高齢化が進み、働き盛りの30~50代で親の介護をしながら働く方が増えています。
そのような方の中には、親の通院や日常生活のお世話で、会社を休まざるを得ず、同僚への申し訳なさや、休むことの罪悪感などで辛い思いをしている方もいることでしょう。
また実際に、退職や転職を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
親の介護と仕事をムリなく続けていくには、家族やケアマネージャーをはじめとする他者との連携、介護サービスや会社の休暇制度などの活用がとても大事になってきます。
この記事では、介護と仕事を両立する方法や介護サービスの利用方法、介護休暇制度などについて解説しています。
親の介護と仕事を両立するために活用したいサービスや制度
親の介護をする方が仕事を辞めずに両立ができるように、国では介護休業法を制定しています。
デイサービスや訪問介護など、介護される人が受けられるサービスは、利用者も多く、よく知られていますが、介護する人のために設けられた介護休業制度は、まだまだ利用者が少ないのが現状です。
介護サービスはもちろんのこと、介護休業法などの制度をフル活用することで、より無理のない介護と仕事の両立につながるため、どのような制度なのかチェックしておきましょう。
1. 介護休業法
介護休業法とは、介護をしている方が時間単位で休暇をとれるように定められた、介護と仕事を両立するための制度です。
介護休業法には「介護休暇」と「介護休業」の2種類があり、内容が異なります。
【介護休暇】
対象者 | 要介護状態にある家族の介護または世話をしている労働者 (日雇いを除く) |
内容 | 1年に5日まで・1日または半日単位で休暇を取得できる (要介護状態の家族が2人の場合は10日まで) |
【介護休業】
対象者 | 要介護状態にある家族の介護または世話をしている労働者 (日雇いを除く) |
内容 | 介護が必要な家族が1人につき通算93日まで・回数は3回まで休みを取得できる |
会社の労働環境に余裕がない場合や上司の理解がない場合などは、なかなか言い出せなかったり、受け入れてもらえなかったりすることもあるかもしれませんが、介護休業法は、国で定められた法律です。
労働者には、介護休暇を取得する権利があるので、言いにくい雰囲気があっても、まずは上司に相談をしてみましょう。
2. 介護サービス
親が一人で生活が困難な状態になった場合には、市区町村の役所に行って、要介護認定の申請をし、ケアマネージャーにアポイントメントをとります。
ケアマネージャーは、介護サービスを受けるにあたって必須となる「ケアプラン」の作成をする役割をもっているため、介護サービスを受けたい場合は、必ずケアマネージャーを通さなければなりません。
そして、要介護認定が通り、ケアマネージャーとの面談によって、要介護レベルが決定した後に、介護サービスを1~3割負担で利用できるようになります。
介護サービスには、デイサービスや訪問介護、ショートステイなどの介護士の支援や、手すり・介護ベッドのレンタルなどがあり、それらを安く利用ができるので、親が一人で生活するのが難しくなったときには、まずは要介護認定の申請をしましょう。
介護と仕事の両立のために利用したい介護サービス
◇ デイサービス
デイサービスとは、日中に施設に通って、食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどの支援を受けられる介護サービスです。
要介護認定を受けた方は、1~3割負担で利用ができ、要介護レベルによっては、毎日の利用も可能です。
1割負担 | 要介護認定を受けた方の年間の所得が160万円未満 |
2割負担 | 年金+その他所得の合計が280万円以上 |
3割負担 | 年金+その他所得の合計が340万円以上 |
また、ほとんどの施設では、送迎がついており、送り迎えの心配もないので、仕事との両立に活用したいサービスの一つです。
◇ ショートステイ
ショートステイは、一定の期間、施設に宿泊して、入浴や食事、排泄、レクリエーションなどの支援を受けることができる介護サービスです。
1回の利用は原則的に30日までとなっており、介護保険制度が利用できる施設では、1~3割負担で宿泊が可能です。
また、有料老人ホームなどでは、要介護認定を受けていなくても利用できるショートステイがあり、その場合は、全額自己負担となります。
介護保険が適用となるところでは1泊2日で4,000円~7,000円程度のため、定期的に利用することで仕事はもちろんのこと、心身を休める時間も作ることができるでしょう。
◇ 訪問介護
訪問介護は、介護スタッフが利用者宅に出向き、入浴や排泄、食事介助などの身体介護や、買い物・食事作り・掃除の手伝いなどの生活支援を行う介護サービスです。
訪問介護を利用できるのは要介護認定を受けた方のため、利用料金は、1~3割負担で、時間とサービス内容によって具体的な金額が決まります。
訪問型のサービスは、その他にも、訪問看護や訪問リハビリテーションなどがあります。専門家に定期的に家庭を訪れてもらうことで、見守りにもなり、安心して仕事に行くことができるようになります。
◇ 通院・見守り・家事代行サービス(民間サービス)
昨今は、民間の企業が提供している家事代行サービスが増えています。
家事代行サービスでは、料理や掃除、買い物、病院の付き添いなどの生活支援を受けられることから、仕事が忙しく病院に付き添えない場合などにも便利です。
介護保険で利用できる訪問介護は、利用者が自立して生活できるようにサポートすることが目的であるため、利用者以外の家族の料理を作ったり、美容院に連れていったりなどの支援はできません。
民間の家事代行サービスは、このような介護保険で受けられないサービスを受けられるので、上手に活用すると、仕事を休まずに済むでしょう。
「わたしの看護師さん」は、有資格者の看護師さんが見守りや通院介助を代行して行ってくれるサービスで、近年、親と離れて暮らす家族が増えてきていることから人気が高まっています。
看護師資格をもっているということで、急な体調不良にも安心できる、通院介助でお医者様からの説明にしっかりと対応してもらえるなど、メリットが多いのが特徴。専用アプリで報告があがってくるのも安心です。
些細なことでも相談を!介護は連携が継続の秘訣
前述で紹介した制度・サービスは組み合わせることもできるので、生活や仕事の状況に合わせて選択することをおすすめします。
とはいえ、どの制度をどのように申請して利用すればよいのかわからない方もいることでしょう。
また、要介護度や自立度などは素人目では判断が難しく、日々変化もします。
まずは、専門家に判断してもらい、どのような支援が必要なのかのアドバイスをもらうことがとても大切です。
次は、実際に介護で不安なことやサービスの利用などを相談できる専門家や機関を紹介します。
◇ 地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、各市区町村の自治体が運営している高齢者のための総合相談施設です。
センター内には、医療・介護・福祉・保険などの専門知識を持った職員が在籍しており、相談内容に応じて、必要なアドバイスやサービスの提案をしてくれます。
親が介護やお世話が必要と感じる状況になった場合には、一人で悩まずに、まずは地域包括支援センターに行き相談をしてみてください。
◇ ケアマネージャー
ケアマネージャーは、介護を必要とする方が介護サービスを受けられるように、面談やケアプランの作成を行い、サービス提供者と連携をとるなど、介護サービスの中核となる存在です。
また、介護・医療・福祉などあらゆる専門家が連携してサポートをするチームケアのコーディネート役でもあるため、ケアマネージャーに伝えることで、医療や介護の専門家、市区町村の公的な機関とつながることができます。
些細なことでも心配や不安なこと、希望する制度やサービスなどがあるときには、遠慮なくケアマネージャーに相談をしましょう。
◇ ソーシャルワーカー
ソーシャルワーカーは、生活相談員とも呼ばれ、主に病院に在籍しています。
親が病気になったり、介護が必要な状態になったりしたときには、生活や仕事などの不安や問題が出てきます。そのようなときにソーシャルワーカーに相談をすると、介護や医療、行政などの必要な機関と連携して、サポートをしてくれます。
親が病気で通院や入院をしている方などは、病院のソーシャルワーカーに相談をしてみるのもよいでしょう。
さいごに
親の介護がはじまると、通院や身の回りのお世話など、何かと手がかかり、仕事を休まざるを得ない状況になることもあります。介護休業制度を利用できれば、より無理なく介護と仕事を両立しやすくなります。
そのためにも、一人で抱えずに、まずは信頼できる上司やケアマネージャーに相談をしてみましょう。
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