親が認知症で介護が必要になったとき、自宅での介護に限界を感じることがあります。
そんなとき、助けになるのが施設に入所して受けられる介護サービスです。
施設の入所の申し込みに来られた人から私が一番多く聞いた悩みは、認知症のBPSD(行動・心理症状)、中でも徘徊・トイレの不始末・夜間不眠・被害妄想でした。
このようなBPSDが度重なると、介護者が心身ともに疲弊して、同居でも別居でも、在宅介護は限界に近い状態になります。
認知症が初期から中期に入ってBPSDが見られるようになり、家庭での介護が困難になった時や、共倒れの心配が出てきたら施設への住み替えの検討時期です。
インターネットでなどで高齢者向け住宅について調べると、多くのサイトで「介護施設」と「老人ホーム」という言葉が使われていますが、違いについてきちんと知っていますか?
この記事では、施設に入所して受けられる介護サービスについてまとめています。
親に合う施設を選ぶために、違いをしっかり整理しましょう。
高齢者向け施設の種類と内容
高齢者向け施設は大きく分けて、主に地方公共団体や社会福祉法人などが運営する施設と、民間が運営する施設があります。
介護保険施設:地方公共団体や社会福祉法人などが運営する高齢者向け施設
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院(介護療養型医療施設)
老人ホーム:主に民間が運営する高齢者向け施設
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者住宅
- グループホーム
- ケアハウス(2001年から民間も運営が可能に)
この中で、有料老人ホーム・ケアハウス・サービス付き高齢者住宅は、自立した人と介護が必要な人が住み分ける施設です。
今回は、「認知症で介護が必要となった場合に入所する施設」に絞ってみていきましょう。
介護保険施設の種類と特徴
では、まず介護保険施設について説明しましょう。
介護保険施設で主に要介護者を対象とする施設は以下の3つです。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護医療院(介護療養型医療施設)
(※介護療養型医療施設は2023年度末で完全廃止となり、介護医療院へ変更。)
これらの施設では、すべて介護保険で施設サービスが利用できます。介護保険で施設サービスを受けられるのは、この3つの施設だけです。
そのため、費用が比較的安く、施設やサービスなどの水準が一定基準以上に保たれています。
慢性の病気があったり、認知症がかなり重度であっても、生活面での対応が可能であれば受け入れることができる施設です。
また、所得による食費や住居費の負担軽減の制度もあります。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは福祉施設なので、比較的費用の負担が少なく、手厚いケアが期待できます。重介護の人を中心にケアを提供し、看取り介護も行う施設が多いです。
慢性の病気があったり、認知症がかなり重度であっても、生活面での対応が可能であれば受け入れることができます。
平均要介護度は3.9となっています。人気が高く入所待機者が多いのも特徴の一つです。
定員30人未満の小規模な特別養護老人ホームで、入浴・排せつ・食事等の介護だけでなく、利用者に合わせた機能訓練を利用できる「地域密着型介護老人福祉施設」もありますが、地域密着型なので、施設と同一の住所地を持つ人が入所対象者となります。
30人以上の特養は広域型といい、日本中どこからでも複数の施設への入所・申し込みが可能です。
入所できるのは、原則として65歳以上の要介護3以上となっていますが、特例で入所ができる基準も設けられていますので、特養へ入所を希望する場合は、担当のケアマネ-ジャーに相談してみてください。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、基本的に入所が短期間に限られ(原則として3か月)、リハビリを中心にした在宅復帰のための中間施設です。
しかし最近は、自宅への復帰が難しく長期にわたる入所者が多いのが現実で、平均介護度も3.3と高い状態です。65歳以上の要介護1以上の人が対象で、医師や看護師などが常駐しているため、安心してリハビリに取り組むことができます。
介護医療院(介護療養型医療施設)
介護医療院(介護療養型医療施設)は、長期の医療が必要な医療依存度の高い人を対象としています。
介護保険施設の中では最も医療サービスが充実しており、平均の要介護度は4.4と重度な人が多いのが特徴です。
こちらも医師や看護師などが常駐し、65歳以上の要介護1以上の人が対象です。
老人ホームの種類と特徴
次に、老人ホームについて説明していきます。
老人ホームは、主に民間企業が運営する高齢者向けの施設の総称で、「食事の提供、介護(入浴・排泄・食事)の提供、洗濯・掃除等の家事の供与、健康管理のいずれかのサービス(複数も可)を提供している」施設です。
例えば、一人が元気で一人が要介護のご夫婦などの「ずっと一緒にいたい」をかなえてくれる施設でもあります。
「施設」というより、「住まい」と考えた方が分かりやすいかもしれません。賃貸住宅等に住んで必要な支援を受ける、という点から、これらのサービスは居住型サービスとも呼ばれます。
老人ホームと呼ばれる住まいで、要介護者等を対象とするサービスは以下の4つです。
- 有料老人ホーム(介護付き・住宅型)
- サービス付き高齢者住宅
- グループホーム
- ケアハウス
有料老人ホーム
有料老人ホームには介護付き・住宅型・健康型の3種類がありますが、ここでは、介護付きと住宅型について説明します。
■ 介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは「一般型」と「外部サービス利用型」があり、有料老人ホームのなかで最も充実した介護サービスが受けられる民間施設です。
「一般型」は介護スタッフが常駐するため、24時間365日、入居者の状態に合わせた介護を受けることができます。職員配置も特養と変わりません。
介護保険法の特定入居者生活介護事業者の指定を受けています。
有料老人ホームは一時期大型のものが多かったんですが、最近は、施設のある地域に住民票のある30人未満の地域密着型特定入居者生活介護を提供するホームも増えてきました。
「外部サービス利用型」は、ホームから委託された外部の事業者が在宅の介護サービスを提供しますが、施設内で介護を受けることは同じです。
入居条件は、介護型は要介護1以上です。
■ 住宅型有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームとは異なり、介護度に関係なく60歳以上の人が入居できます。入居者の幅が広く、レクリエーションの種類が多いことが特徴です。
介護が必要な人だけが介護を受けられるため、自立度・介護度が違う人が一緒に入居を検討するのに選択肢として挙げることが多いホームです。
介護サービスを受けたい場合には、外部の在宅介護事業者と入居者が契約し、在宅での介護サービスと同様に利用します。
老人ホームのケアマネージャーだけでなく、外部のケアマネージャーにケアプランを作成してもらうこともできるので、今までと同じケアマネージャーと関係が継続できるのもメリットです。
在宅で馴染みのあるケアマネージャーや介護事業者さんと繋がることは、認知症の人にとって安心感になるかもしれません。
注意点として、どのタイプの有料老人ホームも、介護保険外サービスの有無や、重度化した場合の対応などは経費の増大につながります。入居一時金の取り扱いも含めて、入念なチェックが必要です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
バリアフリーなどの設備があり、入居者の約3割は自立の人が入居している住宅です。安否確認、専門家による生活相談サービスはありますが、食事や介護を含むそのほかの提供サービスは施設によって違います。
介護サービスを利用する場合は、外部の訪問介護事業者や通所事業者等と契約する必要がありますが、多くは建物内に介護ステーションなどが併設されています。
夫婦どちらかが軽度の認知症で、一緒に入居したいという場合に検討されることが多いです。
自由度が高く外出に関する制限もほぼありません。ずっと住み続けても良いし、気に入らなければすぐに退去することも可能です。
60歳以上の人、または要支援・要介護認定を受けた60歳未満の人が入居できます。
グループホーム(地域密着型認知症共同生活介護)
グループホームは、認知症の高齢者が入居できる地域密着型サービスです。
グループホームは、多様な事業者が参入し、全国で10,000以上の施設があります。
それぞれの施設で特徴もありますし、利用料以外の費用も異なる場合があります。
認知症に特化したきめ細かな対応ができる、認知症の人のための施設です。認知症の特徴を踏まえて少人数で共同生活を送ります。
普通の住宅に近い環境で、認知症の進行を緩やかにすることを目的とし、家事を分担したり、買い物に行ったり普段の生活を提供します。
社会福祉法人から営利法人まで数多くの事業者が参入していますので、料金体制やケア体制は千差万別です。十分に情報収集してください。
医師により認知症の診断又は専門医を受診し診断書が発行されている、要支援2以上、施設と同一の市区町村に住民票があることなどが入居条件です。
介護保険施設のように食費や居住費の負担軽減の制度はありませんが、在宅で受けられる補助が受けられる自治体もあります。確認してください。
医療職の配置が必須ではないため、医療依存度の高い人や、共同生活に困難な症状のある利用者の場合は、入居の申し込み時に断られたり、入居後も退去を進められる場合があります。
ケアハウス
ケアハウスは、身寄りのない高齢者や家族との同居が困難な高齢者に対して、国が定めた低額な料金で入居できる高齢者福祉施設の一つです。
定額で住居を提供する軽費老人ホームの一つで、ケアハウスには介護を必要としない人向けの一般型と介護を必要とする人向けの介護型という2種類があり、それぞれ利用料が異なります。
また、一般型は60歳以上、介護型は要介護1以上かつ65歳以上の人が対象です。
一般型ケアハウスでは、要介護状態になっても訪問介護サービスなどの在宅サービスを受けながら暮らすことができますが、要介護度が進むと退去しなければならない場合があります。
特定施設入居者生活介護の指定を受けた介護型のケアハウスは、施設のスタッフによって介護サービスを受け、最後まで暮らすことができます。
最近は、施設と同一の住民票を持つ人が対象で小規模の、地域密着型特定施設入居者介護を提供するケアハウスも増えています。
お住まいの自治体に確認してみましょう。
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しかし、脳科学の視点からみれば、ご本人の行動の理由は説明がつく真っ当なものばかり。
家族や介護者が「なぜ?」と思う認知症の人の行動を、34の事例で取り上げ、その理由を脳科学で説明しています。
最後に
「認知症だけど入れますか?」という質問をよく受けます。
認知症という病気は、人それぞれで出てくる症状が違いますし、現在では『これがあれば大丈夫!』という特効薬もありません。
今、高齢者の住まいは多種多様です。介護度で選ぶか、費用で選ぶか、場所で選ぶか、多くの情報が得られやすくなっています。
もちろん、施設に直接問い合わせすることもできます。
「介護に疲れた…」と思ったら、プロの力を借りる、プロと一緒に協力しながらその人に合った介護を目指しましょう。
投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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