認知症の家族の介護、知っておきたい技法を紹介!今日からできる!

認知症

認知症は、誰でも発症する可能性のある病気です。

症状は人それぞれ異なり、介護をする人はその対応に大変苦労しています。

ここでは、最近の認知症介護の考え方から、家庭でも実行できる技法をお伝えしていきます。

ぜひ、簡単な方法から毎日の介護に試していただくと嬉しいです。

認知症介護に必要なこと

認知症になったからと言って、全くの別人になってしまうわけではありません。

認知症の人に接するときは、以前とは違う特殊な人なのだとは思わずに、変わらぬ目線で接しましょう。

現在の認知症ケアの基本的な考え方

認知症の人の「食事」「排泄」「入浴」を介助することだけが、認知症の人の「ケア」ではありません。

認知症の人に生きがいを持ってもらい、「生きていて良かった」と感じてもらうことが大切です。

パーソン・センタード・ケアとは?

「パーソン・センタード・ケア」とは、認知症の本人の視点に立ったケアです。

パーソンとは「その人」、センタードは「中心にする」の意味で、認知症の人を1人の「人」として尊重し、その人の立場に立ってケアを行おうとする考え方です。

〇その人を中心にしたケア
〇その人の視点に合ったケア
〇その人がどのようなことを考え、何をしたいと思っているかを理解するケア
〇その人らしさを大切にするケア

の4つの理念から成り立っています。

認知症の人が求めている心理的な「5つの要件」

認知症の人が常に求めている事とは何でしょうか。

パーソン・センタード・ケアでは、認知症の人が求めているものは、なぐさめ・愛着・帰属意識・携わること・自分らしさの5つだと考えます。

なぐさめ…混乱しやすく不安になりがちな認知症の人に、安心と温かさを与える。
愛着・帰属意識…環境の変化。居場所や介護者が変わることは、心のよりどころや基本的な確かさを失うこと。
携わること…個人的に意味のある方法で生活に関与すること。役割。
自分(その人)らしさ…認知症の人のアイデンティティ(存在証明)。その人の生き方は?

認知症の人にとって大切なことは、馴染みで安心できる居場所と役割、昔の話しを聴いてくれたり、一緒に笑い合える相手がいること、なんでしょうね。

では、次からは具体的なコミュニケーション法として「ユマニチュード」と「バリデーション」を説明します。

認知症のケアの技法「ユマニチュード」とは?

ユマニチュードは、人間らしいケアに重点を置いています。

本人が持っている能力を最大限に引き出しながらコミュニケーションを取ります。

ユマニチュードの「4つの柱」

では、ユマニチュードの基本動作の4つの柱、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の具体的方法を見ていきましょう。

見る
視線の高さを合わせて、正面から、顔を近づけて、見つめる時間を長くとるようにします。

話す
わかりやすい言葉を用い、優しいトーンで、穏やかに話しかけます。ケア内容も実況します。

触れる
ゆっくりと、手のひら全体で、なでるように優しく触れます。

手や顔、唇などの敏感な部位にいきなり触れると驚かせますので、声をかけながらゆっくりと肩・腕・背中などから触れていきます。

また、ケアを行うときは、無意識につかんでしまわないように注意しましょう。

立つ
トイレまで歩いたり、洗面、歯磨き等のケアに立ったり座ったりなどの工夫をしてみましょう。日常的に一日に20分ほど立っている時間をつくれます。

ユマニチュードの「5つの実践ステップ」

ユマニチュードでは、認知症の人にこそ「私たちが当たり前に行っていること」が大切だとして「5つのステップ」を定めています。

出会いの準備
「おはよう」「こんにちは」などのあいさつは、きちんと目を見て相手が分かるように行いましょう。

ケアの準備
「今から○○をしますよ」「△△に行きますよ」などのこれから何をするのかの説明と同意です。

知覚の連結
ユマニチュードの4つの柱「見る」「話す」「触れる」「立つ」を利用しながらケアにあたります。

感情の固定
認知症の人は、認知症が進行しても感情の起伏があった出来事のことはよく覚えている傾向があります。

例えば、話しているのに無視された・急に声をかけられてビックリした・厳しく注意された…などのイヤな感じ、不安な感じは感情として覚えているということです。

再会の約束
ステップ1からステップ4までをしっかり実行することができたら、次のケアの約束をします。 これが「再会の約束」です。

言葉自体がちょっとわかりにくいですが、要するに、きちんと挨拶して、何をするのか分かりやすく説明して、「いいよ、分かった」と言ってもらってケアを開始する。一つひとつの行為を話しながら、ゆっくりと行う。

そして、「お疲れ様、ありがとう」で終了する、ということです。

大事なことは、「自分だったらどうだろう?」と思うことかもしれません。

認知症の人とのコミュニケーション法「バリデーション」とは?

バリデーションは共感して接することを重要視している手法です。

「バリデーション」の基本的5つの姿勢

バリデーションには、ケアに対する5つの姿勢が示されています。

〇傾聴する
認知症の人と接するときには、自分が先に何か言わなくちゃと思いがちですが、実際には聴くことの方が大切です。介護をする人が先に発言してしまうと、認知症の人はその返事をすることに頭が一杯になって、本人が言いたかったことを忘れてしまうかもしれないからです。

〇共感する
認知症の人の感情が表れている状況(表情・呼吸のペース・姿勢など)を観察し、感情を共感するようにします。

〇ペースを合わせる
我慢が必要かもしれませんが、認知症の人のペースに合わせて、ゆったりとした時間を作っていきましょう。

〇強制しない
認知症の人を現実に引き戻そうと誘導したり、否定しないようにしましょう。

〇うそをつかない・ごまかさない
認知症になった人が真剣な表情で訴えているのに、適当にあしらったり、その場しのぎの嘘でごまかさないということです。

「バリデーション」のテクニックとは?

バリデーションには以下の主なテクニックがあります。

リフレージング(反復)
認知症の人が話した中で大事だと思われるキーワードを繰り返します。キーワードからその人が言いたいことをしっかりと受け止めましょう。

オープンクエスチョン
「いつ」「どこで」「何を」「誰が」「どのように」などの問いかけを多用し、自由に回答ができるようにします。ただ、「なぜ?」という質問は認知症の人にとって答えることが難しいので避けるようにしましょう。

レミニシング
懐かしい過去の出来事について質問し、昔話をしてもらいます。認知症の人が繰り返す昔話には、大切なメッセージが込められていることも少なくありません。

はっきりとした低く温かい声
声のトーンを低めに抑えて、はっきりとした温かい口調で話しかけます。認知症の人に声のトーンを合わせます。

その他で気を付けること
正面から話を聴く相手が心地よいと感じる距離をキープする短い時間で試してみる音楽を用いるなど意識しましょう。

例えば、夕方のリビングなどでソワソワして…
認知症の家族:早く帰らなくちゃ!
家族:帰らなくてはいけないの?(リフレージング)
認知症の家族:そうなの。
家族:帰って誰に会うの?(オープンクエスチョン)
認知症の家族:お母さんよ。
家族:そうなの。一緒に何をするの?(オープンクエスチョン)

ちなみに「バリデーション」は、すべてのテクニックを使う必要はなく、使う順番も特にありません

回想支援

認知症の人は最近のことは忘れても、遠い昔のことは比較的よく覚えています。

回想を促すには、若いころの写真、使い慣れた家具やベーゴマなどの昔の品物、古いポスターや漫画、懐かしい食べ物などが役立ちます。

家庭で行う回想支援

その人が使っていた道具や思い出の品を手がかりに、家族で楽しく語らいましょう。カルタやすごろくなどのゲームも沸きます。この時、気を付けることは「今ならこうだ」などと無理に現在へと引き戻したり、「私はこう思う」などと意見をはさまないことです。

まずは、のびのびと楽しく語り合いましょう。

こちらもおすすめ

こちらもおすすめ

マンガでわかる!認知症の人が見ている世界2

認知症の人が見ている世界と、周囲の家族や介護者が見ている世界との違いをマンガで克明に描き、困った言動への具体的な対応策を紹介しています。
本書を読んで認知症の人が見ている世界を理解することにより、認知症の人への適切な寄り添い方を知り、毎日の介護の負担を軽減する一助としてください。


認知症の親を介護している人の心を守る本

家族に認知症がいるすべての人必読!「介護疲れ」を無視して頑張ろうとしていませんか? 

懸命に支えても、尽くしても止めれない進行への理解と「ケアを続けられるしくみ」づくりで、時間的、精神的、肉体的な負担が軽くなる方法。

まとめ|家族にしかできないケア

家族が認知症になってしまった場合、以前とはまるで違う姿を目にするのは家族にとって複雑な気持ちになることでしょう。元気だった姿を思い出すと、つらい思いになります。「しっかりしてよ」と言いたくなる時もあると思います。

以前の姿を知っていればこそですが、認知症の人には、まず、安心してもらうことが重要です。

ここでは、認知症の人に対するコミュニケーションの技術を紹介しましたが、大事なことは、無理をせずにゆったりとした気持ちで、「大丈夫よ」という声かけと笑顔でケアをすることです。

気心の知れた者同士の、言葉や理屈でない和やかなフィーリングのやり取りが行える家族の存在は、認知症の人にとってとても重要です。

注意点として、これらの技法は、主にアルツハイマー型認知症及びその類似症の人とのコミュニケーションなので、その他の認知症の場合や非常に症状が激しい場合は、早めに主治医に相談してくださいね。

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

TOP