講座3時間 余暇の達人は出会いの達人

 ライフ・プランセミナーの会場で名刺交換すると、現職当時の肩書き上に「元」と書き添えた方が時々おられます。もっとビックリしたのは新しい名刺なのに、元〇×企業営業部長と印刷されて堂々と挨拶される方がおられました。「わぁ!まだまだ会社人間が抜けず、重い鎧を着ているな~」と複雑な気持ちになりました。

 「会社人間から社会人間へ」たった一字の転換ですが、これがなかなか難しいと言われています。それはなぜなのでしょうか?

 特に男性陣は組織社会の中で、役割を担って長く働いてきました。いわば会社の看板を背負って仕事をしてきた訳です。それが、いざ退職してもなかなか抜けず、しっかり染みついてしまっているようです。

 定年は肩書き社会からの卒業と言われています。しかし、定年とともに組織から離れ名刺もなくなると戸惑ってしまう人が多いようです。

 会社に行けば席に着くなり、会議・電話・報告事項・部下指導と黙っていても次々と仕事が回ってきます。しかし、その環境は退職と共に大きく変化します。定年後は上司もいなければ部下も不在、誰もが平等で対等な世界。気楽な世界に足を踏み入れたのです。それを、いかにスムーズに受け入れる事ができるかが重要なのです。

 本来、会社での肩書きはその組織内だけのこと、その世界で満足したり、落胆したりの人生を送っていただけなのです。昔、何をしていたかを他人は知る由もありませんし知りたくもありません。ちよっと厳しい言い方ですが「退職とともにキッパリ縁を切る」くらいの心意気が必要です。

 要は個人としての「アイデンティティ」をどのように構築していくかなのです。会社での人間関係は退職ともに無くなると肝に銘じ、新しいネットワークを構築することを始めないといけません。収入は年金があるので何とかなるかもしれませんが、現役のようにゴルフや飲み会は減らさざるをえないでしょう。お金をあまり使わなくても可能な趣味やサークルを見つけることも大切です。

 そんな男性陣のソフトランディングを応援する事が重要なポイントで、そのカギは奥様を中心とした家族が握っています。長所を仕事以外にも見つけてあげることがとても支えになるはずです。会社以外で知り合った新しい友達とか関心を持ち始めた趣味などを、ゆめゆめけなさないことです。それは自走を始めた喜ばしいことなのですから…。

 そして名刺は、定年するからこそ必要と私はおススメしています。名前・住所・電話・メール程度のシンプル名刺でOKです。その内、趣味や新しいサークルでの活動が増えてくると役割が発生してきて肩書も自然に必要になってきます。私が開催している定年戦略セミナーではプライベート名刺を作るワークショップをしているくらいです。

定年退職は「新入社員」への
スタート


 そうなんです。定年退職は社会人間としてスタートする「新入社員」なのです。当然、肩書はありません。新しい名刺で心機一転、新規開拓に飛び出しましょう。活動を通じて気心の知れた友人や人々と心置きなく交わる機会が必ずやってきます。それが定年後の醍醐味とも言えます。利害を超え、意気投合する人との出会いが生まれたころ「会社人間から社会人間」に変身できたことを実感するはずです。

Kさんの場合


 事務機器販売会社の取締役営業部長だったKさん、65歳の時にそろそろ退職も考えないといけないと思い、私が開催したライフプラン・セミナーに参加されました。何日かの講義が終わり、最後の打ち上げでの出来事。隣の女性に「Kさん、そこの醤油取ってくださる?」と言われたそうです。それまで会社の懇親会では名前で呼ばれたことがなく「部長」だったそうです。ましてテーブルの醤油を取ってくれなぞとは思いもよらなかったそうです。

 そしてもう一つショック受けたのは参加者の多くがプライベート名刺を持っており、仕事とは全く違ういろいろな趣味やサークルの活動をしていたことだそうです。

 Kさんは、後日私の所に相談に来られました。「僕は、何をしたらいいのだろう」と。私は逆に「Kさんは、何がしたいと思いますか?」と尋ねました。暫く考えたのち「僕は歴史が昔から好きだったから何か一つを極めてみたい」と話されました。「良いですねぇ、宮島検定とか広島検定とかありますよね」などと色々お話をしてその日は別れましたが、3ヶ月後「山崎さん、私、目標が見つかりました!」と電話からの弾んだ声が。Kさんは昔から関心があった「忠臣蔵講師検定」を受けに3ヶ月後に赤穂市に行くとの事。その為に発刊されている文献を片っ端から読破していると活き活きと話しました。
新しい年となり、Kさんとお会いした際に差し出された新しい名刺には「忠臣蔵講師」とあったのです。

 「会社人間から社会人間へ」たった一字の転換だけど、実は大転換かもしれません。しかし、Kさんのように第一歩を勇気をもって踏み出すことで必ず開けます。「余暇の達人は出会いの達人」なのですから。

定年退職ともに、無くなるものと得るものがあります。
「得るもの」は、素晴らしい出会いです。
◆3つの無くなるもの    ◆3つの得るもの
一、肩書(名刺)       一、自由時間
二、人間関係(会社内)    二、自分発見
三、収入          三、新しいネットワーク

   

profile


講師
山崎勇三(やまさき いさみ)
日本余暇会理事長。中高年の健康や生きがい作りを応援しようと「健康デザイン研究所」を設立し、新しいスポーツを通じた交流や孫育て講座、秘湯の紹介など幅広く余暇の楽しみ方を伝えている。
  

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