高齢者の便秘は危険です。運動量や内臓機能の老化により、便秘症状のある人が増えますが、体だけでなく精神的な不安に陥るなど、心身ともにマイナスの状態になってしまいます。
この記事では、高齢者が気を付けたい華麗による便秘の種類とその対策についてまとめています。
高齢者の便秘は危険!高齢になるにつれ増加する「便秘」症状
加齢と共に「便秘」のお悩みが増えやすいことをご存知ですか?
その数は50歳代から徐々に増加し、70歳代の後期高齢者世代で急増。80歳代では男女とも約4人に1人が便秘の自覚がある状態となります。
この調査の数は「便秘の自覚がある/調査に回答できる」状態の方の数値ですので、潜在的な高齢者の便秘はより多くなると考えられます。
●「便秘」とはどんな状態のこと?
そもそも「便秘」とはかなり個人の感覚的なものであり、また各医学学会によってもその定義に違いがあるものなのですが、一般的には『3日以上排便がない状態、1日の便の量が35g以下の場合、排便前後に不快症状がある場合』などと定義されています。
●便が作られるしくみを知る
通常、口から摂った飲食物などの水分や胃などの臓器からの分泌液は小腸へと流れ込み、そこで他の栄養素と共に大部分が吸収されています。
残った2割ほどの水分が未消化物と共に大腸へと流れ、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)により更に移動しながらそこで最後の水分吸収がなされて、便が形成されていきます。
(大腸を通る内容物はおよそ1秒間に1センチほどの速さで送られ、その滞在時間は10時間前後といわれています。)
「便秘」とはその消化吸収の過程で何らかの異常が生じて起こるものなのです。
●便秘からイライラや精神不安定が?
東洋医学ではこの「便秘」が起こると腸に熱を生み、その熱が頭部に登って「頭をおかしくしてしまう」と考えられています。
これは私の認知症の親の話なのですが、確かに、排便のない日が続くと怒りっぽくなったりそわそわしたり。また溜まった便が出る直前には走り回ったり倒れ込んだりして、お互いに負担となる事が度々ありました。
その他、便秘は肌荒れや体臭の悪化、内臓の痛みや肩こりなどを引き起こす事は勿論、近年では便秘により高齢者の認知機能の低下が起こることも分かってきているそう。
こうしたことからも、腸は脳を含む全身と密接に関係していることが分かります。
高齢者の便秘はなぜ起こる?便秘の4分類とは
そのような「便秘」の原因や種類には一体どういったものがあるのでしょうか。
便秘の原因や種類は大きく分けて以下の4つに分類されています。
①機能性便秘…腸の働きの異常により起こる
②器質性便秘…腸内の腫瘍などによる物理的な障害で起こる
③症候性便秘…病によるホルモンや神経の異常により起こる(甲状腺などの内分泌系疾患、糖尿病合併症など)
④薬剤性便秘…飲んでいる薬の副作用により起こる(抗うつ薬、咳止めや喘息、頻尿、パーキンソン病の薬剤など)
高齢者には上記のどの便秘も起こりうるものですが、②から④のような持病や服薬を除けば、最も①の機能性便秘を起こしやすいといわれています。
高齢者に特に起こりやすい「機能性便秘」とは
高齢者が陥りやすい「機能性便秘」は、加齢による体の弱りやストレス・運動不足などの生活習慣から起こるとされ、更に詳しく4タイプに分類されています。
①弛緩性便秘とは
腸は筋肉でできています。このタイプの便秘は、加齢や栄養不足などでその筋肉が弱ったり力が入らなくなり、動きが弱まる事で起こります。
腸の筋肉が弱りその蠕動運動も弱まると、内容物がなかなか運ばれず腸内の滞在時間が長くなり、そのため水分が吸収されすぎてしまい、どんどん便が固く・排出も遅くなっていきます。
ちなみに東洋医学では「虚のタイプの便秘」とされ、気が足りない・弱っている人(=虚)に起こりやすくなります。
②痙攣性便秘とは
不安やストレスをはじめ、何らかの理由で自律神経が乱れてしまい、大腸の蠕動運動が痙攣様となったり規則性がなくなって、便の運搬が滞ってしまう便秘です。
大腸をはじめとする消化器官は、副交感神経の管轄で働いています。程よくリラックスできている状態で安定して消化・排便が行われるため、ストレス下などの交感神経過活動状態ではそのような問題が起きやすくなります。
また、強い下剤の常用などで無理やり腸を動かしている場合も、神経に負担がかかり同様の便秘が起きやすくなります。
東洋医学では「実のタイプの便秘」とされ、同じくストレスなどが「過剰=実」の状態で起こるものとされています。
③直腸性便秘とは
便の出口である「直腸」には、便が到着するとその刺激を受けて「排便反射」を起こす仕組みがあります。
ただし、加齢により体の感覚が鈍ってきたり、何らかの理由で排便を我慢することを続けていた場合、排便反射を感じにくい・起こりにくい状態となり、便が直腸内で固まってお尻に栓をするような便秘となります。
高齢者の場合ですと、足腰が弱ったり寝たきりなどで排便を我慢することで起こりやすくなります。
④食事性便秘とは
「歯が弱り繊維質を充分に摂れない」「食欲不振でそもそも食べる量自体が減ってしまった」など、食事に関することが原因で起こる便秘です。「そもそもの便の材料が少ない」というのがこの便秘の大きな原因となります。
このタイプの便秘は①〜③のタイプの便秘と併発もしがち。
食が細くなった高齢者だけでなく、若い方でも朝ごはんを抜いたり無理な食事制限のダイエットなどで起こってしまいます。
タイプ別!便秘の種類の判断目安と対処法
以下では上の項の各便秘タイプごとに、その判断の目安と対処法をご紹介していきます。
①弛緩性便秘の判断目安とおすすめの対処法
→腸の動きが弱まる弛緩性便秘
判断目安
・運動不足や筋力低下がある
・よくお腹が張っている
・便意がさほど無い
・便は太めかつ固い
対処法
・運動量を増やす
・体の負担にならない程度にタンパク質の摂取量を増やす(多すぎは便量減少や悪玉菌増加に繋がります)
一般的に「便秘には野菜(食物繊維)や水分!」などと言われ取り入れやすいのですが、腸が弱り動きが悪いこのタイプがそれらを摂ると負担となるだけでなく、滞留が腸内で発酵して「腹が張りガスばかり出る」ような状態に。マグネシウム系の便秘薬でも同じような結果となる事があります。
このタイプは本人の様子を見ながら、センナや大黄などが含まれる少し強めの下剤で便を取り除きつつ、運動で血流を良くしたり、筋力や元気を回復させるのがおすすめです。
※ただし下剤は体力を使うため、弱っている方には慎重に用います。
②痙攣性便秘の判断目安とおすすめの対処法
→大腸がストレスなどでバランスを欠いている痙攣性便秘
判断目安
・ストレスの自覚がある
・気候など環境変化に敏感である
・下腹部が張ったり急に痛むことがある
・うさぎのフンのようなポロポロ便
・もしくは便秘と下痢が交互にくる
対処法
全体的に過敏になりやすいため、冷たい物や味の濃い油もの、不溶性食物繊維繊(根菜やキノコ、豆)など刺激になりやすいものは摂りすぎないようにします。
また、優しいタイプの便秘薬に変えるのもおすすめ。もちろん運動もおすすめですよ。リラックスする時間もお忘れなく。
このタイプは、体内に滞りや余分の多い「実証タイプ」の方が多いため、その場合ヨーグルトなど湿気由来の滞りを生みやすいものを摂ると余計に滞留の元になる可能性があります。「便秘にはヨーグルト!」と思い込み過ぎず、自身の体質や状態と相談しつつ飲食を心がけてみてください。
③直腸性便秘の判断目安とおすすめの対処法
→排便反射が弱り直腸付近に便の滞留が起こる直腸性便秘
判断目安
・便意を我慢してきた経験がある
・軽い便意ならトイレに行かない
・いきまないと便が出ない
・栓のように便が出口で固まっている感覚がある
・便のはじめを出すのが大変だが後半部はやや楽
・残便感がある
対策
このタイプは別名「習慣性便秘」ともいわれており、文字通り生活習慣の積み重ねで起こるため、生活の見直しが改善のカギとなります。
具体的には「便意がなくても毎朝少しの間、便器に座る習慣をつけること」。また「少しでも便意を感じたらなるべくすぐにトイレに行く事」です。自分自身からの「サイン」を無視せず、しっかり自分の体と向き合ってみましょう。
またこちらも便を柔らかくしてくれるマグネシウム系の便秘薬がおすすめです。(高齢者は常用で「高マグネシウム血症』に注意)。
更にウォーキングや乳酸菌を生活に取り入れてみてください。
④食事性便秘
→食事量自体が少なく、そもそもの便が作られにくいため出にくい便秘
判断目安
・朝食をぬいたり食事量が少ない
・一回の便の総量が少ない
・便意が少ない
・食欲がない
対処法
まずは朝ごはんを少しだけでも食べること。理想は3食しっかりと食べることです。栄養ドリンクだけで食事を済ませたりしないようにしましょう。
また不溶性食物繊維(オートミール)など、便の元となる食材を多めに取る事で、便のかさが増え、排出しやすくなりますよ。
まとめ
高齢者が陥りやすい様々なタイプの便秘を見てきました。
便秘は体全体の色々な不具合を受けて起こり、同時に全身に様々な負の影響を及ぼしてしまいます。
タイプが重複した便秘の場合もありますので、体質や症状をよく見極め、スッキリ快調な生活が送れるよう取り組んでみてくださいね。
こちらもおすすめ
トイレを快適にする商品も多数取り揃えています。ぜひご覧ください!
コメント