親が認知症で介護が必要になったときの福祉用具や自宅の改修支援

介護の豆知識

「認知症の親を介護しているが、どんな介護用品が必要なのか。」「家の中で何度も転んだりしているようだが、どうしたら安全な家になるのか。」「薬はちゃんと飲んでいるだろうか。」などなど。

介護にまつわる心配は尽きませんが、いつも側にいられるわけもない。そんな時にあったら便利、あったら安心の介護用品を介護保険内外でご紹介します。

また、認知症の状況の変化に合わせた介護保険の住宅改修の解説や、介護用品にかかる費用についての補助やそのほかの支援などについても説明します。

ぜひ、参考にしてください。

介護保険と介護用品・福祉用具

介護用品は、車いすやスロープ等の福祉用具から、紙おむつや介護用ハブラシなどの日用品まで、広い範囲で介護に用いられる物で、継続的に使うものから消耗品まで多岐に渡ります。

福祉用具は、使用する事で要介護者本人の日常生活動作能力の維持・改善を見込める(少なくともそれを目的として用いる)道具に限られています。

つまり、「福祉用具」と「介護用品」は別物なわけではなく、一般的には「福祉用具」も含めて「介護用品」と呼ばれています。

介護保険が適用される介護用品・福祉用具

介護保険が適用される用品は主に、「要介護者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送るために必要」とみなされる「福祉用具」であることとされています。
介護保険で貸与されるものは、以下の図にあるもののみが該当します。

坂出市公式HPより

また、入浴や排泄に使用する福祉用具は特定福祉用具とされ、介護保険で購入することができます。例えば、腰掛け用便座(ポータブルトイレ)や入浴用いすなどです。

費用については、貸与の場合、利用限度額内であれば貸出料の1割〜3割負担(所得金額による)です。購入の場合は年度ごとに総額10万円(消費税込み)で1品目当たり原則1回と決まっています。

似たような機種であっても保険対象外となる場合もあるので、ケアマネジャーと福祉用具の専門相談員と相談しながら、利用限度額内で、利用する人に合うものを選びましょう。

貸与中であれば、使用中も不具合があればすぐに用品を交換してくれ、定期的にメンテナンスすることも法律で義務付けられているうえに、このようなアフターケアに関して利用者に別途費用はかかりません。

介護保険が適用されない介護用品・福祉用具

介護用品は、介助する側と介助される側のどちらも使うものです。

日常的に使用して消耗する紙おむつや介護食、人それぞれの好みや使い勝手が反映される1本杖やシルバーカーなどの介護用品は、介護保険の適用外となります。

ほかにも食事介助に使う食べこぼし防止のエプロンや排泄時に布団が汚れるのを防止する防水シーツなども同様です。

しかし、おむつや尿とりパッドなどは介護保険は適用外ですが、確定申告の際に医療費控除を受けられます。自治体で、福祉サービスとしてオムツの支給などを行っていることもありますので、窓口で確認してみましょう。

ちなみに、車いすの購入に関しても、「医師等による診療等を受けるため直接必要」な場合は医療費控除の対象になります。

認知症の介護におすすめの介護用品・福祉用具

では、ここからは認知症の人の介護におすすめの介護用品・福祉用具をお伝えしましょう。

認知症の介護に必要な介護用品・福祉用具

認知症は記憶障害から、理解・判断力の低下、見当識障害などの中核症状からそれによって起こる個々の行動・心理症状の日々の対応が重要になります。

日々のスケジュールを管理する

不安を少しでも減らすために、認知症の人がいつでも目で見て、確かめられるようなスケジュール表を準備しておくのがおすすめです。ホワイトボードなどを使って、ご本人が良く過ごす場所や位置から、一番良く見える位置に設置しましょう。

置き忘れや紛失を防止する

鍵や携帯電話、財布などにつけて置き忘れや紛失などに対処することができる介護用品も便利です。一般の量販店などで手に入ります。

毎日の薬を管理する

曜日ごと時間帯ごとに薬を分けて収納できる介護用品(服薬カレンダー)は、服薬管理が難しい一人暮らしの方におすすめです。少し高額になりますが、服薬時間になると光や音で知らせてくれるものもあります。

お薬ポケットカレンダー

絵柄入りでわかりやすいお薬ポケット。

朝・昼・夜・寝る前の4回分を1週間管理できます。マチ付きポケットのため薬の出し入れがスムーズです。
ポケット部が透明ですので中身が確認でき、薬の飲み忘れを防ぎます。

1,628円(税込)

安心できる排泄処理

排泄についても尿漏れパッドから紙パンツ、テープ止めおむつと種類がありますが、ご本人の意向やプライド、介護する人の環境等を考慮しながら選んで行きましょう。

認知症の介護におすすめの介護用品

認知症の人が、落ち着いて穏やかに健康に過ごす、介護者が近くにいない時でも安全に過ごせるために便利なものをいくつかご紹介します。

心を癒やすグッズ

頭をなでると喜んだり、話しかけると返事をしてくれる癒し系の福祉用具です。認知症の方に使ってもらうと、不安感が取り除かれて落ち着きを取り戻すことがわかってきており、「行動・心理症状」を緩和できる商品として注目されています。介護施設でもよく利用されています。

お歌とお話し大好き ももいろ うたこちゃん

お話し500通り以上、童謡80曲、童話20話を収録。
本体に内蔵の3つのセンサーが反応して、色々なお話をしてくれます。
ユーザー呼称を8種類(パパ、ママおじいちゃん、おばあちゃん、など)の中から選択できます。
声や周囲の音に反応し、ときどき話しかけてくれます。

13,062円(税込)

いっしょに脳トレ おりこうのんちゃん

のんちゃんと一緒にコミュニケーションのある暮らしを楽しみながら「脳のトレーニング」を習慣化できます。脳トレメニューは全8種類(ワード記憶、リズム、計算、しりとり、干支並べなど)お好きな時間に、声で応える・手を動かす等、バリエーションに富んだメニュー。

季節や時間帯によって変化する1,600通り以上の様々なお話しと、童謡・唱歌を中心に30曲のお歌をのんちゃんが披露してくれます。

12,540円(税込)

認知症老人徘徊感知機器

介護保険適用の福祉用具で、昨今特に認知症の人の介護に利用されている機器です。

事前にその人の動きをセンサーが感知し、介護者に知らせてくれたり、その後の速やかな捜索に役立つ福祉用具です。

認知症老人徘徊感知機器は、福祉用具貸与で専門業者が扱っているような機器から、近くの量販店やネットで販売しているような簡単な機械まで様々あります。

ドアセンサーやベッドから下りる際の転倒事故を防ぐための離床センサー、見守りカメラや呼び出し機器、GPS機器のような介護者の安心をサポートするグッズなど幅広く提案されています。

例えば、脱着可能なセンサーです。現在は、必要に応じて多くの機器の中から選べるようになりました。お守りとして身につけたり、お散歩時にタグのように杖につけたり、靴に付けたりできるGPS装置もあります。

安価な機器は介護保険の適用外となりますが、早急に対応が必要なときは便利です。

介護保険を利用したい時は、ケアプランが必要ですので、担当のケアマネージャーと相談してくださいね。

認知症と住宅改修

住宅改修は、「混乱の原因になるから、認知症の人の場合には住宅改修工事はあまりすすめられない。」という意見を耳にすることもあります。

しかし、認知症高齢者は、認知症による生活上の困難もありますが、加齢による生活上の困難もあります。

特に移動や排泄・入浴動作などを助ける住宅改修は、その方の状態に合ったもの、ご本人の受け入れやすい変化であれば、できることを増やし、状態を保つために有効です。また、家族の介護負担の軽減にもつながります。

そこで、住宅改修が上手くいくポイントが2つあります。

①住まいの工夫を行うタイミングを考える

認知症による生活上の困難が現れる前に改修を行います。新しい手すりやスロープ、トイレのしつらえなど、これまでとは違う動作を覚えることのできる段階での住宅改修は、身体機能を支援する効果を引き出せ、認知症が進行しても移動やトイレでの排泄が可能です。

②認知症のあるご本人の受け入れやすい「使いやすさ」を意識する

例えば、トイレの改修後に便器の蓋と便座を下げた状態にしておくと、蓋の上に排尿してしまったり、風呂場やトイレに手すりを付けたのに全く使用しない、ということがあります。

これらに対して、「いつも便器の蓋を開けておく」とか「一緒に手すりを使って動いてみる」「動作を何度も繰り返す」などの継続的に無理なく使いこなす支援や工夫、また、その時のご本人が受け入れやすく、使いやすいものであるということも重要です。

介護保険が使える住宅改修について

住み慣れた自宅で安心して暮らし続けるための、小規模な住宅改修です。

介護保険が適用になる改修は、手すりの取り付け、段差の解消、滑りの防止や床材の変更、引き戸などへの扉の取り替え・新設・撤去、洋式便器などへの取り替えです。

このサービスには事前に市町村などへの申請が必要です。

住宅改修費の支給は、住民登録地の住宅につき1人あたり20万円を限度額とし、同じ住宅について原則1回限りの支給です。

ただし、要介護度が3段階以上悪化したり、住居を移転したときは再度20万円までの利用が可能となります。

介護保険が使えない住宅改修について

介護保険が適用にならない住宅改修は、建物自体の増改築、ホームエレベーターの設置といった大規模な工事です。

リフォームをめぐってトラブルとなる事例もあり、自治体によっては事業者を登録制にしている場合や、事業者に有資格者がいることを条件にしている場合もあるので、事業者選定にはケアマネージャーなどに相談されることをお勧めします。

目的はご本人の『こんな暮らしがしたい』をサポートすること

超高齢社会を迎えて、介護をめぐる環境も目まぐるしく変わっています。

介護をサポートしてもらうために利用できるサービスを知っているのと知っていないのとでは大きく違います。

介護用品や福祉用具・住宅改修は、介護者自身の負担を軽減しながら、ご本人の送りたい生活をサポートできるサービスです。

ぜひ、上手に活用してください。

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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