難しい高齢者の入浴拒否や介護サービス拒否対応
ご家族や近しい高齢者の方が「日々の入浴やデイサービスへの参加を嫌がって困る…」。そのようなお悩みはありませんか?
‘加齢と共にすこしずつ衰えがきているものの、まだ施設への入所を考えるほどではない。’
そのような状態の高齢者と一緒に過ごしていると、どうしてもこの“やりたがらない問題”に行き当たってしまう事があります。
今回はこの問題の原因と、対処法をケースごとに詳しくご紹介していきます。
ケース1. 高齢者の入浴拒否について
高齢者に入浴を勧めると、
・こないだ入ったからもういい
・今日は寒いから明日はいる
・汚れてないから、汗をかいていないから
など、理由をつけて入浴を拒否するケースがあります。
私自身もこのケースを実際に家庭内で経験しておりますが、「入らない」と決めこんでしまった高齢者を入浴させることは簡単ではありませんでした…
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高齢者の入浴拒否の原因
入浴拒否行動の原因としては
・単に億劫である
といった単純な理由に加えて、
・体を動かすのがつらい
・脱ぎ方や着方がわからなくなる
・入浴の意義がわからず不快
など、身体的な問題や脳の認知機能の低下が隠れていることもあります。
その場合、対応を間違えると更なる拒否にも繋がりかねませんので、慎重に対応したい問題です。
高齢者の入浴拒否の対処法
高齢者の入浴拒否の具体的な対処法としては、
・脱衣所や廊下、お風呂場の温度を最適にして心地よく過ごせるようにする
・良い香りの入浴剤等を使い、お風呂が「気持ちの良いもの」だと思い出してもらう
・「お風呂の時間」という言葉がけのみではなく、「お風呂行ってみよう」と誘い、実際に心地よく用意された実物を見せて知覚に訴える
などがあります。
わが家では「今日はお風呂にゆずを入れたよ、見てみよう」と言って、香りや視覚、触覚で入浴を促したりしていました。
また、入浴中に少し介助をしたい場合は、「背中すってあげようか?」など、よくある声かけから無理なく自然に入浴に関わるのがおすすめです。
そしてもしも、服や下着の着脱に不安があるようであれば「できないのか」などのはっきりとした言葉は避けて、優しく手を添えるなどサポートを行ってあげてください。
衣類に糞便の漏れやシミなどがあり、本人が隠したい場合もありますので、その際も声に出したり指摘をせず、そっと対応します。
どうしても入浴が無理な時は…
どう働きかけても入浴が難しい場合もあります。
その際は無理を強いらず、
・体の一部だけお湯で洗い、お湯の気持ちよさを思い出してもらう
・温水のウォシュレットで陰部のみ洗う
等という方法もあります。
アロマや入浴剤を入れた「足湯」などもおすすめです。
大切なのは、
・本人の意思を尊重すること
・怒ったり無理やりやらせようとしないこと
です。
本来「入浴」というのは、個人的・閉塞的なものであり、とてもデリケートなものです。
裸や下着、糞便など「恥」という感情とも密接に関わっており、対応を間違えると更なる抵抗にも結びつきやすいため、本人の気持ちやタイミングを大切に配慮ある言動を心がけて頂きたいと思います。
またご家族の側も「一度で入浴を全て済ませなくていい」と、少し柔らかい気持ちでいられるように心がけてみてくださいね。
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ケース2. 高齢者がデイサービスなどの介護サービスに行きたがらない問題
少し認知機能に問題が出てきた親をデイサービスなどに行かせたい。けれども本人はどうしても行きたがらない…
このようなお話もかなり多く耳にします。
「このまま家に居るだけではどんどん認知機能が低下してしまうのでは…」「もう少し動いたり話したりしてほしいのだけど…」
そういった心配が募っておられる方に向けて、次項ではこの問題と対処法についてお伝えしていきます。
高齢者が介護サービスに行きたがらない4つの理由
高齢者がデイサービスなどに行きたがらな理由には以下のようなものがあります。
・どんな事をする所なのか分からない
・どんな人がいるのかわからない(知り合いがいない)
→①場所や人などが分からないという「未知」に対する不安
・人と関わりたくない
・外に出たくない、家にいたい
→②性格や嗜好性の問題
・介護サービスを受ける自分を許せない
・自分にサービスを受ける必要があると認めたくない
→③自身のプライドに関わる問題
・お金がどれくらいかかるのだろうか
・家族にお金の負担をかけないか
→④金銭的な心配
このように、単に「行きたくない」といっても、様々な心理的背景が考えられます。
実際に私の家族も「行ってもだれも知り合いがおらんから嫌」と言って、初めからデイサービスを強く拒否していました。①の「未知に対する不安」が大きく当てはまるケースでした。
介護サービス拒否時の対処法
1.介護サービスを受けたことがない場合
デイサービスなどの介護サービスをまだ受けたことがない方でサービス利用を嫌がる場合は、前項の①や③、④のように「場所や人など未知への不安」や「プライドの問題」「お金の心配」が関わっている場合が多くあります。
●「未知」や「金銭面」からの不安があり利用を嫌がる場合の対処法
前項①や④のように、未知への不安やお金への心配がある場合は、
・綺麗な施設パンフレットを一緒に見てみる
・「保険が使えるしお金は大丈夫よ」などと金銭面の不安を和らげる
・お天気や体調の良い時に家族と一緒に施設を見学に行く
など、まずはどんな所なのかを具体的にイメージしたり、安心できる人と一緒に実際に施設に出向くなど「未知への不安」や「費用への心配」を和らげるのがおすすめです。
またその際、ご本人の嗜好性や性格に配慮して、
・好みそうな場所を指摘して伝える
のも効果的です。
例えば、「ここは窓からの景色が綺麗そうだね」「お庭に花が沢山あるね」「将棋の時間があるらしいよ」「食事がすごく美味しいみたい」「少人数だから落ち着いてるね」などと声をかけ、【不安】を少しでも【安心】や【楽しみ】に繋げられるよう心がけてみてください。
(事前に好みそうな行事や空間のある施設の目星をつけておくことも大切です。)
また施設見学の際は、職員さんや他の利用者の方とも「こんにちは」と軽く挨拶をして、「人への不安」も和らげていけるとより気持ちが前向きになりやすいです。
わが家の場合も、施設見学で職員さんや利用者さんという「顔見知りの人」が出来たことで、「◯◯さんがまた来てほしいって」とサービス利用のきっかけにすることが出来ました。
●プライドの問題でサービス利用を拒否する場合の対処法
前項の③のように、「サービスを受ける自分が許せない/自分にはまだ必要ない」などと利用を拒否をする場合は、「介護サービスを受ける側」としてではなく「サービスの運営の力になってほしい」との声かけが奏功する場合があります。
例えば、「施設には歩けない人も多いから、お母さんが行って話し相手になったり、ちょっと手伝ってくれるとすごく助かるみたい」との声かけで利用が開始できた方もおられます。
「自分が誰かや何かの役に立てる」というのは、人間の行動の大きなエネルギー源となります。
特に「自分の役割が無くなってきた」と無意識に無力感に苛まれやすい高齢者にとっては、良いアプローチ方法となりやすいです。
「人のため」という行動動機をうまく活かせるよう、働きかけてみてください。
2.介護サービスを受けた経験があり、利用を嫌がる場合
実際に介護サービスに通い、その上で利用を嫌がる場合はまず、前項の②のように「本人の嗜好や性質に施設やサービスが合っていない」という可能性があります。
・本人は静かにしていたいのに、頻繁に歌や体操の時間がある
・利用者の人数が多すぎる、もしくは少なすぎる
などで、本人の居心地が悪くなってしまうと、利用を避けるようになりがちです。
更に、何らかの理由で
・苦手な利用者や職員ができてしまった
という状況も考えられます。
これらの場合、何より本人の気持ちを優先して、施設職員やケアマネジャーに相談し、対応やサービス内容の変更をお願いしてみるのが一番です。
サービス内容の変更が難しかったり、変更しても本人が嫌がる場合は、別の施設を探す事も視野に入れてみてください。(わが家の場合、「ここも嫌、あそこも嫌」と3回ほど施設を変わりましたが、4つ目でようやく落ち着きました…)
現在は施設の数も昔よりずいぶん増えて、更に多様化も進んでいます。
施設のなかには
・ビリヤードやダーツなどちょっと素敵な遊びができる施設
・ボクシングやジムが利用できる施設
・プールが併設され水泳教室のある施設
・食事へのこだわりがある施設
・植物栽培や畑仕事に力を入れている施設
・施設内通貨やチケット制のカフェコーナーがある施設
・工作や音楽などクラブ活動がある施設
など、サービスのバリエーションも豊かになってきています。
「デイサービスはみんなで歌を唄うだけでしょう?」という従来のイメージから少しずつ変わってきており、今後も様々な施設やサービスが生まれることが期待されています。
まとめ
高齢者の’やりたがらない問題’を見てきました。
入浴はもとより、特に介護サービスを利用することは、高齢者本人の心身の健康維持だけでなく、ご家族の大切な休息時間にも繋がります。
お互いにとっての健やかな暮らしのために、システムやサービスをうまく利用できるよう上記のような工夫や働きかけを行ってみてくださいね。
また高齢者と関わる際は、「完璧でなくてもいい。全てうまくやれなくていい」と、常に心に留めておくとお互いの負担感も軽減しやすいです。
「無理しすぎない。させすぎない。」
頑張りすぎずにいきましょう!
投稿者プロフィール
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5年にわたり祖母の介護を経験。その経験を元に、介護の世界へ。
現在はライターとして介護の記事を中心に執筆中。
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