親が認知症になったとき、介護はどう始める?「なんか最近怒りっぽいな」「同じものが何個も買ってある」「家の掃除が出来ていない」…こうしたことが目立つようになったら要注意です。
この記事では、認知症の兆候から自宅で受けられる介護サービス、費用負担の仕組みまでを詳しく解説します。
親が認知症かもしれないと感じたら

「最近、親の様子がちょっと変…」 そんな違和感を覚えたことはありませんか? 認知症は、早期発見と適切な支援が何より重要です。この記事では、「親 認知症 介護」という視点から、認知症の兆候、診断の流れ、介護の始め方、そして自宅で受けられる支援サービスまでをわかりやすく解説します。
認知症の兆候とは?見逃しやすいサインに注意
認知症は、加齢による物忘れとは異なり、日常生活に支障をきたす症状が現れます。以下のような変化が見られたら、注意が必要です。
よくある兆候
- 同じ話を何度も繰り返す
- 財布や鍵などを頻繁に失くす
- 買い物で同じものを何度も購入する
- 急に怒りっぽくなる、感情の起伏が激しくなる
- 掃除や料理など、以前できていたことができなくなる
- 電話を何度もかけてくる
- 小銭ばかり使う、金銭管理が雑になる
こうした変化が続く場合は、「年のせい」と片付けず、早めに医療機関で診断を受けることが大切です。
病院を嫌がる場合の対応方法
認知症の兆候が見られても、親が病院に行きたがらないケースは少なくありません。「年のせいだから」「恥ずかしい」「何も問題ない」といった言葉で拒否されると、家族としてどう対応すればいいのか悩んでしまいます。
なぜ病院を嫌がるのか?本人の心理を理解する
- 病気と認めたくない気持ち:「認知症」という言葉に対する恐怖や偏見が根強く、診断されること自体を避けたいという心理が働きます。
- 自尊心の防衛:長年家族を支えてきた立場として、「弱った姿を見せたくない」「子どもに迷惑をかけたくない」と感じていることもあります。
- 過去の医療体験への不信感:以前の通院で嫌な思いをした経験があると、病院そのものに抵抗を持っている場合もあります。
こうした背景を理解したうえで、無理に説得するのではなく、本人の気持ちに寄り添うことが大切です。
病院に行ってもらうための工夫
- 目的を変えて伝える:「認知症の検査」ではなく、「最近ちょっと疲れてるみたいだから、健康チェックに行こう」と伝えると、受け入れやすくなります。
- かかりつけ医を活用する:普段から通っている内科やクリニックで相談することで、本人の警戒心が薄れます。医師から自然に認知機能のチェックをしてもらうのも有効です。
- 家族の健康診断に便乗する:「私も一緒に診てもらうから」と伝えることで、受診へのハードルが下がります。
- 第三者の声を借りる:ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員など、信頼できる第三者からの助言は、本人の心を動かすきっかけになります。
受診につながらなくても焦らない
すぐに病院に行ってもらえなくても、日常の中で少しずつ信頼関係を築きながら、タイミングを見て再提案することが大切です。認知症は進行性の病気ですが、早期発見がすべてではありません。家族が冷静に見守り、必要な支援を準備しておくことで、いざという時にスムーズに対応できます。
認知症と診断されたらまずすべきこと
認知症と診断された場合、介護保険サービスを利用するためには「要介護認定」を受ける必要があります。
要介護認定の流れ
- 市区町村の窓口で申請
- 調査員による訪問調査
- 主治医の意見書の提出
- 判定・通知(原則30日以内)
認定結果に応じて「要支援1〜2」「要介護1〜5」に区分され、利用できるサービスや費用負担の上限が決まります。
自宅で受けられる介護サービス一覧

認知症の親を自宅で介護する場合、介護保険を活用することで、さまざまな支援を受けることができます。
訪問系サービス
- 訪問介護:食事・排泄・掃除などの生活支援
- 訪問入浴介護:浴槽を持参して自宅で入浴支援
- 訪問看護:医療的ケア(点滴・吸引など)を提供
- 訪問リハビリ:理学療法士などによる機能訓練
通所系サービス
- デイサービス:日帰りで入浴・食事・レクリエーションを提供
- 認知症対応型通所介護:少人数制で柔軟な対応が可能
- 通所リハビリ:病院や施設でのリハビリ中心のサービス
宿泊系サービス
- 医療型ショートステイ:医療的ケアが必要な方向けの施設
- ショートステイ:短期間の施設入所(介護者の休息にも活用)
認知症介護の費用と負担軽減の仕組み
介護保険サービスを利用する場合、自己負担は原則1割(所得に応じて2〜3割)です。 ただし、利用限度額を超えると全額自己負担になるため、ケアマネジャーと相談しながらプランを立てることが重要です。
負担軽減制度
- 高額介護サービス費制度:月額負担が一定額を超えた場合に払い戻し
- 福祉用具のレンタル・購入補助:介護ベッドや手すりなど
- 住宅改修費の助成:段差解消や手すり設置などの工事費補助
介護者の負担を減らすためにできること
認知症介護は、身体的・精神的に大きな負担がかかります。介護者が倒れてしまっては元も子もありません。
介護者支援のポイント
- レスパイトケア:ショートステイなどで一時的に介護を離れる
- 介護者カフェ・交流会:同じ悩みを持つ人との情報交換
- 地域包括支援センターの活用:相談・制度案内・ケアプラン作成支援
また、介護離職を防ぐために、介護休業制度や時短勤務制度の活用も検討しましょう。
早期から介護サービスを使うメリット

「まだ自分たちだけでなんとかなる」と思っていると、介護が限界を超えてしまうことがあります。 早期から介護サービスを利用することで、親も子もサービスに慣れ、スムーズな支援体制を築くことができます。
メリット例
- 介護のやり方が固定化されず、柔軟な支援が可能になる
- 親が外部の人に慣れることで、施設入所への抵抗が減る
- 子どもが介護のノウハウを学び、安心して対応できる
まとめ:親の認知症介護は「早めの準備」と「制度の活用」が鍵
親が認知症になったとき、介護は突然始まります。 しかし、早めに兆候に気づき、診断を受け、制度を活用することで、負担を大きく減らすことができます。
「親 認知症 介護」という課題に直面したときこそ、情報を集め、相談し、支援を受けることが大切です。 自宅での介護も、地域のサービスと制度を組み合わせることで、安心して続けることができます。
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そのため、認知症の人への接し方には、万人に通じる答えは存在しないのです。
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投稿者プロフィール

- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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