- 認知症介護に限界を感じてきた……
- これ以上認知症が進んだらどうなる?
- 徘徊をするようになり危険!
認知症の親を在宅介護している方の中には、これからも続けていけるのか不安になっている方もいるのではないでしょうか。
認知症の方を在宅で介護することは可能です。
しかし認知症介護は介護をする家族にとっては負担が大きく、思い通りに行かないことに心身ともに疲れ切ってしまいます。介護疲れを引き起こす可能性が高いのも事実です。
この記事では、認知症介護を続けるために注意点や使える介護サービスを解説します。
あらゆる手段を駆使して在宅介護を乗り切ってください!
認知症の親を在宅で介護する上での注意点
認知症の方はコミュニケーションが取りづらいため、スムーズな介護ができず家族が疲弊してしまうケースも少なくありません。
まずは、介護をする上での注意点を確認しておきましょう。
プライドを傷つけない対応
認知症の方を介護するときは人としての尊厳を大切にした介護をすることが大切です。
認知症が進行すると記憶力が低下してついさっきのことも忘れてしまったり、今まで普通にできていた動作ができなくなったりします。
昔からの親を知っている家族は認知症の症状を受け入れられず、気持ちがなかなか追いついていきません。そのため、つい怒ってしまったり急かしてしまったりイライラした対応をとってしまいます。
しかし、自尊心を傷つける言動は信頼関係に影響し、対応をますます困難にさせてしまうだけです。
認知症の症状は周囲の対応次第で改善され、スムーズな介護につながります。介護者側がイライラせず、本人のペースで行えるように声かけを行いましょう。
安心感や信頼感は、認知症の症状を穏やかにする効果も期待できます。
認知症を理解した対応
認知症の方を在宅介護するためには、認知症の症状を理解した対応がカギです。
認知症には、脳の働きが低下することによって直接的に起こる「中核症状」と、中核症状が影響して現れる精神機能や行動の症状「周辺症状」があります。
中核症状は以下の症状です。
認知症の中核症状
- 「記憶障害」新しいことを覚えられない、さっき聞いたことや行ったことを忘れる
- 「失語・言語障害」言葉が出てこない、言葉の理解が難しい、会話のつじつまが合わない
- 「失行」運動機能の障害がないにもかかわらず日常的に行っていた動作が行えない
- 「失認」目の前にあるものが何かを認識できない
- 「見当識障害」時間・場所・自分と他人との関係性などがわからない
- 「実行機能障害」物事を計画立てて段取りよく行動できない
- 「理解力・判断力の低下」理解することに時間がかかる、情報を処理する能力が低下する
中核症状によって引き起こされる二次的症状である周辺症状には以下の症状があります。
認知症の周辺症状
- 「妄想」誰かに物を盗られたという物盗られ妄想や嫌がらせをされているという被害妄想
- 「幻視・幻覚・幻聴」本来は見えないはずの物や人が見える、聞こえる
- 「抑うつ・不安」憂うつな気分、不安、意欲低下
- 「せん妄」体調不良や環境の変化などにより、混乱した状態になる
- 「異食・過食」食べ物ではないものを食べようとする、食べ過ぎる
- 「徘徊」行き先がわからなくなったり、時間や場所が分からなくなったりして歩き回る
- 「暴力、暴言」気持ちを上手く表現できないため怒りっぽくなる
他にも睡眠障害・焦燥・多弁・多動・大声・無為・拒否・依存・不潔行為・帰宅願望・失禁・弄便・性的異常行為などさまざまな症状が出現します。
思いもよらない言動でストレスを感じたり、辛い思いをしてしまったりしやすいのが認知症介護です。しかし、認知症の周辺症状には理由があると知っておけば対応方法を考えやすくなります。
認知症の方の世界を理解して気持ちに寄り添って対応できれば、相手の安心感にもつながるでしょう。
体調に注意する
認知症の方は自分の体の不調がうまく伝えられません。
自分自身で健康管理をするのが難しくなり、体調変化に気づきにくくなります。重大な疾患の症状が進行している場合もあるため、些細な変化も見逃さず気を配ることが大切です。
排泄リズムをつかむのも大切なケアのポイントです。認知症の方が精神的に落ち着かない状態は、排泄リズムが原因になっている場合も考えられます。排泄リズムがつかめれば、適切な排泄介助で失禁や弄便などの周辺症状が防げるかもしれません。
また、服薬を本人が行っている場合は薬を適切に服用できていない可能性もあります。薬の飲み忘れや飲み過ぎをしないように、服薬管理は家族も一緒に行うと安心です。
認知症の方におすすめの在宅介護サービス
在宅介護は家族だけで行うのではなく介護のプロの力も借りましょう。
在宅での認知症介護を継続するには、プロに任せて自分の用事をしたり休息をとったりできる「レスパイトケア」がカギです。
家族だけでは疲弊してしまい介護疲れを起こす原因になります。家族が限界を感じる前に、周囲に頼り抱え込まないことが大切です。
定期的に介護のプロと接する機会を持つことで、悩みを聞いてもらえたり介護のアドバイスをもらえたりする場合もあります。
ここからは、認知症の方におすすめの在宅介護サービスをご紹介します。
デイサービス・デイケア
日帰りで利用できる通いのデイサービスやデイケアでは、食事や入浴、機能訓練やレクリエーションなどのサービスが受けられます。
他の方と交流する機会を作り、生活が活性化すれば認知症の進行を予防する効果も期待できます。
通いのサービスは1日型や半日型など午前だけ、午後だけといった使い方も可能です。短時間でも介護者が休息をとる時間を持つのも大切です。
ショートステイ
ショートステイでは、施設へ宿泊し食事・入浴・排泄などの身体介護やレクリエーションなどのサービスが受けられます。数日の宿泊から最長で30日間まで利用が可能なため、介護者の都合や休息のために有効活用できます。
将来、施設入居を視野に入れている方は試験的な利用も可能です。ただし、認知症のある方は環境の変化に対応するのが難しい方も多くいます。数日の滞在では施設になじむ前に帰宅しなければいけない場合も。また、拒否があったり帰宅願望で興奮してしまったりして、サービスを利用するのが困難な方もいます。
訪問介護サービス
訪問介護は、自宅にヘルパーが訪問し身体介助や生活支援が受けられるサービスです。介護者に身体的負担が大きい場合は、入浴や排泄などの身体介護を手伝ってもらうと楽になります。
訪問介護は住みなれた自宅で介護サービスが受けられるのが魅力です。しかし、認知症の方が知らない人を家に入れたがらない可能性もあります。ヘルパーに慣れるのに時間を要するケースも考えられますが、介護負担軽減には利用したいサービスの一つです。
訪問看護サービス
訪問看護は、自宅に看護師が訪問し医師の指示のもと医療管理をするサービスです。
前述した通り認知症の方は、自分の体調の変化をうまく伝えられない場合がよくあります。定期的な看護師の訪問で身体の異変などを素早く発見できるのが訪問看護サービスを利用するメリットです。異変があった場合はすぐに医療機関と連携し的確な判断がしてもらえます。
確実に服薬できるようサポートしてもらったり、介護や看護のアドバイスをもらったりと、認知症介護をサポートしてもらえる心強い存在です。
福祉用具貸与(認知症老人徘徊感知機器)
認知症介護で、介護者をとても悩ませてしまうのが認知症の周辺症状の一つ「徘徊」です。
福祉用具貸与サービスの「徘徊感知機器」の設置で、屋外に出てしまうことを事前に察知できます。
徘徊感知機器にはその方の行動パターンによりさまざまなタイプがあります。
- ベッドから離れた時に知らせるタイプ
- ドアや玄関を通過した時に知らせるタイプ
- 本人が携帯し知らせるタイプ
徘徊感知機器は原則、要支援1・2と要介護1の方はレンタルできません。
ただし、例外的に利用が可能になるケースや介護度を見直した方が良いケースもあるのでケアマネジャーに相談してみましょう。
認知症介護を支える介護保険以外のサービス
介護保険サービス以外にも、認知症介護を支えるサービスがたくさんあります。
認知症専門医を受診してみる
認知症が疑われる症状が出てきた場合や、認知症の症状がひどくなってきた場合など対応に困っている場合はまずかかりつけ医に相談してみましょう。かかりつけ医から認知症専門医が紹介してもらえます。
認知症はタイプにより症状が異なり、薬物療法を相談できる場合もあります。対応に困ってしまう場合は、薬の相談をしてみるのも一つです。
民間のサービスも活用する
介護保険サービスにはルールがあり、介護保険で対応できることとできないことが決められています。介護保険や家族の介護でカバーできないことは、民間のサービスも検討してみましょう。
民間で提供しているサービスの一例は以下の通りです。
- 認知症の見守りサービス
- 配食サービスでの安否確認
- 緊急通報サービス
- 送迎サービス
- 外出の付き添い
- 家事代行サービス
民間のサービスは全額自費のサービスです。介護保険でカバーできるものがないかなど、まずはケアマネジャーに相談してみましょう。
徘徊対策グッズを活用
介護保険で利用できる、徘徊感知機器の他にも徘徊を防ぐグッズが販売されています。
本人が持ち歩くものに入れておくことで、現在地が分かるGPS端末は徘徊してしまった場合に本人の位置情報が確認できるので安心です。
また、部屋に見守りカメラを取り付けて家族のスマホで部屋の様子を確認できるものや、鍵を取り付けて外に出てしまうのを防くものもあります。ただし、カメラや施錠はプライバシーや尊厳にも関わるので慎重に検討してください。
地域のサービスを利用(徘徊SOSネットワーク)
認知症高齢者の増加に伴って、地域では高齢者の徘徊による事故を防止するために徘徊SOSネットワークを構築しています。
徘徊SOSネットワークとは、徘徊高齢者を早期に発見するシステムの構築や地域における見守り支援の強化を行う、自治体が主体の取り組みです。
高齢者が行方不明になってしまった場合に警察に通報すると、警察から一斉に各協力団体へ連絡し行方不明者の情報を共有するシステムが構築されています。
捜索に協力するのは、地域で活動する介護サービス事業者・交通機関・コンビニ・ガソリンスタンド・宅配業者などです。
SOSネットワークは地域により呼び方が違いますが、徘徊の恐れのある方を事前に登録しておくシステムや見守りのためのラベルやキーホルダを配布している地域もあります。地域包括支援センターで地域の取り組みを確認してみてください。
また、民生委員も地域の高齢者の状況を把握しているので事前に相談しておくと安心です。
認知症家族の集いなどに参加してみる
地域により呼び方が違いますが「認知症カフェ」「オレンジカフェ」など、認知症の方やその家族が参加できる集いが各地域で開催されています。
認知症に関わるさまざまな人が交流を深めたり、悩みの相談や体験を共有したりできます。認知症介護によるストレスを軽減し、孤立を防ぐためにも参加してみるとよいでしょう。
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あらゆる手段を駆使して認知症介護を乗り切ろう!
今回の記事では、在宅での認知症介護について解説しました。
在宅での認知症介護は、可能ですが決して簡単なものではありません。一人で抱え込まず、介護保険サービス・地域のサービス・民間サービスなどあらゆる手段を駆使して認知症介護を乗り切ってください。
投稿者プロフィール
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特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。
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