高齢の親が転倒すると心配になるのが、骨折ではないでしょうか。今回は高齢者に骨折が多い理由や、骨折しやすい部位について紹介します。骨折が疑われる場合にどのような治療が必要となるのかについても触れるので、もしもの場合に備えて目を通しておくと安心です。
高齢者が骨折しやすい理由とは?
高齢者が骨折しやすい理由には、大きく3つあります。ここでは3つの理由について詳しく見ていきましょう。
骨粗しょう症により骨の強度が落ちている
高齢者が骨折しやすい理由として、まず挙げられるのが骨粗しょう症によるものです。骨粗しょう症は骨そのものが弱り骨折しやすくなる病気。ですが、背中や腰に負担を与えるなど全身に影響を及ぼしてしまうこともあります。加齢とともに、有病率は上昇する傾向にあり、特に女性に多いのが特徴。80歳代の女性で言えば、その有病率は約5割にものぼるほどです。ただし自覚症状はなく、骨折して初めて骨粗しょう症であることに気づく方も多いのが現状です。骨粗しょう症の治療をしなければ何度も骨折を繰り返すため、高齢者が骨折したら骨粗しょう症の検査も合わせて行うといいでしょう。
栄養不足により皮下脂肪が減少するため
加齢により、表皮や真皮、皮下組織といった皮膚構造は薄くなります。また皮下脂肪が減少していくことも、高齢者が骨折しやすい理由です。皮下脂肪が少なくなるということは、転倒した際に骨が保護されないということ。皮下脂肪が薄いほど骨への衝撃が伝わりやすくなり、骨折しやすくなってしまうのです。
筋力が低下して転倒しやすくなる
筋力の低下も、高齢者の骨折を引き起こしてしまう要因です。特に60歳以降の筋力低下は著しく、下半身の筋力が衰えることでつまずきやすくなってしまいます。太もも付け根の内側に通る腸腰筋が減少すれば、歩行時の足の動きを鈍らせ、転倒リスクを増加させるでしょう。
高齢者の骨折は寝たきりの原因に
高齢者の骨折はその後の生活に大きな支障が出ることが多く、寝たきりになったり、それがきっかけで認知症になってしまうというリスクもあります。
日頃から転倒に気を付けるということが大切です。
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高齢者に多い骨折の部位とは?3つの部位を紹介
高齢者の骨折の原因は、ほとんどが転倒によるものです。では、転倒した際に骨折しやすい部位はどこなのでしょうか。ここでは、最も多い部位3つを紹介しましょう。
大腿骨近位部(だいたいこつきんいぶ)骨折
大腿骨近位部骨折は、足の付け根の骨折です。転倒して尻もちを打った際に多く起こります。寝たきりの原因となることも多く、骨折から1年が経過しても、骨折前の歩行状態に回復しない割合が約半数あると言われています。通常は足を動かせないほどの激痛を伴いますが、まれに歩ける方もいるため注意が必要です。
上腕骨近位部(じょうわんこつきんいぶ)
上腕骨とは、二の腕にある骨のことです。転倒時に肩を地面に打ったり肘や手をついたりした場合に、上腕骨近位部の骨折が起こります。痛みとともに腕を上げることが困難になるでしょう。上腕骨近位部骨折の約8~9割が、高齢者の転倒によるものです。骨折部位によっては、神経や動静脈に影響を及ぼしてしまうこともあります。
脊椎圧迫(せきついあっぱく)骨折
脊椎圧迫骨折は、上下からの力が加わることで生じる背骨の骨折です。転倒の際に尻もちをつくことで引き起こされます。寝返りを打った時や起床時に、背中に激しい痛みを感じるでしょう。その一方で痛みを感じない方もいますが、放置すればほかの部位まで損傷してしまう可能性もあり、早めの治療が重要です。脊椎圧迫骨折は、骨粗しょう症が進むと日常生活でも起きることから「いつの間にか骨折」という別名も付いています。閉経後の女性に多く、背中が丸くなる、身長が低くなるといった変化が、骨折の重要なサインです。本人が「年のせい」と言うのを鵜呑みにせず、一度病院への受診を促してください。
高齢者が骨折した場合の治療法とは?
高齢者が骨折した場合、症状や身体状態に応じて手術療法か保存療法が適用されます。ここではそれぞれの特徴や回復期間について説明しましょう。
手術療法
手術をすることで、骨折前と同じように歩行が可能となり、日常生活を送れるようになる可能性も十分にあります。ただし大腿骨骨折など長期の入院期間を要する手術の場合は、筋力の低下や認知症、褥瘡を発症しまうこともあるでしょう。
早く治すには、手術療法で治療を行い、早期から機能回復に取り組むことをおすすめします。リハビリに必要な入院期間の目安は、骨折の状態によって60~90日間と日数が決められていますが、場合によっては在宅で療養しながら訪問での診療や看護、リハビリを受けられます。希望する場合は、手術した病院に在籍する医療ソーシャルワーカーに早めに相談するといいでしょう。
保存療法
保存療法はギプスで骨折部位を固定し、骨が自然につながるのを待つ治療法です。生活の状況や持病、骨折の状態などを総合的に判断し、手術しない場合に選択されます。その他、脊椎圧迫骨折や橈骨遠位端骨折で、骨折部分が安定していると医師が判断した場合にも、保存療法での治療が可能です。手術でのリスクを避けられる一方で、骨折部分が安定するまでに数週間から数ヶ月ほど、骨折部の安静が必要となるといったデメリットもあります。
手術療法・保存療法それぞれにメリットデメリットはありますが、医師も看護師も心強い味方です。骨折の状態にあった適切な治療を受けられるよう、不安なことは悩まずに相談するといいでしょう。
まとめ
高齢の親が骨折すると、手術療法にしても保存療法にしても、介護する側の心配は尽きません。骨折を予防するには、転倒しないような対策に加え、食事の見直しや適度な運動といった生活習慣の改善が重要です。もし骨折したとしても、適切な治療でこれまでと変わらない日常生活を送れる可能性も高いため、慌てず医師の判断に従うといいでしょう。
投稿者プロフィール
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5年にわたり祖母の介護を経験。その経験を元に、介護の世界へ。
現在はライターとして介護の記事を中心に執筆中。
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