実家で一人暮らしの親が認知症かと思ったらどうしますか?
この記事では、そんなときに知っておきたい制度について、実際のエピソードを元にまとめています。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
認知症になった親のお金の管理、どうする?
「預金通帳がなくなってる!誰かに盗られたかも!」と82才の一人暮らしの母親から大騒ぎの電話があった。
実家に駆けつけ、母親が以前「大事な書類は書棚の引出しに入れておく」と言っていた引出を探すも見つからない。
同時に家の権利証や、保険証券なども見当たらないことに気づく。(権利証や、保険証券はベッド下の引出しから見つかった。が、通帳は見つからない・・・)
母と一緒に銀行の窓口へ。以前ATMのやり方が難しいと言って、母親は自分でキャッシュカードの類は廃止していた。
預金通帳の再発行の手続きをし、今後、普通預金通帳と印鑑は私が預かることにするが、頻繁に母のもとに通わなければならないだろう。
銀行の窓口で言われたことが気になる。
「定期預金の満期が近づいているし、その際にご本人の状況によっては手続きできないこともあります。後見人制度を考えられた方が良いかもしれませんよ。」と教えられた。
母はこれまでも、何度も窓口で同じことを尋ねていたらしい。
コロナ前までは茶道の先生をして、厳格だった母親がまさかの認知症?
母親の介護が必要になったらその時は一人娘の私が面倒を見るのだろうなと漠然と思っていたけれど、身体は元気でもお金の管理ができなくなるなんて、考えていなかった。
私が「後見人」になるのかな?そもそも後見人ってどんな制度なの?
成年後見制度とは?
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害、発達障害などによって、物事を判断する能力が十分ではない方(「本人」と言います。)について、本人の権利を守る援助者を選ぶことで、本人を法律的に支援する制度です。
成年後見制度の種類
大きく2つの制度があります。
成年後見制度
判断能力が不十分になる前に、契約(公正証書)で決めておく。
十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合には、あらかじめ本人自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。
任意後見契約は、本人と任意後見人になってもらいたい人とが公証人の作成する公正証書によって結びます。
本人の判断能力が低下した場合に、家庭裁判所で任意後見人を監督する「任意後見監督人」が選任されて初めて任意後見契約の効力が生じます。
公正証書で契約をした任意後見人は、本人の判断能力が低下するまでは「任意後見受任者」という立場で本人との面会等を通じて状況を把握します。
「任意後見受任者」が定期的に本人と面会をして見守りをする「見守り契約」と、判断能力が低下する前に身体の障害、病気での入院時に備えて「委任事務契約」を任意後見契約と一緒に結んでおくこともあります。
法定後見制度
判断能力が不十分になった後、家庭裁判所に申し立てをして、選ばれる
本人の判断能力のレベルによって「後見人」「保佐人」「補助人」の3つの類型があります。
■ 後見人
本人の判断能力が欠けているのが通常の状態となっている場合
本人の身上監護(介護、医療などの契約行為の支援)と財産管理といった原則として法律行為の全てを代理することで、本人を支援します。
■ 保佐人
本人の判断能力が著しく不十分な場合
民法13条1項の行為(借金、相続の承認・放棄、自宅の新築・増改築など)と、申立により裁判所が定めた行為の代理人となり、本人の同意のもと本人を支援します。
■ 補助人
判断能力が不十分な場合
日常生活の中での法律行為は本人が行いますが、申立てにより裁判所が定めた行為(例えば、施設入所の費用を作るため自宅を売却する行為)は、代理人となり、本人の同意のもと本人を支援します。
親族が「後見人」になれるのか
「法定後見制度」の場合、親族が就いているケースもありますが、専門職の後見人が就くケースもあります。
〇 親族が選ばれているケース:19.8%
〇 親族以外が選ばれているケース:80.2%
(令和4年3月発表 最高裁判所事務総局家庭局による)
いずれにしても、家庭裁判所が本人にとって最も適任だと思われる方を選任します。
申立時に親族が就任することを希望しても、専門職の後見人が選ばれるケースもあります。
本人に法律上の課題(介護サービスの契約、施設への入所契約、相続人として遺産分割協議が控えている、など)があるか、本人の財産管理が複雑困難な事情(不動産を持っていて売却し入所施設の一時金にあてる、不動産以外に多額の財産がある、借入金がある、など)がある場合は、専門職が選任されることが多いようです。
投稿者プロフィール
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広島で(一社)コスモス成年後見サポートセンターの会員として、「親なきあと」相談室の窓口として、成年後見制度のご相談に応じています。
自身の後見人として活動を通して「お元気なうちにご自身で人生最終章をどのように過ごしたいか、そのために法律的な備えをどのようにしておくか」ということの重要性を実感する日々。広島市認知症サポーター。
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