親が認知症になったかも…そう感じたら初期症状かもしれません。
「最近、親の物忘れや行動に違和感がある。」「認知症かもしれないし、ただの物忘れかもしれない。認知症か、そうでないのかわかる方法はないのか?」「認知症だったらどうしたらいいの?」
親が認知症かもしれないと思うと不安と焦りでいっぱいになりますよね。
認知症を発症する高齢者の数は増えていますが、前兆を把握したりセルフチェック方法を知っていることで、早期発見や対応に役立ちます。
この記事では認知症の初期症状の特徴や前兆、チェック方法、また、認知症初期からの相談機関やサービスについてもお伝えしています、ぜひ、お役に立ててください。
認知症の初期症状とは?
認知症とは基本的に脳の物質的な異常が原因となって起こる記憶障害(もの忘れ)を主体とする病気です。
その他にも思考や判断力が低下したり、時・人・場所などの見当識が失われるといった認知機能の障害が後天的に起こります。
認知症の初期症状は、主に以下の4つです。
もの忘れ
「昨日の夕食は何を食べたっけ?」「お財布はどこにしまったっけ?」というようなことを親が言ってくると「認知症か?」と心配になります。しかし、こうしたことは認知症でなくてもしばしば起こることです。
認知症の場合、夕食の内容や財布をどこにしまった?ではなく、「夕食を食べたこと」「財布をしまった」という体験全体を忘れてしまうのが特徴です。
ただし、認知症の初期症状である物忘れは、加齢によるものか、認知症なのかを判断しにくい場合があります。本人が、忘れたこと自体を認識できていない様子がみられたら、認知症を疑うタイミングと考えて良いでしょう。
理解力・ 判断力の低下
認知症になると、片付けや炊事などの順序が途中であいまいになり、料理については、やがて単一の調理しかできなくなるといったことが起こります。
また片付けは、通常は物が増えれば棚や引き出しにしまうものですが、認知症の初期症状では、見える所に置かないとどこに行ったかが分からなくなってしまうため、部屋が乱雑になっていくということが非常に顕著に見られます。
買い物の支払い計算が難しくなったことで、大きい紙幣で支払うために小銭ばかりが財布に溜まっていたり、会話の流れが繋がらなかったり、料理の味がおかしかったり…これらの症状がでてきたら、認知症の初期症状である可能性を考えましょう。
見当識障害
「約束が守れない」ということもよくあります。
記憶の障害はもちろんですが、「3時間後の約束」という予定を、時計の針を見てそこから計画的に行動をするというようなことが難しくなります。日にちや時間、場所や人が分からなくなることもあります。
集中力の低下
新聞や本を読まなくなる、料理や家事を途中でやめてしまう、今まで普通にできていたことでも時間がかかるなどの症状も認知症の初期症状として現れることがあります。認知症により集中力が低下し、物事に取り組む意欲がなくなったり、すぐに飽きてしまうことがあります。
マンガでわかる!認知症の人が見ている世界2
認知症の人が、どんな目線でものを考えているのか?認知症の不可解な行動原理を、漫画で分かりやすく描かれています。
認知症の種類による初期症状の違い
では、認知症の種類によって初期症状がどのように違うのかを見ていきましょう。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症の特徴は、記憶障害が最も早く出ることです。アルツハイマー型認知症の初期症状は、注意力の低下や道がわからなくなる、生活動作が出来なくなるなどの症状がみられます。
初期のうちは、もの忘れも軽く、加齢によるもの忘れと区別が難しい程度で、症状が出ても日常生活に大きな支障はありません。同じことを何度も聞く、料理ができないなどの記憶や実行機能障害に気づいたらアルツハイマー型認知症の初期症状かもしれません。
また、65歳未満の方で発症する認知症を若年性認知症といいます。主な原因や症状は高齢者とそれほど変わりません。若いから自分はかからないという固定概念をなくして、上記の症状が見られたら、認知症を疑う必要があります。
脳血管性認知症
脳卒中などの発作によって記憶に関する部分が障害を受けることで起こる認知症です。症状は、脳血管障害を起こすたびに進行します。障害を受けている場所と受けていない場所が混在しているので症状にむらがあり、このため「まだら認知症」とも呼ばれます。
初期のうちはもの忘れは目立たず、手足のしびれや麻痺、精神不安定、手順通りに物事を進められない実行機能の障害がみられます。自身の障害を実感しやすいぶん、ほかの認知症よりも抑うつになりやすい傾向があります。
前頭側頭型認知症
脳の前方や側頭に病変があって、大脳が委縮して認知症となるものを前頭側頭型認知症といいます。初老期(40〜60歳)で発症することが多く、その代表がピック病です。
この認知症の初期には、記憶障害や見当識障害は目立ちません。人格の変化や、社会に対する無関心、自発性の減少、同じ行動を繰り返す常同行動が見られます。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症では便秘や嗅覚の異常、繰り返すリアルな幻視(虫や座敷わらしなど)、睡眠障害、無表情や体のこわばりなどのパーキンソン症状などが初期症状としてみられることがあります。初期にはもの忘れも軽く、見当識や理解力の低下などはほとんどみられません。
レビー小体型認知症は、初期に幻視や妄想などの精神症状とパーキンソン症状が目立つため、うつ病やパーキンソン病と誤診されることがあります。
軽度認知障害(MCI)
軽度認知障害とは、認知症の一歩手前の状態です。軽度認知障害はMCI(Mild Cognitive Impairment)とも呼ばれます。
MCI(軽度認知障害)は、認知機能の一部に障害が見られるものの日常生活には支障が出ません。私生活のなかで「もの忘れが多いと感じる自覚症状がある」、「同年代と比べて記憶能力が低い」などと感じる場合は、MCIの可能性があります。
MCIが認められた人が全て認知症になるわけではありませんが、MCIの人のうち、平均で年間約10%の人が認知症になる可能性があると言われています。
MCIの段階で病院へ行って、早く病気を見つけることがとても大切です。
認知症初期チェックリスト
アルツハイマー型認知症の初期症状を、チェックリスト形式で13項目紹介します。
ご家族の様子に当てはまる症状があるか、チェックしてみてください。3つ以上当てはまったら、まずは誰かに相談してみましょう。
- 同じことを言ったり聞いたりする。
- 物の名前が出てこなくなった。
- 置き忘れやしまい忘れが目立ってきた。
- 以前はあった興味や関心が失われた。
- だらしなくなった。
- 日課をしなくなった。
- 時間や場所の感覚が不確かになった。
- 慣れたところで道に迷った。
- 財布などを盗まれたと言う。
- 些細なことで怒りっぽくなった。
- 蛇口、ガス栓の閉め忘れ、火の用心ができなくなってきた。
- 複雑なテレビドラマが理解できない。
- 夜中に急に起き出して騒いだ。
※国立長寿医療研究センター「認知症チェックリスト」より抜粋
ちなみに私の母は87歳です。当てはまる項目が2つありました。要注意です。
認知症の始まりではないかと思われる言動を、「家族の会」がまとめたチェックリストもあります。
どんな病気でもそうですが、認知症も早く見つけて対応すれば、本人にとっても家族にとっても、それ以後の生活が大きく変わります。
単なるもの忘れのほか、気分が落ち込むうつ状態、意識障害(せん妄)、病気治療のために飲んでいる薬による影響でも似たような症状がみられます。 これらが原因の認知症状は治療で治すことができますので、医者に相談してみましょう。
認知症の初期症状と分かったら
家族が認知症ではないかと感じた時、或いはチェックリストで当てはまる項目がある場合は、できるだけ速やかに医療機関を受診しましょう。
「本人が病院に行きたがらない」「認知症だと認めたがらない」ということもあるかもしれません。
そこで、病院に行きやすくなる方法を3つ紹介します。
①健康診断の一環として受診する
②「知り合いが受診した」という話をする
③もの忘れ外来を受診する
最近は「もの忘れ外来」のある病院も増えています。
長い付き合いのかかりつけ医がいたら、早めに相談しておくのも良いと思います。親に、かかりつけ医には日頃から小さなことでも話をするように伝えておくと、かかりつけ医は、親が話す内容から認知機能の状態を推測できると思います。
以下には、認知症に関する書籍、脳トレ本などで、楽しみながら認知症介護ができるサイトも載せています。
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認知症の親を介護している人の心を守る本
家族に認知症がいるすべての人必読!「介護疲れ」を無視して頑張ろうとしていませんか?
懸命に支えても、尽くしても止めれない進行への理解と「ケアを続けられるしくみ」づくりで、時間的、精神的、肉体的な負担が軽くなる方法。
認知症初期からの相談窓口やサービスについて
2013年度から、認知症の人ができる限り住み慣れた自宅で安心して暮らし続けられるように、厚生労働省が新しい施策を発表しました。
施策の内容は主に、認知症初期にあります。認知症初期段階から専門家で作るチームが家庭の訪問や、早期診断ができる診療所の設置などです。また、自治体によっては、認知症ケアパスを作成して、症状に応じた対応、支援体制を分かりやすくまとめているところもあります。
「どうしよう」と思ったときは、自治体の介護保険の窓口か地域包括支援センターに相談しましょう。介護保険の情報や要介護度が非該当の場合の支援・サービス、診療所情報等も知らせてくれます。
まとめ|大切なのは早期発見とその人に合ったケア
家族が日常生活における認知症の初期症状に気づくことが、早期発見の第一歩になります。
症状の現れ方は、認知症タイプにかかわらず共通している部分もありますが、初期にその認知症タイプに特有な症状が目立つこともあります。また、原因疾患によって、出現する症状も進行の仕方も異なりますし、複数の原因疾患が混合している場合もありますから、「なんだかちょっと変だな」と思ったら早めに診断を受けましょう。
投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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