親の介護費用の軽減制度はあるのでしょうか。介護保険を利用すれば少ない自己負担で済むといっても、いつまで続くかわからない毎月の支出は、家計にとって大きな負担になります。
そのため、国や自治体、多くの企業で、介護費用の負担を軽減する制度が整えられています。
しかし、制度を知らずに活用できていないケースも少なくありません。
ここでは、介護費用の負担を少しでも軽くするために知っておきたい制度について解説します。
現在の費用の不安の解消方法のひとつとして、また、今後の介護の知識として役に立ててください。
親の介護でかかる費用は大体いくら?
公益財団法人 生命保険文化センターの2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」で、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち一時的な費用(住宅改修・介護用ベッド購入など)は平均74万円、月々の費用は平均約8.3万円となっています。 介護期間の平均は約8年(在宅5年+施設3年)ですから総額では平均約871万円ほどかかることになります。
介護にかかる費用はどのくらい?
介護費用の平均額は、自宅で介護をする在宅介護と、施設に入所した場合の施設介護では費用で大きく異なります。
また、介護度や必要な物品や医療費等の額によって全体の費用が変わってきますので、一概にこの金額というわけではありません。
では、在宅と施設介護の費用は、どれくらいなのでしょうか。
在宅の介護にかかる費用は?
在宅介護の場合は、介護保険サービス(デイサービス・訪問介護など)の自己負担分と介護サービス以外の費用(おむつ代など)がかかります。
介護を在宅で行った場合の自己負担額の平均は月額約5.1万円です。
在宅で介護を行った期間の平均は約5. 1年、単純計算すると、在宅介護にかかる費用の総額で約312万円となります。
施設入所にかかる費用は?
介護保険の施設介護サービス費の自己負担分のほかに、全額自己負担の家賃や管理費、食費、その他のサービス費用などがかかります。
施設介護費用の平均は月額約12.2万円と言われますので、施設に入所して過ごす平均期間3. 2年で計算すると、単純計算ですが総額が約455万円となります。 ちなみに、民間の施設では入居一時金などの初期費用が必要な施設もあります。初期費用の平均は約184万です。
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介護の費用負担を軽くするための制度を知っておこう
ここからは、介護の費用の負担を軽減できる制度をお伝えします。
介護の制度に関しては、ほとんど申請主義となっています。
かならず、お住まいの自治体の高齢者・介護保険窓口で申請方法をお尋ねください。
■高額介護サービス費
介護保険サービスの費用は、所得区分に応じて月々の負担の上限額が設定されています。
「高額介護サービス費」は、1カ月に一定額(利用者負担上限額)を超えたときに、超えた分が払い戻される制度です。
「高額介護サービス費」の対象となるのは、保険給付分だけで、福祉用具購入費や住宅改修の自己負担額、施設入所中の食費や居住費等の利用料は含まれません。
同じ世帯にサービス利用者が複数いる場合は、全員の利用者負担額を合計します。
■特定入所者介護サービス費
所得が低い人の介護施設における食費・居住費の負担を軽くする制度です。
施設サービスを利用したときの食費・居住費(滞在費)は原則として全額自己負担ですが、所得が低い方には、所得に応じた自己負担限度額を超えた分が介護保険から給付されます。
■社会福祉法人等による利用者負担の軽減制度
社会福祉法人等の協力で、特に生計が困難な方の利用者負担を軽減する制度です。
軽減制度を実施している社会福祉法人等で、対象サービスを利用した場合に、利用者負担の1/4(老齢福祉年金受給者は1/2)が軽減されます。
■介護保険料の減免制度
災害などの特別な事情により保険料を支払うことが困難な場合は、介護保険料の減免制度を利用することができます。主な条件は以下の通りです。
- 世帯の生計中心者が災害により、住宅・家財に著しい被害を受けた場合
- 世帯の生計中心者の収入が、前年度と比較して著しく減少した場合
- 世帯全員が市民税非課税であり、収入額が著しく少ない場合
市区町村によって条件が異なる場合があるため、しっかりと確認するようにしましょう。
■生活福祉資金貸付制度
「生活福祉資金貸付制度」は、高齢者世帯、低所得者世帯、障害者世帯を対象にした融資制度です。高齢者をはじめ、所得が少ない人、障害を持った人など生活困窮者の経済的なサポートや自立支援をすることを目的としています。
ただし、この制度は貸し付けであるため、借り入れた額については返済が必要です。
なお、連帯保証人を立てる場合は無利子、連帯保証人を立てない場合は低利子(1.5%)で融資を受けることができます。
お近くの社会福祉協議会が窓口となります。
これまで紹介した制度のほかにも、自治体が独自に助成制度を設けている場合があるため、気になる人は各都道府県や市町村に問い合わせてみましょう。
介護保険に関する税金の控除
介護保険料も、所得税・住民税の申告の際に控除の対象となります。
ここでは、簡単に紹介しておきます。
■介護サービス利用料の医療費控除
施設サービスや在宅サービスのうちの医療系サービスの利用料は、医療費控除の対象となるものがあります。
■要介護認定者のおむつ代の医療費控除
寝たきり状態で、治療上おむつの使用が必要な方は、医師が発行する「おむつ使用証明書」があれば、おむつ代にかかる医療費控除を受けることが可能です。
■要介護認定を受けた方の障害者控除
申請により「障害者控除対象者認定書」の交付を受けた方は、所得税および市県民税の「障害者控除」または「特別障害者控除」の対象となります。
また、医療の負担軽減制度の中に「高額介護合算療養費制度」という負担軽減制度があります。
医療と介護の合算額が著しく高額になった場合に、限度額を超えた分が払い戻される制度です。
「高額介護合算療養費制度」の限度額は、所得や年齢に応じて設定されていますので、こちらも自治体の窓口で尋ねてみてください。
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まとめ 大切なことだから家族みんなで話し合おう
介護については、親の希望にできる限り寄り添いながら、子世代等への負担を抑えた選択ができるように、家族みんなで早めに話し合っておくと安心です。
たとえば、介護の費用は基本的に本人が払う、本人が払えない時は配偶者や子の費用負担について、家族でどのように分担するのか、親が介護施設に入居した後は、持ち家をどうするのかなど、親が介護を必要とする前から相談しておくことが大切です。
また、介護について何を行えばよいのか分からない、どういう手続きを行えばよいのかわからないという人は、下記のような本でまず知識を得たり、親の居住地を担当する地域包括支援センターに相談してみるのも一つの方法です。
https://www.caps-shop.jp/product/detail?id=1360
投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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