親の介護を行っている30代、40代は現役のビジネスパーソンとして仕事に励んだり、一家の中心として子育てや家事を行ったりする世代でもあります。
しかし総務省の「就業構造基本調査」によると、2017年に介護・看護を理由に離職した人(介護離職者数)は、9万9000人という数に上り、日本社会において大きな課題となっています。
日々忙しい30代・40代の世代が親の介護に直面した時、慌てずに対処するために注意すべき点をご紹介します。
親の介護を行う30代40代が知っておきたいこと①仕事との両立
30代や40代は仕事をしている人も多く、介護と仕事の両立を考えなくてはならなくなります。
介護負担が重く、離職することを考える人も多いですが、離職してしまうと金銭的に厳しくなる、介護から離れる時間が減り気持ちの切り替えができなくなる、将来的に再就職するのが難しくなるなど、デメリットも多くあります。
今は在宅介護を推進するための様々な支援があります。できる限り親の介護と仕事を両立させるために、介護サービスや制度を利用しましょう。
在宅介護サービスを利用する
介護と仕事を両立させるひとつの方法として、まずは在宅サービスの利用を検討しましょう。
在宅サービスとは、できるだけ高齢者が在宅で過ごせるように整備されたもので、さまざまなサービスを組み合わせて利用することができます。
訪問介護サービス
在宅で親を介護している方向けの訪問介護サービスでは、ホームヘルパーが自宅を訪問し、調理や食事、入浴、排せつなどの介助、掃除や洗濯など身の回りのことをサポートしてくれます。
デイサービス
日中は仕事で家にいないという方は、留守中に親をみていてもらえるデイサービスを利用するとよいでしょう。デイサービスは介護施設を日帰りで利用でき、自宅に送り迎えをしてもらえます。出張や旅行で数日、自宅を空けるという場合は宿泊できるショートステイというサービスもあります。
介護保険を利用した介護用品レンタルや自宅の改修
親の介護のために自宅を住みやすく改修したい、車いすや杖など介護用品をレンタルしたいという場合は介護保険を利用し、費用負担を軽減できるケースもあります。
介護施設への入所を検討する
家族の介護負担が大きくなり在宅介護での対応が難しくなったら、老人ホームなど介護施設への入所も検討してみましょう。
介護施設といっても公的施設(特別養護老人ホームや介護老人保健施設など)、民間施設(介護付き有料老人ホームやグループホームなど)の種類があり、入所条件やサービスの内容は様々です。
「親を施設に入れる」ということに対し、ネガティブなイメージを持っている人も多いですが、在宅で看るということは本人も家族も心身ともに負担になり、関係性や体調を悪化させるというリスクもあります。お互いにとってどうするのが一番良いかをしっかり話し合ったうえで、前向きに検討されることをおすすめします。サービス付き高齢者向け住宅といって、一部、介護のケアがついているけれども、ほとんどは自立した生活が送れるというものもあります。施設を選ぶ際はたくさんの選択肢がありますので、しっかりとケアマネジャーと相談し、生活しやすい場所を選んでください。
親の介護を行う30代40代が知っておきたいこと②支援制度
親の介護と仕事の両立をよりスムーズにするために、働きながら介護をする人のための支援制度についても知っておくとよいでしょう。
国が定めた制度には以下のようなものがあります。
・介護休暇
1年のうち、介護を目的として5日間の休暇が取得できる制度(半日単位でも取得可能)
・介護休業
対象家族一人につき、介護目的で通算93日間休暇が取得できる制度(3回まで分割可能)です。休業中は条件にあえば給付金が支給されます。
・労働時間の制限
介護が終わるまで、残業や時間外労働を制限する制度
・時短勤務などの制度
短時間勤務やフレックスタイム制度などを利用できる制度
これらの制度は企業によって対応が異なることも多いので、まずは勤務先の就業規則を確認しておきましょう。
親の介護を行う30代40代が知っておきたいこと③介護費用
介護にかかるおおよその費用として、一時費用は平均69万円、月々の費用は平均7.8万円となっています(公益財団法人生命保険文化センター調べ/2018年)。
厚生労働省の調査によると、介護費用には親の貯蓄や収入をあてるケースが多いことがわかりますが、親の経済状況や受けたい介護サービスの内容によっては子供が負担することもありえます。
利用者負担限度額を超えた場合に、その超過分が補助される「高額介護サービス費」、所得が低い方の介護施設における食費・居住費の負担を軽くする「特定入所者介護サービス費」など、親の介護費用負担を軽くするための制度も用意されていますが、できれば早いうちから、親の介護費用をどうするかについて親と話し合いをするなど、意識しておくとよいでしょう。
親の介護を行う30代40代が知っておきたいこと④メンタルケア
親の介護は肉体的な負担に加え精神的な負担も伴います。
そういった負担を軽減するために国・自治体の制度や介護サービスなどを利用する他、ストレスを上手に解消していきましょう。
例えばデイサービスやホームヘルパーなどの介護サービスを利用し、空いた時間を自分の趣味や外出などにあてて気分転換を行うのも1つの方法ですし、ショートステイを1週間ほど利用して、心身ともにリフレッシュするのもおすすめです。
介護保険サービス以外にも、家族の見守りや通院介助を有資格者の看護師さんが行ってくれる自費のサービスもあります。できるだけ仕事と両立させながら介護を行うには、ご自身の心身が元気でなければ難しいこともありますので、積極的にいろいろなサービスを利用することをおすすめします。
親の介護の不安や疑問を抱え込まず、サービスや制度を上手に活用しよう!
親の介護をする家族をバックアップする制度やサービスは、近年、徐々に整えられています。
それらのサービスや情報を活用し、要介護者だけでなく介護をする家族の自分の生活もしっかり守っていきましょう。
避けたいのは「親の介護は子供がやらなければ」と思いつめ、ストレスや辛さ、疑問や不安などを一人で抱え込んでしまうことです。現在、高齢者の介護は子供だけでなく様々な人が関わっていく問題です。
様々なサービスを利用し、時には同じ悩みを抱える人と話したり情報交換をしたり、趣味の時間を充実させたりして、上手に息抜きをしていきましょう。
介護にかかるお金について詳しい本もいろいろとあります。ぜひ参考にしてみてくださいね。
身近な人に介護が必要になったときの手続きのすべて
鈩 裕和 (監修)
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投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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