寝たきり介護の注意すべきポイントと介護の方法は?知っておきたい知識

介護の豆知識

親が寝たきりの状態で介護が必要になったらどうしたらいいのか、分からないことだらけで不安です。

「どんなことに注意する?」「本当に自分にできるだろうか?」と悩むのは当然です。

まずはどんな介護をするのか、ある程度イメージしておきましょう。

この記事では、寝たきりの親の介護で注意すべきポイントや介護方法、負担軽減などをお伝えします。

今後、どのような介護をしていけばいいのかが想像できると思いますので、ぜひ参考にしてください。

寝たきりの状態とは?

そもそも「寝たきり」とは、

  • 日常生活全般を介助者なしには過ごせない
  • 横になった状態で食事や排泄など、生活の中心がベッド上にある

という状態です。

寝たきりになるきっかけとしては、体調を崩してしばらく動けなかったり、怪我や病気で入院したことが原因となることが多いようです。

寝たきり介護で注意すべきポイントは?

寝たきりの人に必要な介護で注意すべきポイントは、主に排泄・食事・体位交換・清潔保持の4つです。

ポイントに沿った適正な介護方法

では、それぞれの介護内容について説明していきましょう。

排泄
排泄の介護は介護者の負担が大きいだけでなく、介護される側も「恥ずかしい」「申し訳ない」と感じてしまうことが多く、大変デリケートなケアと言えます。
本人がトイレでの排泄を希望される場合は、ポータブルトイレを使用してみましょう。ポータブルトイレとは、ベッド横に設置できる持ち運び可能な簡易型トイレのことです。
協力動作があれば、移動の介助も少し楽になり、動作の流れがスムーズになります。

おむつの介助の場合は、介護者も、介護される側も精神的な負担になります。
素早く交換し、何度も開け閉めしないためのポイントは2つです。

  • 必要なものを事前に準備すること
  • 皮膚にかぶれなどがないかをその時に確認すること

トイレに流せる使い捨てのおしりふきシートなどの利用も便利です。
便が尿道に入ると膀胱炎や尿路感染症などの感染症を引き起こす可能性がるので注意しましょう。

柔らかい便などは拭き取りが難しいこともあります。陰部を洗浄することができる専用ボトルは、角度の調整もでき、陰部を清潔に保つことができます。

洗髪にも利用することができ、1本持っておくと便利です。

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使い切りタイプの洗浄水入りボトルもあります。携帯できるので、介護用だけでなく、外出先で清潔なウォシュレットとして利用することもできます。

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食事
寝たきりでも自分で食事ができる場合は、なるべく自分で食べてもらいます。
椅子や車椅子に座れるようであれば、テーブルで食事を摂ってもらいましょう。
椅子に腰掛けて床に足を付け、少し俯いた姿勢を取れるようにするのがベストです。

食事介助をする際は、同じ目線になるよう隣に座ります。本人のペースに合わせて、口の中のものを飲み込んだことを確認してから次の一口を運んでください。

ベッドで食事をする人の場合は、リクライニングの角度を45〜80度にし、頭の下に枕を挟んで、頭部は顎を引いた姿勢になるようにすると飲み込みやすくなります。

飲み込みが難しいようであれば、食事の形態を工夫します。白米はお粥にしたり、おかずは細かく刻むか柔らかく煮込みます。準備するのが大変な場合は、ドラックストアなどで介護用のレトルトのおかずやご飯、とろみ材も販売されています。また、ネットや通販でもいろいろ紹介されていますよ。

食べることはとても大切なことなので、食事の時間が楽しみになるような工夫や清潔に保つことで病気の予防や誤嚥を防ぐように心がけましょう。

参考になる書籍やグッズを紹介します。気になる物をちょっと試してみるのも良いと思いますよ。

「食べる」介護のきほん
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食事場面での困り事への対応、誤嚥予防のポイント、家庭でできる口腔ケアまで「介護する人」の実情もふまえたノウハウや考え方を提案します。
●第1章:「食べる楽しみ」を維持するために知っておきたいこと
●第2章:食事中のこんな「困った」ありませんか?
●第3章:食事の「困った」は姿勢で改善できる
●第4章:家庭でどこまでできる? 現実的な口腔ケア
●第5章:噛む・飲み込む力を高めて病気予防

体位交換
寝たきりの人は、自分で体を動かすこと姿勢や体勢を変えることが困難なため、ベッド上での生活が中心になり、ベッドと皮膚が当たっている部分の圧迫が原因で、皮膚状態が悪化し、最悪の場合は褥瘡(じょくそう)といって、いわゆる「床ずれ」になってしまうことがあります。ひどい状態になるとただれた状態になり、膿瘍ができたり、傷口から細菌感染が起こることもあります。
床ずれといえども非常に注意が必要です。

防止するために体位交換を行うことが有効です。体位交換の頻度は、高齢者の場合、2時間に一度行うようにするのが望ましいとされていますが、無理のない範囲で行いましょう。

体位交換する際は枕やクッション、ベッドのリクライニング機能などを使い、姿勢を変えます

体位交換する際、シーツと衣服との摩擦が起こり、うまく手が体の下に入り込まなかったり、衣服やシーツがヨレてしまうことがあります。
スライディンググローブや介助用手袋と呼ばれる、体位交換やシーツ、衣服のヨレを直すのに便利な手袋があり、介護の現場ではよく使われています。

圧迫を極力減らしてあげると、床ずれを防止するだけでなく、本人の気分転換にもつながります。

また、足をさすったり、ひざを緩く伸ばしたりなどの簡単な動作を、体位交換などの時間を使ってコミュニケーションを取りながら行うと、お互いのリラックス効果があるかもしれません。

清潔保持
寝たきりになると入浴が困難になり、家族だけで入浴させるのも困難になります。
タオルをお湯で濡らして優しく拭くだけでも体は清潔になり、リラックス効果も得られます
清拭は上半身→下半身→陰部の順に、末端から心臓に向かって拭きましょう。清拭の際に、皮膚状態の確認も行うと皮膚トラブルを未然に防ぐことができます。

介護の負担を軽減するためには?

寝たきりの介護は本人だけでなく、介護する側の負担が大きくなります。

1日中介護をしなければいけないため、自分の時間が削られてしまうこともあるでしょう。

介護サービスを積極的に利用しよう 

在宅の介護のためのサービスがいろいろと揃っていますので、必要なサービスをケアマネージャーと話し合ってみましょう。

どんな在宅サービスがある?

訪問看護・訪問介護
訪問看護や訪問介護は、実際に自宅に看護師や介護員が訪問して、さまざまなケアを行ってくれるサービスです。
訪問看護では看護師や保健師が訪問し、医療的な処置を行ってくれるため、寝たきりで病院に行くのが大変な方の手助けになります。
また訪問介護は、介護職員が食事や洗濯、掃除などの生活の手助けをしてくれます。ただし、家族分の食事や掃除などの提供は行えませんので注意してください。

訪問中に看護師や介護スタッフに相談もできます。例えば、食事の介助方法やオムツ交換の方法、体位交換の仕方、コミュニケーションの取り方などを相談することで一挙に介護が楽になったという人もいます。
抱えていた悩みを誰かに相談するだけでも、介護疲れは軽減します。

また、巡回・随時対応型訪問介護看護や夜間対応型訪問介護というサービスもあります。定期的な巡回や利用者からの連絡によって、自宅を訪問し排泄介助や体位交換などを行うものです。

訪問入浴
訪問入浴とは、専用の浴槽を自宅に持ち込んで入浴介助を行うサービスです。介護用の浴槽なので、寝たきりの人でも湯船に浸かれます
介護職員2名と看護師1名の計3名で、入浴介助を行います。入浴の前後には、血圧や脈拍などを測定する健康チェックをするので、体調に変化があればすぐに対応できます。

入浴は清拭では拭いきれなかった汚れをきれいにできるだけでなく、免疫力アップやリラックス効果が得られます。

短期入所生活・療養介護(ショートステイ)
介護する人の休養などのために短期入所事業所短期の入所ができます。医学管理が必要な利用者は、病状が安定期であれば介護老人保健施設医療院等で短期間の入所が可能です。

旅行や台風などの天候不良時など、利用のために理由の制限はありません。

福祉用具貸与・福祉用具販売
食事介助や体位交換などに必要な介護ベッド手すりなどの付属品車いすポータブルトイレ(販売)など、自宅での介護に必要な物品があります。

床ずれ防止のマットレス自動体交できる電動ベッドもレンタルできるため、介護負担の軽減ができます。

その他にも、居宅療養管理指導(医師や歯科医師、薬剤師などが療養上の管理や指導を行う)訪問リハビリテーションなども在宅の寝たきり介護の大きなサポートになります。

介護サービス利用に関して気を付けること

介護保険の在宅サービスの利用についてはケアマネージャーと十分に話し合いましょう。

在宅介護には限度額が設けられており、使える金額が要介護度で決まっています。

介護保険以外のサービスもケアマネージャーは知識として持っていますので、どれだけのサービスが必要で使えるのか、本人や介護者にとって何が一番大事か、また、生活が苦しければどんな成制度が使えるのか、なんでも打ち明けて相談してください。

施設への入居も検討する

在宅介護に限界を感じた場合は、介護施設への入所を検討しましょう。

施設では専門的なケアを受けられ、常時見守りの体制が整っています。

寝たきりの人が入所できる施設は、特別養護老人ホーム介護老人保健施設介護医療院介護付き有料老人ホームなどです。

介護疲れに陥っているかもしれないと感じている人は、自宅にこだわらず、生活の場所を検討してみても良いかもしれません。

他の人の手も借りる

一人で抱え込まず他の親族からの援助も借りられるか、相談してみることも必要です。

介護は同居している家族だけが介護すればいいというわけではありません。別居している家族も介護に関われるか相談してみましょう。

誰かに相談することで現状を知ってもらうことができ、きっと気持ちも楽になります。

他には市区町村が開催する介護者の家族が集まる会や地域のボランティア団体、シニアクラブなどの支援もあります。市区町村の介護保険課や社会福祉協議会、包括支援センターなどが情報を提供してくれるはずです。

介護状態になり、心も体もストレスを抱えている父にとって、自宅は精神的に安心できる場所でした。住み慣れた家に住むことは要介護者にとって、大きなメリットです。

親が倒れたら、まず読む本

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頑張らない介護とは、考え方のコツを知っているかどうかにかかっているのです。
①必要なサービスやモノにはお金を使って
(良い意味で)手抜きする、介護はお金で買う
②時間をかけるもかけないも結果的に得するかを判断する
③介護に完璧はない!良いことを考えながら気持ちを切り替える。
介護の質を落とさずにストレスを減らす方法を教えてくれる1冊です。

まとめ 自分が一番大事です

寝たきり状態の人を自宅で介護するのは、肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。

自宅で介護をする場合は、一生懸命になりすぎず、介護される人と適度な距離感を持つこと、時にはしっかりと休養をとることやリフレッシュが不可欠となります。

少しでも自宅での介護を続けることが不安になったら、介護の専門家に任せましょう。

介護する人がいつも笑顔でいてくれることが、介護される人にとってもうれしいことですし、プロのケアを受けることが、本人のためにもなるということもあります。

介護を続けるには、介護する人の心身の健やかさが何よりも大切です。

けっして一人で抱え込まないようにしましょう。

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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