親の介護が必要になったとき、避けて通れないのが「費用」の問題です。介護は心身の負担だけでなく、経済的な負担も大きく、事前の準備と制度の理解が欠かせません。
この記事では、親の介護費用に関する平均額や負担軽減のための制度、そして家族でできる準備について詳しく解説します。
親の介護にかかる費用の平均は?
介護にかかる費用は、介護の度合いや期間、利用するサービスによって大きく異なります。公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、在宅介護にかかる初期費用は平均約69万円、月々の費用は平均7.8万円とされています。介護期間の平均は約4年7か月で、総額にすると約494万円が目安となります。
一方、施設介護の場合は、家賃や食費、管理費などが加わるため、在宅介護よりも費用が高くなる傾向があります。特別養護老人ホームなど公的施設を利用すれば費用を抑えられますが、民間施設では月額20万円以上かかるケースも珍しくありません。
誰が介護費用を負担するのか?
介護費用の負担者は、主に以下の3パターンに分かれます。
- 本人の年金や貯蓄から支払う
- 配偶者が負担する
- 子どもや兄弟姉妹が支援する
厚生労働省の調査によると、本人または配偶者が費用を負担しているケースが大多数を占めていますが、約1割は子どもなどが支援しているという結果も出ています。親の経済状況や家族構成によって、負担の分担は柔軟に考える必要があります。

しかし実際には、介護費用の負担が一部の家族に偏ってしまうケースも少なくありません。兄弟姉妹がいても、地理的な距離や経済状況、仕事の都合などによって、介護の実務や費用を一人で背負うことになることもあります。
介護費用に関しては、感情や価値観が絡みやすく、家族間で率直に話し合うことが難しいと感じる人も多いでしょう。
だからこそ、親が元気なうちから、家族全員で介護の方針や費用分担について話し合う機会を持つことが大切です。一度にすべてを決める必要はありませんが、「誰が何をどこまでできるか」を共有しておくだけでも、将来のトラブルを防ぐ大きな一歩になります。

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親の介護費用を軽減する制度とは?

介護費用の負担を軽くするためには、以下のような公的制度の活用が重要です。
1. 介護保険制度
要介護認定を受けることで、介護サービスの利用料が1〜3割の自己負担で済みます。所得に応じて負担割合が決まるため、低所得者ほど負担が軽くなります。
2. 高額介護サービス費制度
1か月の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。所得に応じて上限額が設定されており、家計の大きな助けになります。
3. 特定入所者介護サービス費
施設介護にかかる食費・居住費の負担を軽減する制度です。所得が一定以下の方が対象で、申請により補助が受けられます。
4. 医療費控除・障害者控除
介護保険サービスのうち医療系サービスは、確定申告時に医療費控除の対象となる場合があります。また、要介護認定者が障害者控除の対象になることもあります。
介護にかかるその他の費用
介護費用はサービス利用料だけではありません。以下のような付随費用も発生します。
- 介護用品(紙おむつ、介護ベッドなど)
- 住宅改修(手すり設置、段差解消など)
- 通院・送迎費
- 介護者の交通費・休職による収入減
これらの費用も含めて、総合的な資金計画が必要です。
介護費用の準備はいつから始めるべき?
介護は突然始まることもありますが、親が70代に差し掛かる頃から少しずつ情報収集を始めるのが理想的です。ただし、親がまだ元気なうちは「介護」や「お金」の話を切り出しづらいと感じることもあるでしょう。特に「介護費用」に関しては、デリケートな話題であるため、無理に話すのではなく、日常の会話の中で自然に触れる工夫が必要です。たとえば、ニュースや身近な人の介護の話題をきっかけに、「もしもの時はどうしたい?」と軽く聞いてみるのも一つの方法です。早めに準備することで、いざという時に慌てず、冷静に選択肢を検討できます。
- 介護施設やサービスの選択肢を検討する
- 親の年金・貯蓄状況を把握する
- 家族で費用分担について話し合う
- 介護保険制度の申請方法を確認する
- 利用可能な補助制度を調べておく
- 介護施設やサービスの選択肢を検討する
まとめ:親の介護費用は「知ること」と「備えること」が鍵
親の介護が急に始まると不安や疲労がつきものですが、制度を理解し、事前に準備することで、負担を大きく軽減することができます。無理をせず、家族で協力しながら、納得のいく介護体制を築いていきましょう。
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