在宅介護において、段差の解消は非常に大きなポイントです。ここではQOL(クオリティオブライフ)のために、階段に絞って住宅改修についてお話したいと思います。
階段
現在の日本では、住宅事情により三階建ての戸建て(1階が車庫など)も多くなっているようです。
若くて、階段の上り下りにはまったく問題ない世代には気が付きにくいことですが、ひとたび骨折などをすると、非常に大きな壁となって立ちふさがるのがこの階段というものです。
蹴上(けあげ)の高さ
蹴上(けあげ)とは、階段の蹴り上げる高さのこと。ご自宅に階段があれば、物差しをだして何センチあるか測ってみましょう。
低めの110ミリ?150ミリ?・・200ミリだとちょっと高めかもしれません。
というのは、高齢者でも昇降しやすい目安としては、110~160程度と言われています。高齢になると足を上げることができる高さも変わります。(今から自宅を購入検討する若い世代もチェック!いずれ歳をとります)
横幅は何ミリありますか?
建築基準法を満たしているのは750ミリです。そのうち手摺(てすり)が100ミリまであってもOKです。
ちなみに建築の世界では、ミリで表現することが多いです。m(メートル)やcm(センチ)を越えていても、すべて同じ単位ミリで表現することが多いです。(材木の)芯から芯で910(きゅうひゃくとお)階段の幅750,のような言い方をします。
これまた自宅を測ると分かりやすいですが、750―10(手摺の幅)は、人ひとりが不便なく通れる一番最低レベルということが分かります。
古い住宅に多いのですが、この基準である750すら確保できていない状態の階段もあります。
または建築基準法上満たしていても、階段に荷物が占拠なんてことは?ドアが当たるなんてことは?実は、巾木や窓枠が階段側にはみ出してるなんてことは? 自らの安全のために、幅を確保したいところです。
寝室とトイレの間に
夜中にトイレに起きます。寝室は二階です。トイレは一階です。
いくら寝ぼけていたって、この階段は慣れたもの・・トントントンと階段を下ります。あっ!階段途中に紙が一枚。つるっ・・・
これは実際によくあることです。特に高齢の場合は一旦骨折をすると治りも遅く、そのまま寝たきりになってしまう可能性もあります。
ご自宅のトイレの出入り口と階段の降り口は隣接していませんか?
これは避けておきたい配置です。もしご自宅がそのようになっているならば、寝室はトイレと同一階で設定したいところです。
手摺の話
建築基準法の規定により、住宅の階段には必ず手摺を設置しなければなりません。
本来は両側に設置したいのですが、前述の750ミリの階段では両側に設置すると階段自体が狭くなってしまいます。
そこで、片側にのみ設置することになるわけですが、ここで問題はどちら側に設置するかです。
階段の事故の多くは、降りる時に発生します。
したがって、降りる時に利き手になる側に設置することがおすすめです。
また手摺の最後の部分は、エンドキャップをつけるだけでは衣服をひっかけたりする場合もあります。内側に織り込むような仕様になっていることが望ましいです。
いす式階段昇降機
階段の上り下りに不安がある。でも二階には行く必要がある・・。そんな場合にいす式の階段昇降機の設置という方法があります。椅子に座って、ベルトを締めた状態で階段を上下するものです。
大まかにいうと、直線の階段に設置できるもの・曲線の階段に設置できるもの・防水仕様の屋外の階段に設置できるものがあります。
どんな階段にでも設置できる訳ではありません。階段の構造が何であるか(木造?鉄骨?)や階段自体の強度も問われます。
操作は簡単で、基本的に上へ行くか・下へ行くかの二種類。(エレベーターの操作と同じようなイメージです。いす式階段昇降機はエレベーターと同じ「昇降機」です)
費用は少し高額ですが、自治体によっては補助金の対象になる場合もあります。
いす式階段昇降機を降りた先は?
いす式階段昇降機で2階の寝室から、1階に降りることはできました。ただ、その先は?エンドの駅をどこにするかという問題です。
降りた先は安全に降りれる場所?
ちょっとレールを伸ばして玄関に行きやすいようにする工夫は?
レール自体がはみ出して今度は別の障害になっていない?
これらも設置前に確認しておきたいポイントです。
階段ひとつでも、住宅改修の要点はたくさんあります。
ちょっとしたことで、日々の暮らしの便利さ・質はまったく違ったものにかわります。違いは知っているかどうかです。
こちらもおすすめ
医者が教える非まじめ介護のすすめ
大塚宣夫 (著)
社会のため、親のため。世間の、あるいは自分の中の「~すべき」といった、「介護の常識」に縛られていませんか?
「介護はかくあらねばならぬ」という常識を一度、捨てましょう。看る側と看られる側、互いの思いを理解し、前向きに“老い”を受け入れたうえで、肩の力を抜いて介護と向き合いませんか。
阿川佐和子さん推薦!!「この本を読んだらきっと心が軽くなるでしょう!」
よみうりランド慶友病院・大塚宣夫先生の上手に気楽に介護を乗り切る50のヒント!
「家族介護」のきほん
アラジン(著)
「介護する人」に寄り添う、在宅介護の実用書!
20年以上にわたり、介護をしている家族の相談やサポートを続けているNPO法人の「アラジン」の蓄積された経験や豊富な相談事例をもとに、介護者の暮らしや人生に寄り添った、リアルな介護の乗り切り方を伝授します。
投稿者プロフィール
-
エレベーターメーカー勤務の経験を持つ。ホームエレベーターや段差解消機の設置の観点から、住宅改修についても学ぶ。
趣味は、着物・和紙あつめ。日本酒、アンティーク家具も好き。
最新の投稿
- 介護の豆知識2023年2月10日在宅介護における住宅改修のポイント|階段編
- おすすめグッズ・サービス2023年2月10日在宅介護 ベッドやトイレなど揃えるものは?
- 介護とお金2023年1月24日在宅介護(自宅)の環境整備とは?補助金利用の住宅改修・リフォームことはじめ
コメント