ある日友人が若年性認知症を発症した。友人の目から見た家族の様子とは?これは匿名であることを条件に自身の介護体験を語ってもらうコラムです。
友人が若年性認知症を発症した
私が若年性認知症に対して理解したいと思うようになったきっかけは、身近な存在で同世代の友人が突然発症したことにあります。その友人は責任感も正義感も強く、真面目で努力家。仕事に対しても趣味に対しても常に一生懸命でした。
学生時代からの付き合いで資格取得のための勉強や就職活動やゼミ合宿やインカレサークルにおいても常に全力投球で、アルバイトやボランティア活動にも力を入れていてエネルギーとパワーに満ち溢れていました。
私には無いものを全て持っているような憧れの存在で、免許・資格取得でスキルアップさせて就職活動も早い段階から頑張っていたので、就職活動での内定企業の数の多さにも驚かされたのをよく覚えています。
社会人になってからもバリバリ仕事をこなし、やりがいを感じているようでしたが、仕事の忙しさで心身ともに疲れているなと傍から見ていて感じることも多かったです。
お互い社会人になって忙しくなり、学生時代の頃のように遊んだり頻繁に連絡を取り合ったりすることは少なくなりましたが、誕生日のお祝いメッセージやプレゼントを贈り合ったり年賀状のやり取りをしたりする関係性は途切れることなくずっと続いていました。
そんな友人がある日、約束の場所に現れず、連絡も取れない状態になったのです。
友人の異変
普段は必ず早めに約束の場所に来る友人が現れず心配でしたが、連絡がつかずその日はどうすることもできず家に帰りました。
その数日後、友人の家族になんとか連絡がつき、友人が若年性認知症を発症したという衝撃の事実を知ったのです。
家族に聞いたところ
- 仕事のパフォーマンスや集中力や判断力や学習能力や危機管理能力や情報処理能力が急激に落ちた
- 今まで出来ていたことが出来なくなりミスも増えた
- 人とのコミュニケーションをとるのが面倒で億劫になった
- 電話にも出られず会う約束をしていたのに忘れていてドタキャンしてしまう
- 同じものをいくつも購入したり注文した覚えの無い商品が自宅に届いたりする
というような、単なる物忘れでは片付けられないような出来事が急増していたようです。友人は、自分の身に何か恐ろしいことが起きていると感じ、脳神経外科で脳ドックを受け、そこで若年性認知症であると診断されたということです。
私と約束をしたときも、その時は約束ができていても、約束したこと自体をすぐに忘れてしまっていたということでした。
友人の様子
私は居ても立っても居られない状態で友人に会いに行きましたが、外見的にもコミュニケーション能力的にも全く違和感を覚えませんでした。約束について、家族から聞き、申し訳なかったと謝られました。昔から知っている友人のままで少し安心しましたが、今までと同じようには過ごせられないんだろうということを、一緒に居た家族の様子をみて感じました。
友人自身は、診断結果が出てからだいぶ月日が経過しており、覚悟を決めたような雰囲気でしたが、一緒に暮らす家族について申し訳ないと思う気持ちを何度も口にしていました。
家族の取り組み
若年性認知症は、発症した本人はもちろんですが、周りの家族も非常に辛い病気です。
友人の家族も、今からの人生を考えるとかわいそうで見ているだけで辛いと言っていました。
仕事も順調だった娘が、できないことが増えていくのを目の当たりにして、できることなら変わってあげたいとも。
しかし、友人を支えるため、若年性認知症についてたくさんの本を読んで知識を増やしていたり、家の中にたくさんの注意書きをして、困りごとを減らす努力をされているのも見ました。
これから長く続く病気との闘い。落ち込んでいてもどうしようもないから、できることをやるだけ。とおっしゃっていました。
私の対応
友人として私ができることは「今まで通りつきあう」ということです。
若年性認知症になり、人付き合いをしなくなる人も多いようですが、友人の場合は、自分のためにもできるだけこれまで通り人と会いたいということで、家族の協力を得ながら、時々今も会っています。
若年性認知症によって、できなくなったことがあれば、手伝ったりフォローをすることはありますが、それ以外は以前と変わらず接しています。病気だからといって過剰に気を使われたりすることは友人本人も嫌なのだそうです。
私の人生においても友人の若年性認知症発症という出来事は大きく、色々と考えさせられるきかっけになりました。その後、友人の状況をもっと理解したいという想いから私自身が介護の道に進んでいます。
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