認知症の給付金はある?医療費や薬代を減額できる「自立支援医療制度」や公的制度を知っておこう

介護の豆知識

親が認知症になると、薬代として1錠2,000円以上のものもあったりと、決して安くはない医療費がかかります。

今回は、そんな時に知っておきたい医療に関する支援制度について、解説していきます。             

あまり知られていない制度ですが、知っていれば医療費や薬代を減額できる可能性があります。

この記事であなたの医療費の不安が少しでも解消できますように。

お役に立てれば嬉しいです。

認知症を支える公的な減免制度とは?

認知症の治療は長期にわたることが多く、医療費の負担が大きくなってきます。
しかし、認知症の方の医療費負担を軽くするために、国にはいろいろな公的な減免制度が用意されています。

  • 認知症は障害認定の申請が可能で、精神障害の通院治療には自立支援医療制度が適用される
  • 障害認定が下りれば、税制優遇や医療費の減免等が受けられる
  • 65歳以下なら障害年金の受給申請が可能

ここから、それぞれの制度について内容の説明や申請要件などを解説していきます。

まずは、精神障害の通院治療に適用される医療費負担軽減制度「自立支援医療制度」について見ていきましょう。

自立支援医療制度

自立支援医療制度とは、通院による精神医療を続ける必要がある人の、通院医療費の自己負担を軽減するための公費負担医療制度です。医療機関や薬局、訪問看護などを利用したときの自己負担額が1割となり、1ヶ月間に支払う医療費の上限も設定されます。さらに収入による自己負担額の上限も設けられています。

現在、75歳以上の医療費の自己負担額は1割~3割、74歳未満の医療費の自己負担額は原則3割ですが、自立支援医療制度は、医療費負担が1割となるので、自己負担が2割以上の人にとっては助かる制度です。

この制度の対象となるのは、精神障害(てんかんを含む)により、通院治療(外来・投薬・デイケア・訪問看護等)を続ける必要がある状態の人で、アルツハイマー型認知症や血管性認知症なども含まれます。

認知症と診断された方は適用される可能性がありますので、通院中の医療機関や市区町村の障害福祉課などの担当窓口に問い合わせてみましょう。
適用されると「受給者証(自立支援医療受給者証)」自己負担上限額管理票が交付されます。

「自立支援医療制度」についての留意点

この制度で医療費の軽減が受けられるのは、各都道府県が指定した「指定自立支援医療機関」(病院・診療所・薬局・訪問看護ステーション)に対しての医療費で、受給者証に記載されたものに限られています。

現在通院している医療機関や通院を希望する医療機関が指定されているかどうかは、医療機関に尋ねてみるか、インターネットで検索してみましょう。

高齢者でも受けられる「障害者認定」

認知症で体に障害がない場合は「精神障害者保健福祉手帳」脳血管性認知症などで体に障害がある場合は「身体障害者手帳」を申請することができます。障害の程度で障害等級が決められます。

例えば、64歳以下で認知症を発症した場合は、その後の生活の手段にかなり困窮する可能性があります。障害者手帳を取得することによって、障害年金の受給や就労支援なども受けられる可能性があり、検討して申請するのも一つの方法です。

また、障害者認定は医療費の自己負担額や健康保険料において有利になる可能性があります。
・医療費助成・公営住宅の優先入居・公共交通機関の運賃割引・税の減免・就労支援など

障害認定の申請は任意で、75歳になるまではいつでも申請することができますし、いつでも撤回(75歳になるまで)することができます。障害という名前から躊躇してしまうこともありますが、認定を受けることで障害と介護のサービスを組み合わせてうまく在宅生活を送っている人もいます。

もしご家族が75歳以下であれば、これを機会に医者やケアマネージャーと検討するのも良いかもしれません。

申請は市区町村の障害福祉担当の窓口で、認知症で初めて病院にかかった日から6ヶ月過ぎてから行います。

幅広い傷病による障害が対象となる「障害年金」

障害年金とは、疾病や負傷により障害の状態になった人に支給される公的年金で、認知症も障害年金の対象です。

障害年金には、障害基礎年金(国民年金)と障害厚生年金(厚生年金)があり、認知症で初めて医師等の診療を受けた日の時点(初診日)に加入していた年金制度に応じてどちらかを請求することができます。障害等級によって受け取ることのできる金額が異なります。
また、障害基礎年金や障害基礎年金を受ける方は国民年金保険料の支払いが免除されます。

障害基礎年金の対象
障害の原因となった病気やけがの初診日が20歳前で国民年金の被保険者、または障害の原因となった病気やけがの初診日に60歳以上65歳未満で日本国内に住所がある方である人
障害の程度が1級か2級であること
障害基礎年金の年金額
障害の等級により定額

障害厚生年金の対象
障害の原因となった病気やけがの初診日に厚生年金の被保険者であり、国民年金の障害基礎年金の保険料納付要件を満たしている人
障害の程度が1級から3級であること
障害厚生年金の年金額
払ってきた保険料と加入期間の月数により決定

障害等級の判断基準は、日常生活をおくる上で常時援助が必要な場合が1級、日常生活が著しく制限を受けている場合が2級、仕事に支障が出ている場合が3級となり、受け取ることのできる金額や条件が異なりますので、市区町村の担当窓口に問い合わせをしてみましょう。

もらい忘れの多い「特別障害者手当」

特別障害者手当は、精神又は身体に著しく重度の障害を有するため、日常生活において常時特別の介護を必要とする20歳以上の在宅療養者身体障害者手帳1~2級程度、精神障害者手帳1~2級程度の生活の困難が原則2種類以上一定の所得以下に支給される手当金です。
月額27,300円とし、原則として2月、5月、8月、11月にそれぞれの前月分までが支給されます。(令和5年4月時点)

相談及び申請は、市区の福祉事務所か市区町村の福祉担当窓口です。

医療と介護の両方が合算できる「高額医療・高額介護合算療養制度」

高額医療・高額介護合算療養制度とは、1年間の公的医療保険と介護保険のサービス費の合計が高額になってしまった場合に負担額を軽減するための制度です。

医療保険や介護保険にはそれぞれ、高額療養費制度、高額介護サービス費制度という、1カ月単位で自己負担額が軽減される制度があります。しかし、この軽減制度を利用してもなお、世帯単位1年間の医療費と介護費の合計が、この制度の定める「自己負担限度額」を超えた場合、「高額医療・高額介護合算療養制度により超えた分の金額が還付されます

高額医療・高額介護合算療養制度の対象

  • 医療保険、介護保険サービスの両方を利用していること
  • 同じ公的医療保険制度(国民健康保険、後期高齢者医療制度、会社の健康保険など)に加入している世帯であること

計算期間は8月1日~翌年7月31日までの1年間で、支給の申請は翌年の8月1日から行うことができます

自己負担限度額は、世帯員の年齢や所得によって細かく設定されていますので、領収書を保管しておき、お住まいの市区町村の介護保険課やケアマネージャー、病院のケースワーカーなどに相談しましょう。

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公的制度の申請には医師の診断書が必要

公的制度の申請には、医師の診断書が必要な場合がほとんどです。

医師が公的制度に関する診断書の書き方を知っているかどうかも大きなポイントとなるので、病状をきちんと書いてくれる、制度に詳しい主治医を見つけたいものです。

まとめ  困った時は専門家へ相談を

老後の医療費について不安を持っている人は少なくないと思います。

高齢者の医療費サポートについては以上の制度の他に自治体独自の支援を行なっている場合もあるので、不安がある場合は自治体の窓口やケアマネジャー、病院のケースワーカーなどに相談してみてください。

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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