親の介護は、家族の絆を深める一方で、兄弟姉妹間の関係に亀裂を生むこともあります。 「なぜ私ばかりが介護を?」「お金は出さないのに口だけ出す兄弟がいる」——そんな不満が積み重なり、感情的な対立に発展するケースも少なくありません。
この記事では、「親 の 介護 兄弟 トラブル」という視点から、実際に起きた事例をもとに、原因と対処法、相談先までをわかりやすく解説します。
実例:介護をしない兄が財産だけを主張してきた

ある女性は、母親の介護を一人で担っていたにもかかわらず、兄が「財産は平等に分けるべき」と主張。 兄は定職に就かず、病院の付き添いや生活支援も一切していない状態でした。 それにもかかわらず、遺産分割や介護費用の負担について一方的な要求をしてきたことで、家族間の信頼が崩れ、法的な対応を余儀なくされました。
よくある「親の介護 兄弟 トラブル」の原因

兄弟間のトラブルは、介護そのものだけでなく、過去の家族関係や価値観の違いが引き金になることもあります。たとえば、幼少期からの「長男だから責任を持つべき」「妹は甘やかされてきた」といった感情が、介護の場面で再燃するケースも少なくありません。
また、親の介護方針に対する考え方の違いも、衝突の原因になります。「できるだけ自宅で看たい」と思う人と、「早めに施設に入れたほうが安心」と考える人では、話し合いが平行線になりがちです。どちらも親を思っての意見であるにもかかわらず、互いに譲れない気持ちがぶつかることで、関係が悪化してしまいます。
さらに、介護の「見えにくい負担」が理解されにくいことも問題です。実際に介護をしている人は、身体的・精神的な疲労だけでなく、仕事や家庭との両立に悩んでいることが多いですが、関与していない兄弟にはその苦労が伝わりにくく、「大げさだ」「好きでやっているんでしょ」と誤解されることもあります。
1. 介護の負担が偏っている
- 一人だけが介護を担い、他の兄弟が関与しないことで不満が蓄積。
- 「遠方に住んでいるから」「仕事が忙しいから」といった理由で協力を避けるケースも。
2. 金銭的な負担の不公平
- 介護費用を一部の兄弟が負担しているのに、他の兄弟が支払わない。
- 遺産分割の際に「介護していない兄弟が多くを要求する」などの不満が噴出。
3. 感情的なすれ違い
- 「親の介護は当然」という価値観の違いが衝突を生む。
- 昔の家族関係や兄弟間の力関係が影響することも。
4. 役割分担の曖昧さ
- 介護の方針や施設入所の判断などで意見が対立。
- 誰が何をするかが決まっていないため、責任の押し付け合いになる。
トラブルを防ぐためにできること
1. 介護の情報を共有する
- 親の状態や介護内容を兄弟間で定期的に共有することで、誤解を防げます。
- LINEグループや共有ノートなどを活用すると便利です。
2. 役割分担を明確にする
- 「誰が通院の付き添いをするか」「誰が費用を負担するか」などを話し合って決めましょう。
- 曖昧なまま進めると、後々トラブルの火種になります。
3. 感情ではなく事実で話す
- 「私ばかりが大変」と感情的に訴えるよりも、「月に〇回通院付き添いをしている」「月〇万円の費用を負担している」と事実を伝える方が効果的です。
4. 第三者を交えて話し合う
- 地域包括支援センターの職員やケアマネジャーなど、第三者を交えることで冷静な話し合いができます。
- 家族だけで話すと感情的になりやすいため、専門職の力を借りるのが有効です。
トラブルが深刻化した場合の対処法
兄弟間の介護トラブルが深刻化した場合、感情だけで解決しようとすると、関係がさらに悪化する恐れがあります。特に、介護費用の不公平や遺産分割をめぐる対立は、感情と金銭が絡むため、冷静な話し合いが難しくなりがちです。
こうした状況では、第三者の介入が不可欠です。地域包括支援センターやケアマネジャーは、介護の実務だけでなく、家族間の調整役としても機能します。中立的な立場から状況を整理し、兄弟それぞれの役割や負担を見える化することで、感情的な対立を緩和できます。
また、家庭裁判所での調停は「争う場」ではなく、「話し合いの場」として設けられています。調停委員が間に入り、法的な視点と人間関係のバランスを考慮しながら、合意形成をサポートしてくれます。家族の関係を壊さずに解決を目指すための選択肢として、早めに検討する価値があります。
「家族だからこそ話し合える」と思いがちですが、実際には家族だからこそ冷静になれないこともあります。専門機関の力を借りることで、感情を整理し、現実的な解決策を見つけることができます。
弁護士に相談する
- 遺産分割や介護費用の負担について法的なトラブルになった場合は、弁護士の介入が必要です。
- 家族間の感情的な対立を整理し、法的に公平な解決を図ることができます。
家庭裁判所での調停
- 話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所での調停を申し立てることも可能です。
- 調停委員が間に入り、冷静な対話の場を提供してくれます。
成年後見制度の活用
- 親の判断能力が低下している場合は、成年後見人を立てることで、財産管理や介護方針を第三者が担うことができます。
よくある質問(FAQ)
Q:親の介護をしていない兄弟にも遺産は平等に分けるべき?
A:原則として法定相続分は平等ですが、介護の貢献度によって「寄与分」が認められる場合もあります。弁護士に相談するのがおすすめです。
Q:兄弟が介護に協力してくれません。どうすれば?
A:まずは事実を共有し、役割分担を提案しましょう。難しい場合は地域包括支援センターなど第三者の力を借りると効果的です。
Q:親の介護費用を一人で負担しています。後から請求できますか?
A:法的には請求が難しいケースもありますが、遺産分割時に寄与分として考慮される可能性があります。
相談窓口の活用

兄弟間の介護トラブルは、感情が絡みやすく、家族だけで解決しようとするとかえって関係が悪化することもあります。そんなときこそ、第三者の視点を取り入れることが重要です。地域包括支援センターでは、介護の実務だけでなく、家族間の調整や話し合いのサポートも行っています。
相談は電話でも可能で、「親の介護で兄弟と揉めている」と率直に伝えることで、状況に応じた対応を案内してもらえます。必要に応じて、ケアマネジャーや福祉職員が同席しての面談も可能です。感情的になりがちな場面でも、専門職が間に入ることで冷静な対話が生まれやすくなります。
また、法的なトラブルに発展しそうな場合は、市区町村の無料法律相談や弁護士会の相談窓口を活用するのも一つの方法です。介護費用の分担や遺産分割に関する悩みは、早めに専門家に相談することで、後々のトラブルを防ぐことができます
地域包括支援センター
- 介護の相談、家族間の調整、ケアプランの作成などを無料で支援してくれます。
法律相談窓口
- 市区町村の無料法律相談や、弁護士会の相談窓口を活用しましょう。
家族会・介護者支援団体
- 同じ悩みを持つ人との情報交換ができ、精神的な支えにもなります。
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まとめ:親の介護で兄弟トラブルが起きたら、冷静に対処することが大切
「親 の 介護 兄弟 トラブル」は、感情・金銭・価値観のすれ違いが複雑に絡み合う問題です。 一人で抱え込まず、事実を整理し、第三者の力を借りながら冷静に対処することで、関係の修復や公平な解決につながります。
介護は長期戦。だからこそ、家族の協力と制度の活用が欠かせません。 「自分ばかりが負担している」と感じたら、まずは相談から始めてみましょう。
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- 介護の経験を持つ方に体験談を教えて頂くシリーズ。
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