この記事では片麻痺の人におすすめの、食事やトイレなどの日常生活で使われる自助具を紹介しています。
私の父は、脳出血でもう30年近く右側全麻痺で在宅生活をしています。
当時、なかなか思い通りに動かない自分の体に苛立ちながらも自宅で生活したいと願う父に、どんなものがあれば役に立つのかいろいろ探してみました。その中でも、毎日の生活動作に非常に役に立ったのが「自助具」でした。
自助具には数多くの種類があります。だから、本人が一番困っていることは何なのか、どんなことが出来れば本人や介護する家族にとって負担が減るのか、などを基準に考えていくことが大事です。
私の父が、実際に使って「これは便利」「使ってよかった」と言ったものを皆さんにもお伝えしたいと思います。
購入方法や自分で作る方法も紹介しておりますので、参考にしてみてください。
自助具とは何?
自助具とは、体が不自由な人がなるべく自立した快適な生活を送れるように、日常の生活動作を補い、可能な限り自分でできるよう工夫した道具のことをいいます。
自助具を使う目的
自助具は何らかの病気や事故で、腕や手足が麻痺したり、関節が固くなって動かなくなったりなど、日常生活を送る事が難しくなった人が動作を助けてもらうために使う道具です。 時間がかかったり、人に助けてもらっていた身の回りの動作が、自助具を使う事でかなりできるようになります。
つまり、自助具を使う大きな目的は、食事や入浴、排泄、着替えなどの日常生活の動作や家事の動作を、可能な限り自分で行えるようにすることです。
自助具の種類
では、数ある自助具の中で特に片麻痺の人の生活に使いやすい自助具を、場面別にみていきましょう。
食事に便利な自助具
食事の動作を助けてくれる自助具は、片麻痺の人には本当に役に立ちます。自分のペースで食事が出来ることは、健康や活力になります。
私が以前勤務していた介護施設でも、自助具を使ってご自分で食事を食べる人が多くいらっしゃいました。
握りやすいスプーン
柄の部分にスポンジが巻かれているタイプや、持ち手が変形できるもの、飲み込みやすい工夫がされているスプーンなどがあります。
スポンジが巻かれているタイプは柄が太くなっているので、握力が弱い人でも握りやすくなっています。
食べ物をすくいやすいお皿
お皿の内側が少し深くて傾斜があるものは、傾斜の土手部分で食べ物が止まってくれます。食べ物をすくいやすいので、特にスプーンで食事をするときに便利です。底に滑り止めがついているお皿だと、片手でも食事をすることが可能です。
持ちやすいマグカップ・茶碗・汁椀
持ち手が大きいマグカップは、片手がすっぽり入るので、握力が弱い方も握りやすいでしょう。
マグカップ以外にも、大きな持ち手がついている汁椀や茶碗もあります。
つかみやすい箸
お箸の上部にグリップがついており、軽く握るだけで、食べ物をつかめます。
着替えに便利な自助具
片麻痺の人は片側の上肢が動くので、案外着替えは自分でできる場合が多いです。私の父も利き手が麻痺してしまいましたが、最初の病院のリハビリで教えてもらった着替えの方法でまだ自分でできます。
なるべくボタンがついていない上着や伸縮性のある洋服、ゴムで脱ぎ履きしやすいズボンなどを選べば自分できることも多いですし、また家族の介助もラクです。
マジックリーチャー
モノを取るだけでなく、裾を上げる、袖を寄せる、靴の脱ぎ履きを助けるなど、使い道が多い自助具です。
先端に磁石がついており、金属のものをつかむのも便利です。
衣類装着スティック
体の動きに制限があるために衣類装着が困難な方に便利です。
靴下・靴を脱ぐ時や靴べら、ドアの開閉などにも使用できます。
入浴に便利な自助具
片麻痺の人がどうしても洗えない部分は、麻痺のない側の腕です。ここは少し介助が必要かもしれませんが、ちょっとした手助けで入浴もできます。
手すりや入浴用の椅子など安全面に配慮した福祉用具も利用して本人が快適に入浴できるよう考えてみましょう。
孫の手ブラシ
背中を洗うのに適した形状で、腕を後ろに伸ばすことなく背中を洗えます。
足などの少し離れた場所を洗うのにも便利です。
排泄
最もデリケートな排泄に関しては、介助を受ける部分はできるだけ少なくしたいものです。
どこでも片手でペーパーホルダー
ポータブルトイレやベッドサイドレールなどに取り付けて、片手でトイレットペーパーがカットできます。
ベッド用手すりなどにも取り付け可能です。
私は、父用に、切ったペーパーを箱に入れて準備しておきました。今では、どうにかして自分でペーパーを切っているようですよ。
自助具の購入方法は?
介護用品ショップや福祉機器を取り扱う店舗もしくはインターネットなどの通信販売サイトから購入可能です。
また、自助具として販売されていない一般日用品にも、工夫次第で自助具に利用できるものがたくさんあります。視点を変えて本来の使い方以外の方法で使うことで、その人の生活に活用できることもあります。
ただし、市販品の組み合わせや改良をする際は安全性を十分に考慮しましょう。
キャプスでは便利な自助具を販売しています。参考にしてください。
自助具は介護保険が適用される?
残念ながら、自助具の購入に関しては、介護保険の適用はありません。
価格は安くても2,000円程度~くらいになります。自助具は、生活用品なので何個かスペアが必要ですし、買い替えやご本人の状態によって必要なものが変わることもあります。
購入の際は、使うご本人の意向を必ず確認して話し合いましょう。
自助具を選ぶ時に気を付けたいこと
購入の際は以下の点に注意しましょう。
- 大き過ぎる
- 重い
- 使い方が難しい
軽くてシンプルで使いやすいものを選びましょう。
自助具を自分で作ってみる
市販の自助具は一般的に数千円で販売していますが、実は身近なものを使って、自分で作る方法もあります。ネットで「手作り自助具」と検索するといろいろ出てきます。
ただし、自作する場合も、使う人に合わせたものにする原則は変わりません。
例えばスプーングリップです。とても便利な自助具ですが、購入すると800円〜1300円程かかります。変形させると歪むため、お試しも容易でなく、また洗う回数も多いため何個も必要になります。
そこで試しに使ってみたい、という人に100円ショップにある物で作れる簡易自助具スプーンを紹介します。
揃えるものは、スポンジ・紙段ボール・スプーン・輪ゴムなど。
スポンジをスプーン・フォークの大体3分の2に合わせて2個切り、そのスポンジを紙段ボールでくるりと巻いて輪ゴムで止めます。スポンジの間にスプーンを挿入してしっかり挟まればOKです。
私も作ってみましたが、なにせ不器用なのでスプーンがグラグラして上手く固定せず、「こりゃ、使えん」と父から散々ダメ出しを貰いました。
私はダメでしたが、器用で几帳面な人は作れるかもしれません。グリップの購入などに悩まれている人は、試しに作ってみるのもいいかもしれませんね。
ちなみに100均で購入できる商品もあります。
シリコン製スプーン、介護スプーン(先端が曲がっているもの、フォークと一体のもの)、U字スプーン、介護箸(リングの付いたトレーニングタイプ)、介護用コップ(取手付き)
自助具を選ぶ際はご本人と介助する家族、専門家に相談されることをお勧めします。
安全性と適合性がとても大事だからです。
【体験】在宅生活30年、片麻痺の父が喜んだ自助具とは?
父は60代始めに脳出血で倒れ、現在要介護2です。
動かない右側の上下肢と構音障害(頭にあるイメージを言葉にできない・言葉が不明瞭で分かりにくい)などの後遺症があります。
倒れた当初は、「きっと良くなる」と運動リハビリや言語療法も懸命にやっていたんですが、年月とともに、動かない自分の体を諦めてしまいました。利き手利き足が動かないのと、言葉が出なかったり通じないこともあって、一時期は引きこもりのような生活になってしまいました。
まだ介護保険も無かった時代です。とにかくかかりつけの医者や看護師からいろいろな情報を得て、まず一人でご飯が食べられることを目指しました。
しっかり持ちやすい形のお箸、ケガをしないようシリコンゴムで出来た口元に優しいスプーン・フォーク、仕切りが付いた食べやすいお皿、倒れにくいように加工されたお茶碗など、当時病院でリハビリを担当してくれた理学療法士と探し回りました。
父が「これは使いやすい!」と喜んだのは、掬いやすい皿とグリップ付きスプーン、そしてスーパーで購入した滑り止めシートです。
片麻痺なのでどうしても食器を抑えることができなくて、テーブルから落ちてしまったりひっくり返ったりすることが、よくありました。また、食器を抱えて食事が出来ないため、ぽろぽろとこぼれてしまう。特に利き手が使えなくて左手で箸を持って食べるのはとてもイライラしたようです。
今では、左手で自助具でない普通の箸が持てるようになりました。時々焦って手で食べ物を掴むこともありますが、それでも一人でぼちぼちとご飯が食べられているのは、介護の最初に自助具を使い、自分でご飯を食べることを続けた結果だと思います。
まとめ
自助具は、介護を受けている人の「できること」を広げてくれる可能性があります。
可能性を広げるためには、その人に合った自助具選びが大切です。
そして、介護をしている人の負担も大きく軽減されます。
周りの皆も動かない手足で一生懸命自分らしく生活を続ける人に、エールを送ってくれるでしょう。
片麻痺の人の介護をしている人たちへ。便利な自助具を使ってみてはいかがでしょうか。
投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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