高齢者がイライラしていて対処法が知りたい!そんなときは、天気も関係しているかもしれません。
天候の影響を受けやすい気象病の方や、自律神経の調整能力が低下している高齢者の方は、台風など大型低気圧が近づいたり酷い豪雨に見舞われると体調だけでなく気持ちが不安定になりやすい事をご存知ですか?
夏本番を迎えると、台風や突然のゲリラ豪雨など、大雨や強風の心配が出始める時期ですね。
実はこの台風や爆弾低気圧がやってくると、様々な体調不良に加え、ソワソワとハイになったり、ズーンと落ち込みやすくなったりと大きく2通りに気分が別れ、精神的に不安定になることがあるのです。
そしてその気分の変化が実際の行動や体調に影響し、持病悪化のきっかけや思わぬ事故に繋がってしまうことも…
年々雨の勢いが増す昨今、特に雨の被害の多い夏から秋にかけての台風シーズンを健やかに過ごすための養生情報をお伝えしますので、ご自身やケアしている方のため、一緒に台風に負けない体と心を目指しましょう!
高齢者のイライラ!台風や豪雨で不調が出る仕組み
台風や豪雨は低気圧の塊です。
気圧が低くなるということは、「物理的に体にかかっている空気の圧力が減る」という事なので、重しのなくなった人間の体は内側から膨らむような状態となります。
内部の空間は押し広げられ、その内側からの圧力によって歯の治した痕や古傷が痛んだり、神経に刺激が伝わって頭痛や神経痛なども起こりやすくなります。
気圧が低くなればなるほど内圧は上がりやすく、そういった不快な症状が出やすくなってしまうのです。
同様に、内耳でも気圧の変動をキャッチし一旦交感神経が刺激されるため、心身が「闘争や逃避の準備態勢」のような状態に入り、突然不安感が出たり色々な事が心配になって
・強い雨風のなか裏の川や田んぼの様子を見にいく
・屋根が気になると言って高いところに登りだす
など、ソワソワして落ち着かないという状態が出やすくなります。
(豪雨の日の危険な行動あるあるですよね…)
また
・理由もなくイライラしたり攻撃的になってしまう
・物音や人声がやけに気になる
・疲れているのに頭が冴えて全く寝付けない
など、過敏性が増したり、過覚醒状態からなかなか抜け出せなくなる場合もあります。
更に、時間が経過して台風や大型低気圧の中心が移動し気圧が上がりだすと、今度は副交感神経優位に切り替わり
・ボーッとする、眠たがる、傾眠傾向が増す
・過食に傾く、食べても食べても食べたがる
・体が重たくやる気も出ず動くことが億劫に感じる
・悲観的になったり、落ち込みやすくなる
など、ダウナー系の症状が出やすくなります。
気候の変化に敏感な方や、自律神経の調整能力が低下している高齢者の場合は特に、体調不良に加えてこういった気分の変化やそれに伴った行動の変化が大きく出やすいので、豪雨が予想される際は注意や心構えが必要となります。
※「どのタイミングで交感神経と副交感神経が反応するか・スイッチが切り変わるか」には、かなり個人差があります。
しかしその方なりのパターンがある場合が多いので、例えば介護をされている方の場合であれば、こういった介護の記録ノートなどで簡単にでも記録をつけて、「天気や気圧」と「気分や体調」との関係を調べてみるのも大変おすすめです。
(こういった記録ノートは、高齢者であれば病院にかかる際やデイサービス・訪問介護などを利用する際、情報の連携や医療・介護の質の向上にとても役立ちますよ。)
また、こうした気圧変化に敏感な方であれば『太平洋沖に台風が発生した』など、かなり早い段階から心身に何らかの違和感が出る方もおられますので、ぜひ記録をつけてご自身や介護される方の傾向を見つけられるよう取り組んでみてくださいね。
後半はこういった心理的な不具合や体調不良に関して、東洋医学を用いた具体的な対策をお伝えしていきます!
東洋医学からみる「台風」
東洋医学的にいうと台風は大きな「風」と「湿」、「熱」と言われます。
風、湿、熱(火)はどれも「六淫(=病を引き起こす外界の原因)」のなかのひとつです。
「湿」は湿気の事で、これは通常の雨の日などにも多く発生しますが、加えて「風と熱」が合わさるのは真夏の台風ならではの病因。
(※湿に関しては、詳しくは湿気の回を参照→こちら「 梅雨時期や高温多湿な夏場の高齢者の健康管理!)」
「風」は「動きや変化が速い」という特徴を持っています。
体の中や外を吹き荒らして特に体の上部(顔や頭部)を襲いやすく、それらに関する不調(めまいや頭痛、神経過敏など)を起こしやすくなります。
また色々な症状が場所を変えて次々と現れたり、気持ちがころころ変わるような不安定な感覚も起こしやすいといわれています。
そこに「熱」が加わる事で、さらに頭部の興奮や混乱、イライラ感、暴力衝動などを引き起こしやすくなるのです。
梅雨〜夏場に暴力的な事件が多いのも、こうした気候との関係が指摘されています。
(※身体症状的には「消化器の不具合、かゆみや腫れ/膿むような皮膚炎症、喉や扁桃腺の痛み、腫れ、結膜炎や膀胱炎」なども起こりやすいです。)
そのため、これらの状態の緩和としては、梅雨時の「湿気」を抜くような生活や対処に加えて、「風と熱」も抑えるような対策が必要となります。
高齢者が台風や豪雨で不調が出たときの対処法
では、こうした不調が起きたとき、どのように対処したら良いのでしょうか。
東洋医学の観点から対処法をお伝えします。
漢方
・「五苓散」…必要な水分は体に留めたまま体に偏る余分な水分のみ排出してくれる優れもの(利水剤)です。湿気の多い時期の体調不良におすすめ。頓服的に使えますので、お天気が崩れそうな時に。
・「柴苓湯」…五苓散でもいまいち効きが悪いと感じる方はこちらもおすすめです。五苓散の利水効果に加え、元気を足し、また余分な熱も冷ましてくれるので、水を巡らせる力もよりパワーアップ。更に心身を安定させてくれます。
・「柴胡加竜骨牡蛎湯」 …こちらも偏った余分な熱を冷まし、心身を落ち着けてくれる生薬が配合されています。「イライラやソワソワが止まらない、不安感が出ていてもたってもいられない、疲れていて眠りたいのに全く寝付けない」そんな時におすすめ。
(私も遅くまで仕事をした夜中など寝付けない時たまに使用するのですが、飲んで15分くらいでスーッと楽になり、よく眠ることができています。)
※こちらは「高血圧」など使用目標の体質表示がありますが、頓服的に1、2回飲むのでしたら適応外の方でも大丈夫です。 ただし胃腸が重たくなるなど体に合わない場合は使用をお控えください。また認知症などで通院されている方の場合は周辺症状緩和の為「抑肝散」という漢方が出されている事があり、両方摂ると主成分が被ってしまいますので、その場合もお気をつけくださいね。
ツボ
・「陰稜泉(いんりょうせん)」…膝内側にあり、水分代謝アップにおすすめです。湿気での不調に困った時に。
・「内関(ないかん)」…手首の内側中央部にあり、気圧が下がって辛いときなどに広く自律神経を整えてくれるツボです。めまいや吐き気などにも効果あり。交感神経優位な時に特におすすめ。
・「経渠(けいきょ)」…手首の内側(親指側)にあり、気圧が上がってきて重ダルい、ぼーっとするなどやや副交感神経優位に傾いた際の不調におすすめ。肌表面の気を整えて「風」へのバリア機能も高めてくれます。
ツボは圧刺激やお灸などでケアしてみてください!張っていたり押すと痛みなどがある場合は、ペンの先などでトントンと刺激を入れるのも効果的です。
その他のおすすめ
・「酔い止め」…天候が大きく崩れる直前、もしくはその際中に使うと、内耳の神経が鎮静化されてめまいや気持ち悪さ、体の痛みなどを緩和するとともに、神経的なことから起こる気持ちの揺れも軽減してくれます。(医療界隈でも病院処方のめまい止めより優秀ともっぱらの噂です…)
・「油物、アルコール、チョコレートなどを控えめにしておく」… 実はこれらの飲食物は「熱と湿気の塊」のようなもの。寒い時期にはまだ良いのですが、夏の台風の時期に沢山摂ると、前述のような心身の不調を助長してしまう可能性が高くなります。
なので湿気、熱、風の塊である夏場の台風や豪雨のそれと合わさってしまわぬよう、この時期は少しだけ頑張って控えめにされることをおすすめします。
逆に、冷え対策や胃腸の不具合などで生野菜を控えていた方は夏場のこの時期ばかりは解禁可能です。お野菜からの優しい水分やビタミンをうまく取り入れて、穏やかな解熱や水分補給を行いましょう。
まとめ
今回は台風や大型低気圧とメンタルや体調との関係についてお話してきました。
気圧の大きな乱高下は気分の大きな乱高下に繋がりやすく、注意が必要です。
ご自身やケアされている方の「普段の様子」をきちんと把握しておくことで、「なんか様子が変だな…」も掴みやすくなり、早い段階で対策が打て、「簡単なものでも効く」という良いサイクルを生み出しやすくもなります。
ぜひノートやアプリなど活用して、健やかな状態に近づけていられるよう取り組んでいきましょう!
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