レスパイトケアとは?施設を活用して介護者が安心して休むための方法

介護の豆知識

介護は、365日休みのない“終わりの見えない仕事”です。親や家族の介護を続ける中で、「少しだけでも休みたい」「自分の時間がほしい」と感じることは、決してわがままではありません。むしろ、介護者が心身を整えることは、介護を長く続けるために欠かせない要素です。

そんなときに活用したいのが「レスパイトケア」。介護者が一時的に休息をとるための時間を提供してくれます。
この記事では制度の概要から施設の種類、利用方法、注意点まで詳しく解説します。

レスパイトケアとは?介護者の“休息”を支える制度

「レスパイト(respite)」とは、英語で「一時的な休息」や「猶予」を意味する言葉。介護の現場では、介護者が一時的に介護から離れて休息を取ることを目的とした支援を「レスパイトケア」と呼びます。

介護保険制度の中では、以下のようなサービスがレスパイトケアとして位置づけられています:

  • ショートステイ(短期入所生活介護)
  • デイサービス(通所介護)
  • 一部の訪問介護や訪問看護

これらのサービスを利用することで、介護者は数時間〜数日間、介護から離れて自分の時間を持つことができます。

レスパイトケアに使える施設の種類

レスパイトケアの代表的な施設は、以下の3つです。

1. 特別養護老人ホーム(特養)

介護度が高い方でも受け入れ可能な施設。ショートステイ枠が設けられており、数日〜数週間の利用が可能です。

  • 介護保険適用で費用負担は1〜3割
  • 医療的ケアが必要な方も対応可能
  • 利用には事前のケアプラン作成が必要

2. 介護老人保健施設(老健)

医療と介護の中間的な施設で、リハビリを目的とした短期入所が可能です。

  • 医師や看護師が常駐しており安心
  • 急な体調変化にも対応しやすい
  • 要介護1以上が対象

3. 民間の有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅

介護保険外の施設も、レスパイト目的で短期利用できる場合があります。

  • 自費負担になるが、柔軟な対応が可能
  • 空室状況によって受け入れ可否が変わる
  • 利用条件は施設ごとに異なる

施設を利用するには、以下のようなステップを踏む必要があります。

① ケアマネジャーに相談

まずは担当のケアマネジャーに「レスパイトケアを利用したい」と伝えましょう。介護保険サービスを利用するには、ケアプランへの組み込みが必要です。

② 施設の空き状況を確認

希望する日程で受け入れ可能な施設を探します。人気の施設は予約が埋まりやすいため、早めの相談が重要です。

③ 利用契約・事前面談

施設との契約を行い、本人の状態や必要なケア内容について事前に面談します。服薬や食事制限などの情報も共有しておきましょう。

④ 利用開始

決められた期間、施設での介護サービスを受けます。介護者はその間、休息・旅行・通院など自由な時間を過ごすことができます。

レスパイトケアは“介護者のためのケア”でもある

介護者が休むことに罪悪感を抱く人もいますが、レスパイトケアは「介護を続けるための戦略」です。介護者が元気でいることは、介護される側にとっても安心につながります。

よくある声:

  • 「たった3日でも、心が軽くなった」
  • 「施設に預けるのは不安だったけど、本人も楽しんでいた」
  • 「自分の時間を持つことで、また優しく接することができた」

介護は“支え合い”です。介護者が自分を支える時間を持つことは、家族全体の幸福にもつながります。

レスパイトケア施設を利用する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 利用対象者の介護度や医療ニーズに合った施設を選ぶ
  • 事前に持ち物や服薬管理の確認をする
  • 緊急連絡先や家族の連絡体制を整えておく
  • 利用後の本人の様子をしっかり観察する

また、施設によっては「レスパイト目的の利用は不可」としている場合もあるため、事前の確認が必須です。

少しの時間でも「離れる」という選択

費用や、本人の思いから、どうしても施設を利用したレスパイトが難しいという場合も、少し「離れる」だけ、少し「自分の時間を作る」だけで気持ちに余裕ができたり、リフレッシュできることがあります。

自分以外の人に見てもらう時間を作ったり、配食サービスを利用して、食事にかかる時間をほんの少しラクしたり、工夫をしてみてはいかがでしょうか。

訪問介護事業所などでは、自費サービスがあります。介護保険サービスでは利用できないような「話し相手」になってもらう、なども、可能かもしれません。また、短時間の見守りだけの場合は、シルバー人材派遣を利用することもできます。

1人で24時間介護をしていたら、いつか限界が来てしまいます。
「私しかいないから仕方がない」
誰の手も借りない在宅介護は、続けていくことが困難です。心も体も壊れる前に、レスパイトケアを取り入れてほしいと思います。

まとめ|レスパイトケア施設を活用して、介護者も安心できる時間を

この記事を読んでいるあなたは、きっと今、少しだけでも休みたいと感じているはずです。介護者が自分の時間を持つことは、贅沢ではなく“必要”なこと。制度や施設を活用することで、安心して介護を続けるための土台を整えることができます。

まずは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。あなたの「休みたい」という気持ちに、制度はちゃんと応えてくれます。

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投稿者プロフィール

音野 響
音野 響
元銀行員。40代副業ライター。
得意分野は介護と金融
時々犬(愛犬家・証券外務員2種保有)

脳卒中による半身麻痺、
大腸がんなど病気のオンパレードで
認知症状も増えてきた父親の介護を
10年以上やっています。

モットーは「毎日明るく」マンガと小説好き。
介護ストレスと上手に付き合っています。

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