親の介護を考えるときに必ずついてくる要素が「お金」です。そして意外と知られていない「控除」の話。
・施設費用が足りなくて入所がむずかしい
・介護費用が年金でまかなえなくて自分の貯金から出している
・介護で仕事を休むことが増え収入が減っている など
介護が始まるとさまざまなお金の問題が出てきます。
介護費用の負担を軽くする制度はありますか?
代表的な支援制度は『介護保険制度』ではないかしら。実は、その他にも『自宅改修費用制度』や『介護休業給付制度』『税金の控除』など、さまざまな支援制度があるのよ。
そんな制度があるなんて知らなかったです!
そう、意外と知られていない制度もたくさんあるの。今回は、わたしたちの身近な制度「税金の控除」について学んでいきましょう!
【このコラムでご紹介している内容】
・介護保険制度のはなし
・医療費控除の特徴
・医療費控除の対象となる費用
・介護費用が医療費控除に含まれる5つのケース
・医療費控除の計算の仕方
親の介護に必要なお金の救世主!介護保険制度のはなし
ひとむかし前は、家族が認知症になると、「家族の恥」として納屋や部屋に閉じ込められてしまっていた時代がありました。
今のように「認知症」の詳しい情報や治療、ケアがなかったために、精神がおかしくなったと認識されていたのかもしれません。
しかし、2,000年以降は介護保険制度が整って、1~3割の負担で「訪問看護やデイサービス」「介護タクシー」「介護用ベッドのレンタル」など、たくさんのサービスが使えるようになっています。
介護サービスを安く利用できるのは助かりますね!
そうなのよ。すべて自費だと介護サービスを受けられないと家族の負担が大きくなってしまうから、介護保険制度は本当に便利な制度よね!
では、今日はもう一つ介護で助かる支援制度を学んでいきましょう。
はなちゃんは、介護費用が税金の控除の対象になるって聞いたことがあるかしら?
う~ん……介護費用の税金の控除は聞いたことがないです。
そう、意外と知られていないのが現状なのよね。介護費用は医療費控除という制度に含まれるのよ。年間に高額の医療費・介護費用がかかった場合にはとても助かる制度なので、一緒に学んでいきましょう!
医療費控除ってなに?特徴と対象となる介護費用をチェック!
医療費控除は、年間に高額の医療費がかかったときに、税金が減額される制度です。
1/1から12/31までに支払った医療費の合計が10万円以上※になった場合に控除の申請ができます。
※年間所得が200万円以下の場合は所得の5%以上
申請方法は、確定申告となるので、会社員の方は申請を忘れないようにしましょう。
医療費控除の対象となる費用は、基本的には治療に関する費用に限られています。
治療に関係しない日用品の購入費用などは対象外となってしまうので要注意です。
介護費用も医療費になるのでしょうか?
介護費用に関しては、すべてが「医療費」に含まれるわけではないの。では、実際にどんなときに介護費用が医療費控除に含まれるのか、5つのケースをみていきましょう。
介護費用が医療費控除に含まれる5つのケース
1. 訪問看護を利用している
自宅に看護師の方が訪れて、健康の観察や相談、ケアなどをしてくれるサービスを訪問看護といいます。訪問看護のサービス費用は、医療費控除の対象です。
2. 訪問または通所リハビリテーションを利用している
訪問または施設に通ってリハビリテーションを受けている場合は、利用料金・リハビリに必要な物品などの費用が医療費控除の対象となります。
3. 介護老人保健施設または介護療養型医療施設を利用している
介護施設の中でも、介護老人保健施設と介護療養型医療施設に関しては、居住費・介護サービス料・食費が医療控除の対象となります。
4. 短期入所療養介護(ショートステイ)を利用している
数日間の滞在ができる短期入所療養介護(ショートステイ)は、滞在費・介護サービス料・食費が医療費控除の対象となります。
5. 居宅療養管理指導を受けている
身体的な状況や家庭環境などから、通院ができない場合に医師や看護師が自宅を訪問して、健康管理や指導を行うサービスを居宅療養管理指導といいます。
居宅療養管理指導のサービス費も医療費控除の対象となっています。
※控除できる介護費用は自己負担した分のみ
5つのケースのいづれも、実際にかかった費用から介護保険や国民健康保険、後期高齢者医療保険、民間の介護保険を差し引いた金額(自己負担額)を控除できます。
また、利用した介護サービスが医療費控除の対象の場合は、請求書に記載されているので、受け取ったときにぜひチェックしてみてください。
家族全員の医療費の合計で控除できる
医療費控除は、生計を一にする家族全員の医療費を合わせて計算することができます。
親と別居している場合は合算できますか?
親と別居をしていても、仕送りをしていたり、親の生活や介護の費用を少しでも負担したりしている場合は、合算できるのよ。
医療費控除の申請には、年間で10万円以上の医療費の支払いが必要ですが、家族全員の医療費+介護費用も含められるとなると、10万円を超えやすくなります。
医療費が高額になった年にはぜひ医療費控除の申請をしてみましょう。
介護にかかるお金について詳しい本もいろいろとあります。ぜひ参考にしてみてくださいね。
身近な人に介護が必要になったときの手続きのすべて
鈩 裕和 (監修)
親が倒れた! どうする?
どこに相談すればいいの?申請はどうしたらいいの?施設選びは?在宅介護をするには?
そんな介護の不安を一気に解消してくれる1冊です。
見やすく、読みやすい大判サイズ。
親の介護 手続きと対処まるわかりQ&A
田中克典 (著)
最低限知っておきたい介護保険制度の申請から、施設選び、高齢期の親との付き合い方など、多くの人が直面する悩みを、相談の多い64テーマに絞って紹介しています。
介護のお金がラクになる方法/症状別・介護サービスの選び方と対処法など
親の介護でお金と上手につき合う大切さ
親の介護でかかる費用は、基本的には年金でまかなえるのが理想です。
しかし、施設費用に雑費、リフォーム代などを合算すると結構な金額になってしまうことも。
今回、ご紹介してきた介護費用の控除は、知らない方も多くいらっしゃるのが現実です。
家族全員の医療費や介護費用の合計額が高額になった際には、ぜひ控除の申請をしてみてください。
そして、介護だけでなく、お金の面でも公的なサービスとつながりながら無理のない介護環境を作っていきましょう。
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