「高齢者の一人暮らし」や「高齢両親ニ人暮らし」で起こる不安や問題とその対策

介護の豆知識

増加する「高齢者の一人暮らし」や「高齢両親二人暮らし」

あなたは今「高齢で一人暮らしをしている」、もしくは「実家に高齢の親がおり、離れて暮らしている」。そのような状況ではありませんか?

日本では現在、社会的に高齢化が進み、一人暮らしの高齢者が増え続けています。

このまま行くと2040年には65歳以上の男性20.8%、女性24.5%が「一人暮らし高齢者」になると予測されているようです。(『令和2年高齢社会白書』)

私の暮らす団地でも「新築を買った子ども連れの若夫婦世帯」と「子どもの独立やパートナーの逝去などで独居住まいとなった高齢者世帯」の二極化が進みつつあり、両者が交わることなく日々を過ごしているような状態です。

そういった高齢者が「単身」もしくは「ニ人住まい」で暮らす場合、どのような不安や危険があるのか。

また本人が行える対策や、遠方から可能な支援や関わりにはどういったものがあるのかをご紹介していきますので、ぜひ参考にされてください。

高齢者の不安① 健康問題

高齢者が抱える不安の一番はやはり「健康」に関してです。

つい先日、「知人の高齢の母親が実家の庭先で倒れ、ご近所さんが発見して救急車を呼んだ」という出来事がありました。(脳梗塞でしたが幸い大事には至りませんでした。)

また別の知人は、「お盆で久々に実家へ帰省したところ両親ともにひどく痩せて弱っていた。夜、父母の寝室で一晩寝かせてもらうことになり、そこで初めて寝室のエアコンが壊れていることに気がついた。」このような出来事を経験したとのこと。(ご両親はひと夏、壊れて冷えないエアコンを使用し続けて体調を崩されたようです。)

高齢者はもともとの持病に加え、これらのような突発的な体調悪化も心配の種です。

近年では異常な暑さや酷い豪雨など天候の乱れも顕著なため、温度の感知能力や危険への判断力・対応力が弱ってきている高齢者にとってはますます不安な状態となります。

対策

それでは、そんな不安に対してはどんな対策が考えられるでしょうか。

・ご近所さんとの密な連携

まず試みたいのが「ご近所付き合いをしっかり行う」というもの。

町内会などに参加していないならぜひ加入をして、回覧板のやりとりや日常会話などで、普段の生活の様子を周りの方にも把握しておいてもらいましょう。異変に気づいてもらいやすくなりますし、万が一の際には手助けをしてもらいやすくなります。

・デジタルの温度計を身の回りに設置する

熱中症や逆に寒すぎるなど、気温に関連した危険性があるときには顔の表情が変わるデジタル表記の温度計が販売されています。本人の肌感覚ではなく、そういった表示を目安に室温管理をするよう促すのも健康対策のひとつです。

また不足しがちな水分補給のため、飲料水をまとめて自宅宛に送ってあげるのもおすすめです(お店で買うと重たいですので。)

離れて暮らす親の健康への不安を解消するにはこんな商品もあります。

象印「みまもりホットライン」

電気ポットに携帯電話の通信機能を内蔵しており、ポットの使用状況を遠隔で確認できるというもの。メールで使用状況の報告を受けることも可能です。

あなたの安心見守り支援サービス

離れて暮らす家族の家へ見守り機器を設置することで、スマートフォンから専用アプリで生活を見守ることができる「見守り支援サービス」。親世代がアプリを使うなどの手間が不要で、カメラがついているわけではないのでプライバシーも守られるため、導入のハードルも低いでしょう。

・地域のしくみや民生委員などを頼る

日本には、65歳以上になると厚生労働省が認める民生委員が自宅を訪問し、生活の様子の把握や困りごとの相談に乗ってくれる制度があります。本人でなくとも家族が直接相談の電話をする事も可能ですので、しっかりと活用してください。この制度の利用で問題が発覚・解決することが多々あります。

・一言でも良いので、普段から連絡をとる

「誰かと気楽に連絡を取れる」というのは、単身住まいの高齢者にとって大変心強い事です。それが家族であればなおのこと。

高齢の親や知人が一人もしくは二人暮らしをしている場合は、「忙しいから長くは無理だけど!」という前提付きでも良いので、ぜひ週1回だけでもコミュニケーションを取ってください。心が安心したり気持ちが元気になると、体も健康を維持しやすくなります。

高齢者の不安② 泥棒や詐欺などの犯罪

近年、高齢者を狙った犯罪は枚挙にいとまがありません。ここ1年、私が身近で聞く限りでも「自宅に泥棒が入った」「物売りが玄関に居座り帰らない」「オレオレ詐欺の電話があった」など、さまざまな犯罪や事件すれすれの迷惑行為が高齢者宅で起こっています。

振り込め詐欺など特殊詐欺に至っては、被害者はなんとその8割が65歳以上の高齢者。しかし高齢者ひとりでは対応が難しいため、周りの協力や事前の準備が不可欠です。

対策

・防犯機器の設置

[固定電話]

近年、高齢者への犯罪の入り口となりやすいのが「固定電話」です。直接的な詐欺の電話だけでなく、泥棒が家主の在宅/不在や生活パターンなどを把握する際にも使います。

そのため、あらかじめ「非通知拒否」や「迷惑電話ブロックサービス」「録音機能(事前アナウンス付き)」など、防犯機能がついている固定電話を設置しておくのがおすすめ。私の実家もこのタイプに変更し、ブロック機能が度々働いて固定電話が鳴ること自体かなり減ったようです。

[カメラの設置]

さらに、可能であれば玄関などに防犯カメラがあるとより安心です。街中に防犯カメラを増やした愛知県刈谷市では、5年で刑法犯認知件数が46.4%も減少したとのこと。万が一の際の証拠にもなるため、高齢者の単身住まいには心強い味方となります。

またカメラ設置は前項の「健康面対策」としてもパワーを発揮します。

母が脳梗塞で倒れた知人は、実家のリビングにカメラを設置していつでも安否が確認できるようにしたとのこと。プライバシーへの配慮は必要ですが、「夜なのに電気がついていない/昼なのにカーテンが開かない」など、本人が写らずとも異常に気付きやすいため、健康対策面からもおすすめです。

高齢者の不安③ 脳の衰え

身体・体調面では健康であっても、認知症など脳機能の衰えによる問題が起こることもあります。

「怒りっぽくなってきた・誰かをいつも責めている」逆に「よく不安を訴える・何かと心配する」。このような精神的な面から、「伝えた事をすぐ忘れる・同じものばかり買う・家にゴミを溜めて片付かない」など物理的な面まで、「最近なんか変だな」と感じたら要注意です。

高齢者の単身住まいではどうしても生活が単調になってしまうため、脳への刺激が減り、認知機能が衰えやすくなってしまいます。

対策

・運動を増やす

脳はさまざまな種類の感覚刺激を喜びます。なかでも特に体の色々な部位からの多様な刺激が脳に良いとされています。

例えば「有酸素運動、ラジオ体操、ボールなど道具を使うもの、床運動(ストレッチ)」など、色々なタイプの運動を少しずつ行い、動きの種類を限定しない方法がおすすめ。
(『山歩き』も視覚や足裏への不規則な刺激が脳への良質な感覚刺激となり、かなり活性効果が高いようです。)

『いきいき100歳体操』をはじめ、各自治体が町内で体操集会を開いている場合も多いので、ぜひ調べて参加してみてくださいね。

・会話を増やす

どの項目にも共通して大事なことですが、「会話をする」というのも脳への良い刺激や心身の安定に繋がります。ご近所さんや、スーパーの店員さんなどとの簡単な会話でも◎。
また最近では「電話」がかなり脳を使うことがわかってきているようです。直接会わなくても良いので、ぜひ意識的に会話を増やしてみてください。

・脳トレグッズの活用もおすすめ

現在は「脳力」を高めるためのドリルやパズル、体操やぬいぐるみまで、たくさんの脳トレグッズが発売されています。

「脳は加齢と共に衰えるだけで変化はしない」と長年考えられてきましたが、近年の研究では「脳の一部では年齢を重ねても神経細胞が生まれ続けること」や「外部からの良い刺激により、歳を取っても状態がより良く変化する」ことが分かってきました。毎日少しずつでよいので、無理せず続けてみましょう。

・免許証返納はちょっと待って(!?)

近年、高齢者の自動車事故のニュースなどを受けて、子どもが高齢の親に免許証の返納を迫るケースが増えているようです。

しかし、地域にもよりますが、自動車は高齢者にとって、社会との繋がりのための窓のようなもの。実際、免許証を返納してから活動量・行動力が落ちてしまいすっかり老け込んだという話もちらほら耳にします。

可能であれば免許証返納の前に、早めに安全装置のある車に乗り換えておくなど「長く乗れる準備」を整えておく事をお勧めします。

まとめ

高齢者の単身、二人住まいにおける不安や危険をみてきました。

こうして問題をまとめて眺めてみると、それらの予防や解決には「日頃からの積極的なコミュニケーション」が鍵になることが分かります。

現在は社会の状況的にも、人と密に関わることや活動的になることが避けられがち。
しかし、そのなかでもぜひ「人との関わり」や「より良くなること」を諦めず過ごしていただきたいと思います。もちろん無理や強要はしすぎずに!じっくりとマイペースに取り組んでいきましょう!

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