認知症は、多くの病気と同様に早期発見・早期治療が非常に大切な病気です。
認知症が疑われる場合、まず病院で診察を受け、認知症かどうか、別の病気の可能性がないかを正しく診てもらう必要があります。
この記事では「認知症の相談や検査は、どこに行けばよいのか?」「病院では何科を受診するのか?」といった疑問や、かかる費用など病院に行く前に知っておきたいことを分かりやすく説明します。
認知症の診断は早いほうがいい理由

自分は認知症では?と思っても、同じような症状で別の病気の可能性もあります。
治療すれば治る病気もあるので、まず医師の診察を受けましょう。
例えば、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫などのように、外科的な処置によって症状が一気に改善するものもありますし、甲状腺ホルモンの異常によって起こっている場合は、内科的な対応で治療が可能です。
また、認知症の治療や進行を抑える薬は、治療時期が早いほど効果が期待できます。
認知症に対して、早く治療や介護サービスを受ければ、生活の質を大きく改善できます。
治療・介護の方針を本人と家族が話し合うこともでき、認知症の原因疾患やタイプを理解して、適切な対応の仕方も学べます。
早期に診断を受けて、鑑別診断してもらうことが重要です。
認知症かも…。どこに相談する?
認知症の疑いがある場合は、早めに相談しましょう。
専門医がいる「もの忘れ外来」「認知症外来」、あるいは認知症疾患医療センター※があります。
一般病院の場合は、神経内科・精神科・老年科・脳神経外科を受診しましょう。
かかりつけ医があればまずその病院で。認知症で症状を訴えることが難しい場合でも、これまでの受診状況から治療の相談をすることができます。
かかりつけ医がいない場合で病院選びに迷ったら、地域包括支援センターに相談してください。
※認知症疾患医療センターとは、認知症の人とその家族が、住み慣れた地域で安心して生活ができるための支援の一つとして、都道府県や政令指名都市が指定する病院に設置する専門医療機関です。
本人が病院に行くことを拒否する場合もあります。
かかりつけの医師がいる場合は、医師から本人に受診をすすめてもらうのも良いでしょう。
本人のプライドを傷付けないようにし、家族に対する不信感を抱かせないようにします。
説得するのではなく、誠意をもって本当に心配していることを伝えましょう。
認知症診断の流れ

診察や検査は、認知症かそうでないかを調べるとともに、認知症ならば、原因となる病気は何かを特定するために行います。
①問診
本人と家族、あるいは別々に面談し、詳しく日ごろの様子などを話してもらいます。気になることはすべて伝えましょう。
②心理検査、画像検査(CT・MRIなど)
こうした様々な検査の結果を総合して、慎重に診断をします。
正しい診断は適切な治療へ導く貴重な位置を占めています。
原因疾患により用いる薬や治療法が異なりますので、正しく診断することが重要になるのです。
認知症の検査の種類と方法
認知症検査に対しては、不安を感じたり、緊張する人も多く、中には自分が試されていると思い検査に協力的でない人や抵抗する人もいます。
本人がリラックスできるように、検査はあくまで適切な診断に必要な情報を得るのが目的で、本人を傷つける意図は全くないことを理解してもらいましょう。
改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)
長谷川式認知症スケールは、もっともよく用いられる認知症の心理検査です。
この検査の特徴は、10分程度で行えて質問数も9つと簡単なことです。
満点は30点で、合計点が20点以下だと認知症が疑われますが、軽度の認知症の人は平均して19点程度の点数をとることができるのでこの検査だけで認知症と診断されることはありません。
各質問によってわかることは、記憶力や記銘力など、それぞれ異なります。
答えられない質問によって、どの機能が低下しているのかを見ることができるのです。
長谷川式認知症スケールの質問票を挙げています。

厚生労働省HPを参考に作成
このほかのスケールには、絵を描いたり、紙を折ったりなど、簡単な動作をしながら行うミニメンタルステート検査(MMSE :Mini Mental State Examination)があります。
このような検査は、年に1回くらい行って、点数の変化を確認していきます。
CT
X線コンピュータ断層撮影です。X線で脳の断面図を撮影し、脳の萎縮や変化がないか調べます。
MRI
核磁気共鳴コンピュータ断層撮影です。脳の周りに電磁波を当てて脳の萎縮などをみます。
CTやMRIなどは形態画像検査と言われ、脳の萎縮や脳梗塞・脳出血・脳腫瘍などの脳内の病変の有無などがわかります。

独立行政法人病院機構甲府病院もの忘れ外来HPより
参考画像としてMRIの画像を載せています。
脳の機能を調べる検査がSPECTとPETです。
SPECT
脳血流シンチグラフィーといい、脳の血流量を調べます。
アルツハイマー型認知症では、初期に一定の部位の血流が悪くなるため、この異常が見られることによって早期診断につながります。
PET
アルツハイマー病に特徴的なタンパク質の蓄積や脳内の糖代謝などを描出する検査です。
より早い時期から脳内の変化を検出することが可能です。
これらの検査の結果を基に担当医師が症状を説明します。
この他にも血液検査や心電図、レントゲンなども行われることがあります。
検査費用ってどれくらいかかる?
認知症の検査には、窓口の自己負担額が3割の場合で数百円〜20,000円ほどの費用がかかります。
かなり金額に幅がありますが、神経心理検査が1,000円以下で受けられるのに対し、脳画像検査が種類によっては20,000円ほどかかるためです。
特に医療保険が適用されないPETなどは、検査費用が高額になってしまうのが難点です。(7万円~20万円くらいかかります。)
保険適用の有無によって検査費用は大きく異なるので、予約の際に費用の目安を聞いておくと良いでしょう。
病院に行く前の注意点は?
問診の際に診察では次のようなことが質問されます。メモを作成しておき、医師に渡しましょう。
- 気になる症状はどのようなもので、いつから出はじめたのか
- 症状が出はじめたころに気になるようなきっかけ、病気や事故などはあったか
- 発見してからこれまで進行・悪化した様子はあるか
- これまでにかかったことがある病気、現在、治療中の病気の情報
- 服薬中のお薬、何をいつから服用しているか
- 毎日の生活(食事・日中の行動・睡眠など)の様子
- その他、家族として心配なこと、気がかりなことは全て伝える
別疾患のかかりつけ医に紹介状や医療情報をもらえる場合は、ぜひもらっておきましょう。
診断結果(告知)はどのように伝えられる?
告知は様々な検査結果を総合して、2〜3回目の診察時に医師が行います。
告知の際には、本人の状態を考慮して一緒に告知を受けるか、家族だけに伝えてもらうか検討して、あらかじめ医師に伝えておきましょう。
これからの病気の経過の見込みや治療方法や方針、薬の説明、生活上のアドバイスなどを担当医師に確認します。
また、告知によって本人がショックを受けた場合の精神的ケアについても聞いておきましょう。
まとめ 一人で悩まない
告知後の相談先も、現在は多様です。
病院の医療相談室、市区町村の介護保険や高齢者福祉の窓口、地域包括支援センター、すでに介護保険サービスを利用している場合は、ケアマネージャーなどにも相談できます。
認知症とともに十分に自分の人生を楽しめる人も増えてきています。
早期発見できたからこそ、ご本人とご家族が今後どのように生きていきたいのかを話し合えたケースも多いのです。
認知症の症状の進行を遅らせる薬もありますし、本人や家族を支えるサービスも充実してきました。
早期受診で病気とともに生きる方法を医師に確認し、本人を支えていきましょう。
投稿者プロフィール

- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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