高齢者にとって便秘は、単なる不快感にとどまらず、体調や認知機能、精神状態にまで影響を及ぼす可能性があります。 「数日出ていないだけだから…」と放置してしまうと、腸閉塞や排便困難による転倒、さらには認知症の悪化など、深刻な事態につながることも。
この記事では、「高齢者 便秘」という視点から、便秘の種類・原因・対策・予防法までを詳しく解説します。
高齢者に便秘が多い理由とは?
加齢に伴い、腸の働きや筋力が低下することで、便秘になりやすくなります。以下のような要因が複合的に関係しています。
主な原因
- 腸の蠕動運動の低下:筋力の衰えにより、腸の動きが鈍くなる
- 水分・食物繊維の不足:食事量の減少や偏食が影響
- 運動不足:活動量が減ることで腸の刺激が弱まる
- 薬の副作用:降圧剤、抗うつ薬、鎮痛薬などが便秘を引き起こす
- 排便習慣の乱れ:トイレを我慢する、排便のタイミングを逃すなど
これらの要因が重なることで、慢性的な便秘に悩む高齢者が増えています。

この調査の数は「便秘の自覚がある/調査に回答できる」状態の方の数値ですので、潜在的な高齢者の便秘はより多くなると考えられます。
高齢者の便秘の種類と特徴
便秘と一口に言っても、原因や症状によっていくつかのタイプに分かれます。高齢者に多い便秘の種類を理解することで、適切な対策が立てやすくなります。
機能性便秘(最も一般的)
- 腸の動きが弱く、便が腸内に長くとどまることで水分が吸収されすぎ、硬くなる
- 加齢や運動不足、食生活の乱れが主な原因
痙攣性便秘
- ストレスや自律神経の乱れにより、腸が過剰に収縮して便がうまく運ばれない
- ウサギの糞のようなコロコロした便が特徴
直腸性便秘
- 便意を感じにくくなり、便が直腸に溜まっても排出されない
- 排便を我慢する習慣や、寝たきりの生活が原因
食事性便秘
- 食事量が少ない、食物繊維が不足していることで便の材料が足りない
- 朝食を抜く習慣やダイエットが影響することも
高齢者の便秘が引き起こすリスク

便秘は体調不良だけでなく、精神面や認知機能にも影響を及ぼします。
便秘による主なリスク
- 腹痛・膨満感・食欲不振
- 不眠・イライラ・不安定な気分
- 転倒リスクの増加(排便時のいきみやふらつき)
- 認知症の悪化(腸内環境の悪化が脳に影響)
- 皮膚トラブルや体臭の悪化
- 腸閉塞や排便困難による緊急入院
便秘は「腸の問題」だけでなく、「全身の問題」として捉える必要があります。
高齢者の便秘対策|今日からできる5つの工夫
便秘の改善には、生活習慣の見直しが欠かせません。以下のような工夫を取り入れることで、自然な排便リズムを取り戻すことができます。
1. 水分をこまめに摂る
高齢者は喉の渇きを感じにくくなるため、意識的に水分を摂ることが重要です。 1日1.5〜2リットルを目安に、少量ずつこまめに飲むようにしましょう。
2. 食物繊維を意識して摂る
野菜、果物、海藻、きのこ、豆類などを積極的に取り入れましょう。 特に不溶性食物繊維(ごぼう、玄米など)と水溶性食物繊維(オートミール、りんごなど)をバランスよく摂るのがポイントです。
3. 適度な運動を習慣にする
ウォーキングや軽い体操、ストレッチなど、腸を刺激する運動を日常に取り入れましょう。 寝たきりの方でも、座ったままでできる体操があります。
4. 排便習慣を整える
毎朝決まった時間にトイレに座る習慣をつけることで、腸がリズムを覚えます。 便意がなくても「座るだけ」でも効果があります。
5. 腸内環境を整える食品を摂る
ヨーグルト、発酵食品(納豆、味噌、漬物など)を取り入れることで、善玉菌を増やし腸内環境を改善できます。
寝たきり高齢者の便秘対策
寝たきりの高齢者の場合、排便のタイミングを逃しやすく、便秘が慢性化しやすい傾向があります。特に、排便の感覚が鈍くなっている場合は、本人の訴えがなくても、定期的な声かけや排便記録の管理が重要です。
また、排泄環境の整備も見落とせません。ベッド上での排泄が中心になる場合は、プライバシーへの配慮や、臭いや音への対策が、精神的な安心感につながります。介護者が焦らず、穏やかに対応することで、排便への抵抗感を減らすことができます。
便秘が長引く場合は、訪問看護師や主治医と連携し、浣腸や摘便などの医療的処置を検討することもあります。これらは専門職の判断が必要なため、自己判断で行わず、必ず医療者に相談しましょう。
さらに、便秘が続くことで食欲が低下し、栄養状態が悪化することもあります。排便の状態は、体調のバロメーターでもあるため、日々の観察と記録を通じて、早めの対応につなげることが大切です。
排便リズムを整える声かけと習慣づくり
- 毎朝決まった時間にトイレやポータブルトイレに座る習慣をつけることで、腸が排便のタイミングを覚えます。
- 寝たままでも「排便の時間だよ」と声かけすることで、意識づけができます。
腹部マッサージや体位変換
- やさしく時計回りにお腹をマッサージすることで、腸の動きを促進できます。
- 2〜3時間ごとに体位を変えることで、腸への刺激が生まれ、排便を助けます。
座位保持が可能なら、座らせる時間をつくる
- ベッド上でも背もたれを起こして座位をとることで、重力の助けを借りて排便しやすくなります。
- 座位保持が難しい場合は、介護用クッションやリクライニング機能を活用しましょう。
便秘薬の使用は慎重に

便秘薬は即効性がありますが、常用すると腸の働きが弱まり、依存につながることも。 高齢者の場合は特に、体力や腸の状態に合わせて慎重に選ぶ必要があります。
使用時の注意点
- 医師や薬剤師に相談してから使用する
- できるだけ自然排便を目指す
- 食事・運動・生活習慣の改善と併用する
介護中の方へ:便秘は心身のサイン
介護をしていると、排便の管理は避けて通れないテーマです。 便秘が続くと、本人の気分が不安定になったり、介護負担が増したりすることもあります。
見守りのポイント
- 排便の頻度や状態を記録する
- 食事・水分・運動の状況を把握する
- トイレの声かけや環境整備を行う
- 便秘が続く場合は医師に相談する
便秘は「恥ずかしいこと」ではなく、「健康管理の一部」として捉えることが大切です。
まとめ:高齢者の便秘は予防と早期対応が鍵
高齢者の便秘は身近な問題です。 しかし、放置すると心身にさまざまな影響を及ぼすため、早めの対策が重要です。
水分・食物繊維・運動・排便習慣・腸内環境の5つの柱を意識しながら、無理なく続けられる工夫を取り入れていきましょう。 介護中の方も、本人の気持ちに寄り添いながら、安心できる排便環境を整えることが、快適な生活につながります。

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