うつ病は年齢に関係なく誰にでも起こりうる心の病ですが、特に高齢者の場合は「老化現象」と誤解されやすく、発見が遅れることがあります。本人が症状を自覚しにくいことも多く、周囲の人が変化に気づくことが重要です。
この記事では、うつ病チェックの観点から、高齢者に見られる初期症状や家族が気づくべきサイン、対応方法について詳しく解説します。
うつ病チェック:高齢者に見られる代表的な症状
高齢者のうつ病は、若い世代と比べて「気分の落ち込み」よりも、身体的な不調や認知機能の低下として現れることが多く、本人も周囲も気づきにくい傾向があります。たとえば、「なんとなく体がだるい」「食欲がない」「眠れない」といった症状が続く場合、単なる加齢や病気のせいと誤解されることがあります。
また、うつ病と認知症は似たような症状を示すことがあり、区別が難しいケースもあります。記憶力の低下や集中力の欠如が見られる場合でも、うつ病による一時的な認知機能の低下である可能性があります。うつ病では、本人が「物忘れがひどい」と自覚していることが多いのに対し、認知症では自覚が乏しいという違いがあります。
さらに、うつ病の高齢者は「迷惑をかけたくない」「年齢のせいだから仕方ない」といった思いから、症状を隠そうとすることがあります。そのため、家族や介護者が日常の中で小さな変化に気づき、声をかけることが非常に重要です。
以下のような症状が見られた場合は、うつ病の可能性をチェックしてみましょう。
✅ 行動面の変化
- 会話が減り、表情が乏しくなる
- 趣味や楽しみへの関心が薄れる
- 外出を避けるようになる
- 食欲が低下する、または過食になる
- 睡眠の質が悪くなる(不眠・過眠)
- 身だしなみに無頓着になる
✅ 感情面の変化
- イライラしやすくなる
- 涙もろくなる
- 自分を責める発言が増える
- 「もう生きていても仕方ない」といった悲観的な言葉が出る
✅ 身体的な不調
- 原因不明の頭痛や胃痛
- 倦怠感が続く
- 呼吸が浅くなる、息苦しさを訴える
これらの症状が2週間以上続く場合は、うつ病チェックの対象として専門機関への相談を検討しましょう。
高齢者がうつ病になりやすい背景とは?

高齢者がうつ病を発症しやすい背景には、以下のような要因があります。
環境的な変化
- 配偶者や友人との死別
- 退職による社会的役割の喪失
- 住環境の変化(転居・施設入所など)
身体的・認知的な要因
- 慢性的な病気や身体の衰え
- 認知機能の低下
- 感覚機能(視覚・聴覚など)の衰え
これらの変化は、本人にとって大きなストレスとなり、心のバランスを崩す原因になります。
家族ができる「うつ病チェック」のポイント
高齢者本人がうつ病に気づきにくい場合、家族が日常の中で変化を察知することが重要です。以下のようなチェックポイントを意識してみましょう。
日常の観察ポイント
- 朝の様子が特に元気がない
- 好きだったテレビや新聞に興味を示さなくなる
- 食事の量や時間が不規則になる
- 予定をキャンセルすることが増える
会話の中での違和感
- 「自分なんて…」という自己否定的な言葉
- 将来の話を避ける
- 死に関する話題が増える
こうした変化が見られたら、うつ病チェックリストなどを活用し、専門家への相談を促すことが大切です。
うつ病チェックリストの活用方法
厚生労働省や医療機関が提供する「うつ病自己チェックリスト」は、簡単な質問に答えることで、うつ病の可能性を把握する手助けになります。
たとえば…
- 最近、気分が沈んでいると感じることが多い
- 何をしても楽しくない
- 疲れやすく、やる気が出ない
- 食欲や睡眠に変化がある
このような質問に「はい」が多い場合は、専門の医師に相談することをおすすめします。
受診のタイミングと治療の流れ
うつ病の治療は、心療内科や精神科での診断から始まります。治療方法には以下のようなものがあります。
- 抗うつ薬などの薬物療法
- 認知行動療法などの心理療法
- 生活習慣の見直しと環境調整
高齢者の場合は、身体的な疾患との併発も多いため、内科との連携も重要です。家族が付き添って受診することで、医師との情報共有がスムーズになります。
家族ができるサポートとは?
うつ病の回復には、家族の理解と支援が欠かせません。以下のような関わり方が効果的です。
- 無理に励まさず、本人の気持ちに寄り添う
- 話を聞く姿勢を持ち、否定しない
- 日常の中で小さな楽しみを一緒に見つける
- 医療機関や地域の支援サービスを活用する
「頑張って」ではなく、「いつでも話を聞くよ」という言葉が、本人にとって大きな安心感につながります。
介護者のうつ病にも注意

うつ病は高齢者だけがなるものではなく、身内の介護を行っている方がうつ病を発症して「介護うつ」になってしまうケースも。介護者がうつになる原因や症状、ならないための工夫を紹介します。
介護うつになる原因
介護うつになってしまう原因には、介護による不安や孤独からくる「精神的負担」や介護サービスなどのお金による「経済的負担」、トイレや入浴などの介助による「肉体的負担」があります。このような負担が重なると介護うつを発症する可能性が高いので、一人で抱え込まず周囲の力を借りたり、精神科や心療内科に相談したりしましょう。
介護うつの症状
介護うつの主な症状には、「食欲不振」「睡眠障害」「疲労感」「焦燥感」「思考障害」があります。食欲不振は、うつ病を発症する方の代表的な症状。食欲がなくなることで、体力の低下をおこします。また、睡眠障害もうつ病の多くの方に見られる症状で、疲れているのに眠れなくなり不眠症になってしまう傾向に。
そして、慢性的な体のだるさや頭痛などの疲労感を感じやすくなり、焦りや神経質などの焦燥感、注意力が低下する思考障害もおこります。
介護うつにならないための工夫
介護うつにならないためには、介護による不安や虚無感などを軽減させることです。介護は一人で行わず、家族や親戚などで分担しましょう。介護者が多いと負担が軽減されます。体の不調を感じたときは、ストレスがたまっていると自覚することも大事です。そのような場合は、家族や友人などの相談相手に話を聞いてもらいましょう。そして、適度に休養して趣味や旅行などでリフレッシュするのも、介護うつの予防策として大切です。

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まとめ
高齢者のうつ病は、本人が気づきにくく、周囲の理解が遅れることで悪化することがあります。日常の中での小さな変化を見逃さず、うつ病チェックを意識することで、早期発見・早期治療につながります。
「なんとなく元気がない」「以前と違う」と感じたら、迷わず専門機関に相談しましょう。うつ病は、適切な治療と支援によって回復できる病気です。家族の気づきが、何よりの支えになります。
投稿者プロフィール

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5年にわたり祖母の介護を経験。その経験を元に、介護の世界へ。
現在はライターとして介護の記事を中心に執筆中。
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