孫から見た介護。
祖母が認知症になりました。私には関係ない話だと思っていました。うちのおばあちゃんがなるなんて思いもしませんでした。異変を感じたタイミング、認知症の初期症状、認知症の検査方法、認知症と診断されてからしたことについて経験談をお話しします。
認知症って身近なもの
2021年、私の祖母は最近認知症と診断されました。
認知症という名前はよく聞くし、ドラマでも認知症役のおばあちゃんが出たりはしていたけれど、私には関係ない世界だと思っていました。まさかうちのおばあちゃんがなるなんて、思いもしませんでした。
だって、可愛くて、おせっかいで、心配性なおばあちゃんが、いろんなことを忘れてしまうなんて誰が想像つくでしょうか。
自己紹介
私は20代後半のごく普通のOLです。
祖母は80代前半。縫い物が得意で、化粧もして自分で白髪も茶色に染めているような祖母です。祖母は父方の方で、祖父は私が産まれる前に亡くなっているので、かれこれ30年以上一人で暮らしています。
父は60代前半で、母は50代後半。父には兄妹がおり、主に介護は私の父母と叔母叔父が担当しています。
私と祖母の思い出
祖母との思い出は、小さい時に夏に帰省するたびに連れて行ってもらったポケモンの映画。毎年祖母と行くのが楽しみでした。
また、私が大学生の時に祖母と二人暮らしを2年ほどしていた時がありました。第二の子育てのような感じで、ご飯を作って待っていてくれたり、いろいろと気にかけてくれていました。
当の私はうっとうしく感じて冷たい態度をとってしまうこともありましたが…。祖母も大変だわ、と言いながらも本当によく気にかけてくれました。料理もたくさん出してくれて、もう子どもじゃないからこんなに食べられないよ、と言いながら全部頑張って食べていた頃を懐かしく思います。
異変を感じたタイミング
最初に私が異変を感じたのはなんだか物忘れが多いなと思ったときです。
父に電話をかけてきて、お金がなくなった、物がなくなったと連絡が来るようになりました。今まではそのようなことは一度もなく、そもそも父に連絡をしてくる頻度も少なかったので、最初はなにか寂しいのかなぁぐらいで考えていました。
しかし、あまりにも頻度が多くなってきたことと、物が盗られた、誰かがお金を置いて行ったなど、なんだかおかしいなと感じることが多くなってきました。
また、祖母は昔かかった病気の関係で定期的に病院に通っていました。明日検査があるから今日の夜はご飯を食べないでいてねと伝えていたのに、忘れて食べていて検査ができない時もありました。
「最近ばあちゃん忘れっぽいね」、「なんかおかしいね」、と笑って家族で話題にしていましたが、誰も認知症という言葉は出しませんでした。私もなんとなく認知症なのかもと思ってはいましたが、口に出すと認めてしまうようで言えなかったのです。
今となっては、この時に病院できちんと検査すべきだったと後悔しています。
認知症の初期症状の種類
私の祖母の例を出しましたが、他にも
- さっきまで電話をしていた人の名前がわからない
- 料理、計算、運転のミスが増える
- やる気がなく、だらしなくなる
- ささいなことで怒りっぽくなる
- 趣味や日課に興味を示さなくなる
など認知症の初期症状は様々です。
身近な方でこのような症状が見られた方は早めの検査をおすすめします。
認知症が分かった時
その後、祖母がたまたま病院に入院することがあり、その時に病院の方から、認知症のテストを受けてみましょうと言われました。
私の祖母は「長谷川式認知症スケール」という認知症のテストを受けました。このテストは、限られた時間と限られた場所で、医師が効率的かつ公平に認知機能の低下を診断するために1974年に開発されたものです。診断結果はあくまでも参考なので、正確には病院に行って検査・診断をしたほうがいいそうです。
私の祖母はこれまでの行動から見ても、テストの結果から見ても、認知症と考えるのが妥当でした。
認知症かどうかを調べるための方法
認知症かも、と気になる場合は病院に行き、基本的には問診→面談・診察→検査という流れで調べます。
診察内容としては、血圧測定や聴診などの一般的検査を行い、発語・聴力・歩行状態などの確認、CT・MRIなどの脳画像診断を行います。
検査の種類はいろいろとあり、私の祖母が受けた長谷川式以外にも
- 神経心理学検査
- ミニメンタルステート検査
- 時計描画テスト
- ABC-DS
など様々なものがあるようです。
あわせて読みたい
認知症と診断されてからしたこと
認知症と診断されてからは、弁当の配達サービスを頼みました。
高齢者に弁当を配達してくれるサービスがありますが、安否確認までしてくれるサービスも増えてきているのをご存じでしょうか。
もちろん私たちが弁当を頼んだ目的は、健康な食事を取ってほしいのもありましたが、お昼に弁当を持って行ったついでに安否確認をしてほしかったという面もありました。
日中は私の両親も叔父叔母も、みんな働いていて祖母のことがわかりません。しかし、このサービスを利用することで、昼に祖母が家にいなかったら連絡をしてもらえるので、探しにいくこともできました。
その後、徐々にデイサービスと訪問介護の利用も始めましたが、当初は要介護認定が取りづらく、介護度は「要支援」。デイサービスも訪問介護も週に1度程度しか使えませんでした。
要介護認定は一次判定・二次判定に沿って決定しますが、その時の状況で、家族が思うような介護度で認定されないこともあります。
一緒に住んでいない私たちからすると日中出歩いて、帰って来られなくなったらどうしよう、家で何か起きたらどうしよう、と気が気ではありませんでした。
ある日、自宅のストーブでやけどをしていたことがありました。服が焼けて肌もただれていたのに、私たち家族にはなんの連絡もなく、ヘルパーさんからの連絡でそのことを知りました。痛かったはずだし、熱かったはずなのにどうして連絡をくれなかったのか…聞いてもわかりませんでした。もしかしたら、そのやけどをしたことも忘れていたのかもしれません。
そんなことがあってから、なるべく日中は施設や訪問を使いたいと思っていました。
しかし、要支援では使えるサービスが限られています。働いている家族にとっては、要介護認定も弊害になるのか、と自分で体験してみて分かったことでした。
現在の介護状況
祖母は今、要介護1と認定されています。デイサービスを週3回、訪問介護を週2回、訪問看護を週1回、デイサービスがない週4回は弁当を頼んでいます。働いている家族でも、このようなサービスを利用することによって、なんとか介護ができている状況です。
たまに病気をして入院することもありましたが、病院に閉じこもっているよりも、自宅にいて、たまにデイサービスに行くほうが、色々と認知症予防のレクリエーションがあったり、人と触れ合うことで進行が違う気がすると母が言っていました。
つらかったこと
実は私は認知症と診断されたぐらいに会ったきり、祖母に会っていません。私も自分の生活があるので、基本介護は親に任せっきり。いつも親からこんな感じだよ、という話を聞くだけです。
最後に会った時、祖母は別の病気で病院に入院中でした。コロナもそんなに酷くない時期だったので面会はできました。病室に行くと祖母はおらず、広場みたいなところで他のご利用者の方と、手の運動になるビニール袋を開く作業をしていました。
ここで衝撃だったのが、私を見て第一声が「あーよく来てくれたね、(いとこの名前)ちゃん」。その時は笑って「違うよ、(私の名前)ちゃんだよ。」と言い直し、すぐに祖母も「いつもと雰囲気が違うから間違えちゃった」と言いましたが、私はかなりショックでした。
祖母の記憶の中で私という存在が消えかかっているのを、目の当たりにしたからです。その場では普通に話をしましたが、帰り道では涙が止まりませんでした。
この名前を間違えられて以来、私は祖母に会いに行けていません。また間違われたらどうしよう、次はもう思い出してくれないかもしれない、そう思うと足が進みません。最近母に聞いた話だと、母のこともわかっていないようでしたし、父やいとこ家族で喜寿をお祝いした時の写真を見せても、孫の顔をわかっていないようでした。
これから
祖母は今は元気ですが、80代で、これから先どうなるかわかりません。認知症は発症から10年程度で末期まで進行するとも言われています。
現実に向き合うことはつらいですが、私自身も認知症への理解を深めて、また祖母に会いに行こうと思っています。
こちらもおすすめ
マンガでわかる!認知症の人が見ている世界2
遠藤英俊(監修)川畑 智(著)
認知症の人が見ている世界と、周囲の家族や介護者が見ている世界との違いをマンガで克明に描き、困った言動への具体的な対応策を紹介しています。
本書を読んで認知症の人が見ている世界を理解することにより、認知症の人への適切な寄り添い方を知り、毎日の介護の負担を軽減する一助としてください。
「認知症の人」への接し方のきほん
矢吹知之(著)
あなたの家族に最適な接し方が見つかります。
認知症の人への接し方には、万人に通じる答えは存在しません。
この本では、「困った行動」を場面ごとに紹介し、その背景にある様々な原因をひも解きながら、一人ひとりの感情を理解して、その人に本当に合った接し方を見つけるための方法を具体的に解説しています。
また、「認知症介護の心得」や「頼りになる相談先の見つけ方」などの実践的なノウハウも盛り込みました。
はじめて認知症介護をする方はもちろんのこと、「本やインターネットに書いてある通りにやってみたけれど上手くいかなかった」という人にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
認知症の親を介護している人の心を守る本
西村知香(監修)
家族に認知症がいるすべての人必読!「介護疲れ」を無視して頑張ろうとしていませんか?
懸命に支えても、尽くしても止めれない進行への理解と「ケアを続けられるしくみ」づくりで、時間的、精神的、肉体的な負担が軽くなる方法。
投稿者プロフィール
- 広島県在住。2021年80代祖母が認知症と診断。20代OL。両親を中心に介護中。
最新の投稿
- 認知症2023年1月25日孫から見た介護。認知症って認めたくない。
コメント