負担限度額を超えた部分を後日払い戻される制度です。
70歳未満の人は「限度額適用認定証」を保険証と一緒に提示すれば窓口での支払いを自己負担限度額までにすることができます。
親を扶養している場合など、家族医療費が高額になることが事前に予想されれば、あらかじめ加入している健康保険などに「限度額適用認定証」を申請しておきましょう。
70歳以上の人は原則こうした手続きは必要なく、自己負担額を超えて支払いを求められることはありません。
自立支援医療費制度
アルツハイマー病型認知症などで、通院による精神医療を継続的に受ける場合、自立支援医療制度で1割に軽減されます。
さらに、所得に応じてひと月あたりの負担上限額が設定されています。
詳細は通院中の医療機関や市区町村の担当窓口にお問い合わせください。
休業や失業、就労に対する手続き
働きながらご家族の介護をしている方は、「介護休業制度」を利用することで仕事を休業できます(最大3カ月間)。
正社員だけでなく、パートやアルバイト、派遣社員など、期間の定めのない労働契約で働いている方であれば、制度が利用可能です。
就労中の会社に相談してください。
お金の管理のための手続き

認知症は、様々な周辺症状のためにお金に関するトラブルが多くなります。
そのようなトラブルを減らすためにどのような方法があるでしょうか。
成年後見制度
認知症などで判断能力が衰えた人を保護、支援する制度です。将来認知症になったときに備えて誰にどのように支援してもらうかを決めておく「任意後見制度」とすでに認知症になっている人が利用する「法定後見制度」があります。
後見人の業務は「財産管理」と、介護契約や施設への入所契約を結ぶなど本人が適切な環境で過ごせるようにする「身上監護」があります。
いずれも住んでいる地区の家庭裁判所に必要書類を持参して申請します。
日常生活自立支援事業
「日常生活自立支援事業」とは、高齢や障害などによって、一人では日常生活に不安のある方が、地域で安心して自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助などを行うものです。
日常生活自立支援事業で受けられる支援は大きく分けて4つです。
- 福祉サービス利用のサポート
- 金銭管理
- 重要書類の管理
- 見守り
事業の契約内容を理解できる程度の判断力が必要です。
詳細は実施主体の各都道府県または市町村の福祉協議会にお尋ねください。
生活保護
認知症などで働けない方に最低限の生活を保障する制度です。
申請条件は、申請者本人と家族全員の収入と資産の合計が、政府が定める公的扶助の基準を下回っていることです。親族からの援助が期待できる場合は、そちらが優先されます。
自治体の福祉に関する窓口に相談してください。
認知症の親の貯金はどう下ろす?

口座名義本人が認知症である事実を銀行が知った場合、資産の管理能力がないと判断され、口座利用の大幅な制限や、口座が凍結されることがあります。
そうなる前に、貯金の正しい引き出し方を知っておきましょう。
各金融機関で取り扱いが異なる場合がありますし、どの方法も基本的に契約時に「判断能力がある」という原則があります。
判断能力の有無の判断についても各金融機関で異なるので説明を聞いてみることが必要です。
- 家族信託 本人(委託者)が信頼できると考えている家族(受託者)に財産の管理を任せる方法です。
- 代理人の届出 家族が本人の財産を管理する仕組みの一つとして「任意代理人」制度を設けている金融機関があります。
- 資産継承信託 資金を銀行などに預けておき、前もって設定した条件で本人や家族がお金を引き出せるようにしておくサービスです。
詳細な利用法については、各金融機関にお尋ねください。
また、日常生活自立支援事業や成年後見制度の利用も有効です。
検討してみましょう。
介護のために本人以外の人が引き出しを続けていた場合は、トラブルを回避するために利用明細を記録しておきましょう。
障がい者施策支援を受けるための手続き

認知症の人も障害者支援を受けることができます。
障害年金
認知症も障害年金の対象です。
障害年金は、認知症で初めて医師等の診療を受けたときに加入していた年金によって、障害基礎年金(国民年金)か障害厚生年金(厚生年金)に請求ができます。
身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳
認知症で身体に障害がない場合は「精神障害者保健福祉手帳」、脳血管性認知症などで身体に障害がある場合は「身体障害者手帳」を申請することができます。申請は、認知症の初診から6カ月以上経ってから。
障害者手帳があると受けられるサービスには、公共交通機関、公共施設などの料金割引、税金の控除・減免などがあります。
特別障害者手当
日常生活において常に介護が必要であり、一定の条件を満たした人であれば、継続的に「特別障害者手当(2022年度月額27,300円)」の支給を受けることができます。
地域によって異なる要件があるので、上記の手当等の詳細については、市区町村の障害・福祉に関する窓口にお問い合わせください。
民間生命保険の手続き

生命保険にも手続きができるものがあります。
高度障害保険
生命保険に加入した人が認知症になった場合、状態によっては「高度障害特約」が適用され、保険金が支払われる場合があります。
要件については、加入中の生命保険会社の担当窓口にお問い合わせください。

「認知症の人」への接し方のきほん
矢吹 知之(著)
一見して同じ現象でも、その原因も、そのとき感じている気持ちも一人ひとり異なっています。
そのため、認知症の人への接し方には、万人に通じる答えは存在しないのです。
はじめて認知症介護をする方はもちろんのこと、「本やインターネットに書いてある通りにやってみたけれど上手くいかなかった」という人にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
まとめ 支援サービスは使うためにある‼

認知症の支援や介護は長期戦になるので、賢くサービスを活用し、本人や介護するご家族の負担を減らしていくことが大事です。
聞き覚えのない制度やサービスが多く、戸惑うこともあるでしょうが、このような制度に関しては全て申請主義になっているため、自分からアプローチすることから始まります。
知ることで使える!
申請窓口でこの記事で見知った単語を使って相談してみましょう!
投稿者プロフィール

- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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