30代前半で親の介護に直面したら…最初にやるべきたった2つのこと

介護の悩み

30代前半の人は「うちの親は元気だから、まだまだ介護は先かな」と思っている人が多いかもしれません。                              でも、介護は、ある日突然やってきます。両親が遠方にいるため気づいたら認知症が進行していたということや、病気がきっかけで急きょ介護が必要となるケースもあります。                                この記事では、ケアマネジャーである筆者が、30代前半で親の介護に直面した知人たちから相談を受けた時に、まずやるべきこととしてアドバイスしたことを2つに絞ってお伝えしています。
参考にしてください。   

介護って何をするの?

「介護」といっても、具体的に何をすればよいのでしょう。 

1つは「身の上の世話をする扶養」、そして もう1つが「経済的な支援をする扶養」です。介護は、実際に親の面倒をみるだけでなく介護に必要な経済的な援助も該当します

ただし、介護する側の子供や親族にもそれぞれ生活があるため、自分の生活に支障がない範囲でよいとされています。

自分たちの生活がままならない状況にもかかわらず、「親の介護のためになんとしてでも金銭的援助をしなければ!」と考える必要はないということを覚えておきましょう。

介護ってどうやって始まるの?

介護は主に「病院から始まる」「家族の申請から始まる」「通報から始まる」という3つのパターンがあります。「病院から始まる」パターンは、救急車で運ばれた、かかりつけ医から介護サービスの利用を提案された、など病院からの連絡からです。「家族の申請から始まる」は親の様子の変化に気づいて病院を受診して介護申請したパターン、「通報から始まる」は、親が「うちの子が財布を盗んだ!」などと交番に駆け込んだり、徘徊の途中で保護されたりなど警察から自治体へ連絡が入るパターンです。

特に30代前半で多いのは、「病院から始まる」パターンです。ある日突然「親が倒れた!」と連絡が入って、そのままいきなり介護が始まり、「どうしよう」という相談がよくあります。

30代前半で親の介護が始まったら、まずやるべきことは2つだけ

突然始まる親の介護。

介護について、分からないことが分からない」から脱却するためにまず何をしたらいいのか、何をすべきなのかをまとめてみました。

介護の準備は2つだけで十分です。もちろんお金やら親の意思確認やら言い出したらキリがありませんが、厚生労働省の資料にもある最低限の準備です。

30代前半で介護に直面した人へ、「いざというとき」のマニュアルとしてお使いください。

介護保険、介護サービスの概要を知ろう

介護保険に関して細かい手続きの段取りを覚える必要はありません。

重要なのは、「介護はプロの手を活用できる」ということを知っておくことです。

介護保険とは、40歳以上の国民全員が加入する保険制度です。介護保険の利用には収入によって自己負担が発生しますが、さまざまな介護サービスを利用することができます

注意点として一つだけ。介護サービスは要介護者のためのサービスです。介護をする家族のためのサービスではありません。

使える介護サービス

介護サービスには、以下のような在宅介護サービスがあります。

  • 専門職(ヘルパー、訪問看護師、訪問リハビリなど)が要介護者の自宅を訪問して受けるサービス
  • 専門職がいる施設(デイケアセンターやデイサービスセンターなど)に通うサービス
  • 要介護者が住んで専門の介護を受けるサービス
  • ベッドやトイレを買ったり借りたりするサービス
  • 自宅の玄関や階段、トイレに手すりを付けたり段差を解消する工事をするサービス

こういうサービスがあることを知っておけば、自分の親に必要なサービスが見えてきますし、自分がひとりで介護を抱える必要がないことも分かります。

例えば、親元を離れて住んでいる場合も介護サービスを利用していれば、密に連絡・報告が入りますし、緊急を除けば、直接会って話し合う必要がある場合は事前にスケジュールが立てられます。

海外で仕事をしていた息子さんとメールと電話でのやり取りで在宅支援をしたことがあります。認知症のお父さんが在宅で過ごされた3年の間に帰国されたのは4回ほど。メールと電話でやり取りしながら、最終的に施設入所に至るまで海外で「介護」を続けました。

在宅の限界もプロの目からアドバイスを受けられるので、先の介護の方針も一緒に考えられます。

相談先を知ろう

先に述べた「介護サービス」を利用するにはまず相談する機関があります。
それぞれ役割が異なるものもありますが、まずは以下の相談先を知っておきましょう。

介護の相談窓口

  • 市区町村役場の中にある高齢福祉課など介護保険の取り扱いをしている窓口
  • 地域包括支援センター
  • ケアマネージャー
  • 介護支援団体、介護者の会
  • 介護経験者
  • 会社の人事部や総務部

相談先に迷ったら、とりあえず、地域包括支援センターに行ってみましょう。

また、働く介護者の初動において会社への報告は絶対です。介護の手続きや付き添い等で休んだり早退・遅刻が起こりそうな場合は、まずは、今の状況や事情を直属の上司や人事・総務等の人事管理をする担当に伝えましょう

勤務先によっては休暇規定などがしっかり定まっている場合もあり、知っておくと助かることがあるかもしれません。また、全員にカミングアウトする必要はありませんが、働きながら介護をしている状況を理解し応援してくれる人が会社にいる場合も。介護経験者から思わぬアドバイスがあるかもしれません。

30代前半で介護を経験した人たち

介護が始まると、どうしても介護が必要な親などを優先に考えがちですが、自分の人生を最優先で考えましょう。

筆者が出会った、30代前半で介護が始まった人たちの経験を少し紹介します。

母娘二人暮らし、仕事も恋愛も諦めないと決めた人

その人は32歳の時に母親が脳梗塞で倒れ、介護が始まりました。今までのように仕事も自由がきかなくなり、時間が思うように取れなくて友達とも疎遠になった気がすると嘆いていました。でも、「絶対に仕事は辞めない、結婚だって諦めないと決めたんだ」と話していました。

介護休暇や介護休業を利用し、会社とのやり取りを続けながら親の介護を続けてきました。彼女は仕事の約束や期限を守ること、親の介護の報告や相談を適時に行うことで職場の理解も得られ、良い関係性が出来たと言います。また、付き合いを続けてくれた友達との絆は以前よりも強く深くなったと話してくれました。

親の介護を通じて新しい出会いや考えも生まれたと話します。まだ、結婚は出来てないけど恋愛はしてる、いつか結婚しようと思っている、とキラキラ目を輝かせていました。

海外赴任中でも介護が出来ますか?

海外で仕事をしていた息子さんとメールと電話でのやり取りで在宅支援をしたことがあります。

在宅で3年間を一人で生活していたお父さんでした。お母さんは早くに認知症を患い、グループホームで亡くなっていました。ヘルパーやデイサービスを使いながら生活していましたが、徐々に認知症状が出てきて在宅での生活が困難になってきたのです。

息子さんが認知症のお父さんが在宅で過ごされた3年の間に帰国されたのは4回ほど。メールと電話でやり取りしながら、最終的に施設入所に至るまで海外から「介護」を続けられました。

専門用語や介護の勉強も熱心にしていた息子さんは、「相当な距離や時差がありましたが周りの理解のおかげで施設入所までやり終えた」と話しました。「まだまだ、介護は続きますよ」と言うと「そうですね、でもまたみんなに助けてもらいますから」と少しホッとした顔をしていました。

自分の人生と親の介護の両立は、「できる」のではなく「やる」ことです。

介護が始まると「もう自分の人生は終わり」「結婚も仕事も諦めないといけない」と悲観していた人が、あれこれと自分が動くことで、自分のやりたいことを続けてもいいんだということが分かっていき、介護が必要な親との関係も新しく変わっていきました。

まとめ

30代前半は、仕事も面白くなってプライベートも充実し、人生の新しいステージが始まる時期です。

自分の人生の主人公は『自分自身』であることを忘れずに、自分の暮らしを手放さず、介護と自分の生活を守る知恵と情報、そして頼れる相談相手を見つけることで対策を講じていきましょう。

「完璧を目指さず、ちょっといい加減なくらいがちょうどいい。私が笑っていると親も笑ってくれるから。」と30代前半の介護者は話します。

30代前半、まだ出来ること・やりたいことが一杯あるはずです。親の介護によってすべてを諦めてしまわないよう、介護に対する知識をしっかり持っておきましょう。

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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