訪問介護には掃除の範囲がある!知っておきたいヘルパーさんに頼めない掃除とは?

介護の豆知識

訪問介護の掃除の範囲をご存知ですか?ヘルパーさんが来てくれると、つい頼りたくなって「あれもこれもやって欲しい…」と思ってしまいがちです。でも、介護ヘルパーさんは家政婦さんではありません。そのため、利用者がお願いすれば、どのような家事でもしてくれるわけではないのです。                                     

では実際のところ、ヘルパーさんにはどのような掃除をお願いでき、どのような掃除がお願いできないのでしょうか。

今回は、訪問介護で一番トラブルになりやすい『介護ヘルパーさんが行う掃除』について具体的に説明していきます。また、介護保険で対応できない掃除の場合のサービスの情報についてもお知らせします。  

訪問介護の掃除とは?

訪問介護で対応する掃除は、ヘルパーが訪問介護においてできる利用者への生活援助の一つです。

  生活援助とは、身体介護以外の介護サービスのことで、掃除、洗濯、調理、ゴミ出しなどを指します。

しかし、直接本人の援助に該当しない行為日常生活の援助に該当しない行為に関しては、生活援助のなかに含まれないと明記されています。  

訪問介護は、あくまでも利用者が健康的な生活を続けるために実施されるサービスです。そのため、訪問介護で対応できる掃除の範囲は、利用者の生活で最低限必要な範囲のみとなります。    

訪問介護の掃除の範囲はどこまで?  

訪問介護の掃除の範囲は、居室・台所・トイレ・浴室・洗面所などで、部屋の掃除では整理整頓・換気・室温調節なども行います。掃除機・モップかけ・床拭き・壁掃除などの他、古新聞や分別ごみを所定の場所に出すといったことも含まれます。

訪問介護では、利用者ごとに定められたケアプランを基に、どういった掃除を行うかが決められています。

また、2018年に老計10号の改正があり、「利用者と一緒に手助けや声かけをしつつ見守りをしながら行う掃除が新たに身体介護に加わりました。 そのため「掃除」という項目も、条件次第ではすべて一律に生活援助ではなく、身体介護に区分される可能性があります。

これもご利用者本人やご家族の意向に基づいたケアマネージャーが作成したケアプランに沿って行うということになります。

訪問介護の掃除でできること・できないこと【Q&A】  

訪問介護で掃除ができる範囲は、以下の場所が挙げられます。  

  • 利用者が生活している居室の掃除
  • トイレの掃除(ポータブルトイレの清掃含む)
  • 浴室・洗面所の清掃
  • 玄関の掃除(内玄関のみ) 

など、利用者自身が日常生活を送るうえで最低限必要とされるスペースを清潔に保つということが、介護保険法によって定められた掃除の範囲です。

では、よくある「こんなところは頼める?」という具体的な場所の質問を見てみましょう。  

ガスコンロや換気扇、床のワックスがけの掃除は頼める?  

ガスコンロや換気扇、床のワックスがけといった掃除は、介護ヘルパーには頼めません。

これらの掃除は日常生活の範囲を超えた大がかりな掃除になるからです。同様の理由から、窓の掃除、排水口の掃除、浴室やトイレのカビ取りも含まれません。

ご利用者の家族と共用している場合は、掃除はもちろんゴミ出しもできません。  

仏壇の掃除は?仏壇の花の水やりは?  

訪問介護のヘルパーが仏壇の掃除をすることは認められていません。掃除以外にも、水やりや花の交換など、仏壇に関わることはすべて認められていないのです。

「日常の生活援助」に該当しない、及び公的な制度での宗教的行為の禁止となっているからです。 仏間の掃除 、仏壇の水やり 、献花の交換、蝋燭や線香をつける など、ご家族が同居している場合はもちろん、利用者さんが単身で暮らしている場合にも禁止されています。  

ただし、以下の場合は認められる場合があります。

  • ケアプラン中にご利用者の日常の生活の範囲として認められて明記されている場合
  • 役所に交渉することで、自立支援の視点で、利用者とヘルパーが共に掃除をすることを認められる場合

グレーゾーンではあるので、必ずケアマネージャーに相談して自治体の担当課に確認されることをお勧めします。

以前の利用者の生活状況から支援の一環としてケアプランに上がっていれば、ハタキかけ程度は認められた事例があります。  

エアコンの掃除

エアコンの掃除は日常的な掃除の範囲ではないので、介護保険の対象外となります。  

お風呂場の掃除

ご利用者に同居ご家族がいる場合には、風呂の掃除は介護保険の対象外です。

たとえば、独居のご利用者で入浴介助サービスがケアプランに含まれている場合でも、原則として風呂掃除は入浴介助サービスには含まれません。

一人暮らしか本人以外が使わない風呂で自身で掃除が出来ない心身の状況であれば、風呂場の日常的な掃除は可能です。カビ取りなどの特殊な掃除はできません

洗濯物を干すベランダの掃除

洗濯物を乾かすとき、ベランダに干す人は少なくありません。日常生活に必要な衣服を乾かすためのベランダなら、介護ヘルパーへ掃除を依頼できるのでしょうか。

残念ながら、ベランダの掃除も訪問介護の対象外です。洗濯物を干すためのベランダであっても、介護ヘルパーへ掃除をお願いすることはできません。

介護保険の掃除の範囲は「日常生活を営むために最低限必要な範囲」に入らないと解釈する自治体が多いからです。

ただし、洗濯物を干す場合に、洗濯物に汚れが付かないようにベランダの手すりを拭く掃除は認められる可能性があります。

玄関の掃除

同居の家族がいない場合は、訪問介護の生活援助で玄関内掃除の対応が可能です。 ご家族と共用であれば、制限がかかりますので、ご注意を。  

「掃除の範囲じゃない」と断られた時はどうする? 

「掃除の範囲じゃない」と断られた場合でも、利用者本人の生活の質の維持のために必要だと思われる場合は、ケアマネジャー等に相談してください。

利用者の日常生活の支援に必要だと合意が出来れば、ご本人や家族の意向としてケアプランに入れてもらうこともできるかもしれません。  

また、近年では、多くの事業所が自費サービスを提供しており、以下のようなサービスを受けられます。

  • 大掃除
  • 窓ふき
  • 庭の手入れ
  • 草むしり  

事業所以外にも、家事代行サービス民間の訪問介護サービスを利用する方法もあります。 簡単な作業であれば、シルバー人材センター地域のNPO団体ボランティア団体が支援してくれている場合もあります。自治体や地域包括支援センター等で問い合わせができますので尋ねてみて下さい。

まとめ

基本的には、「日常生活の援助」に該当しない行為は、介護保険でサービスを提供することができません。

しかし、以前のご利用者の生活状況から、日常生活の範囲内と認められることがあります。介護保険の目的は、自分らしい在宅生活の継続です。訪問介護の「掃除」という支援が、ご利用者の以前の生活の継続に繋がるようなことであれば、ぜひケアマネージャーに相談してください。

以前、ヘルパーが訪問した際に必ずお線香をあげてお参りしているおばあちゃんがいました。どうしてか尋ねると「娘が『火の元が心配だからヘルパーさんが来たとき以外はお参りしないで』と叱るから」と寂しそうに言われたそうです。このことをヘルパーがケアマネージャーに報告し、近所のボランティアの人が持ち回りで来てくれるようになったそうです。

専門家を上手く使ってより良い生活を手にしてください。

わかりやすい「介護保険制度」活用のてびき

利用される方の立場に立って理解と納得をしてサービスが活用できるように、介護保険制度についてやさしく解説しています。
携帯に便利なB6サイズ。

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

TOP