自分のことを認識してくれない、会話が通じない家族の介護を続けている、懸命に世話をしているのに、拒絶されたり罵倒されたり…。他の家族やきょうだいが手伝ってくれず1人で頑張っているということもあるかもしれません。
認知症の家族を介護している人は、孤独を感じ、悲しさや寂しさが募っても、それをどのように消化すればよいのかわからずに、「さっきも言ったでしょう!」とか「いい加減にしてちょうだい!」とか、「なぜそんなことをするの?」とか、イライラしたり腹が立ったりすることがあります。
相手の行動にイライラすると、その相手とは関わりたくなくなります。
関わりを必要最小限にしていると、相手は寂しさを満たされずに、ますます介護者を煩わせる行動をとりイライラさせられる。
そんな悪循環から抜け出すために、少しだけ考え方を変えられる方法を提案しますね。
人はなぜ怒る?
怒りの本当の原因は、相手でも環境でも状況でもなく、自分の中にあるそうです。
なぜなら怒りの感情は、『こうあってほしい』『こうあるはずだ』『〜あるべきだ』という、自分の理想や期待、願望が裏切られたときに生まれるものだからです。
こうあってほしいという期待や理想が裏切られ、分かってほしいと思うことが分かってもらえなかったときに怒りは生まれます。
怒りのピークは長くても6秒
人間が怒りを覚えるとき、脳内では興奮物質のアドレナリンが激しく分泌されています。
そのことにより興奮してしまい、冷静ではいられなくなってしまうのです。 しかしこのアドレナリン分泌のピークは、怒りを発してから6秒後と言われています。 つまりその最初の6秒間をやり過ごしてしまえば、その後は徐々に冷静さを取り戻すことができるのです。
しかしその「6秒をやり過ごす」ことは決して簡単ではありません。
そんなときに役立つのが「他のことに意識を向けること」です。 一番簡単な方法は、心の中で6秒カウントするというものです。
数を数えるといった単純な作業を行うことで、意識を自然とそちらに向けられるのです。
他にも、両手でグーパーする、水を飲む、別の場所に移動するなども有効な方法です。
自分の感情にOKを出す

”怒り”自体はけっして悪いものではありません。生活をしていれば怒ることが必要な場面は、たくさん出てきます。
もし、怒っているということに気づかなければ、自分は困っていることに目も向かず、誰に助けてもらおうか、どうやって困った状況から脱しようかということに考えを進めていけない、つまり、「自分にとって困った状況がそのまま放置される」ということになるのです。
今の自分の感情を「OK」と認め、「できればこうなっていきたい」との思いがあればそれでいいと思います。
認知症の症状が進行していく家族に対し怒りを感じたり「なぜ私がこんな辛い思いをしなければならないのか」といった絶望感を抱いたり、介護者はこのように混乱しながら孤立してしまいがちですが、 1人ではできない認知症ケアです。
今、自分がどんな感情をもって困っているかを、できるだけ多くの人と話して、辛い気落ちを少しでも楽にすることが大切になります。
マイナスの感情に振り回されないために
認知症の有無にかかわらず人に笑顔で接することは大切とされています。
笑顔は、私たちが心地よく過ごすために必要な、簡単で効果的な要素です。
笑顔は認知症をもつ相手のためだけではなく、介護をする人自身のアンガーマネジメントにも有効な方法です。
怒っていても笑顔をつくることで、怒りが薄れて楽しい気持ちに置き換わっていきます。作り笑いでもイイんです。
心の負担を軽減する心得

介護者には、どうしても心への負担がつきまとい、怒りなどのネガティブな感情が生まれやすくなります。
その感情をマネジメントする方法をお伝えします。
①抱え込まない
認知症のケアは決して1人ではできないことを知りましょう。
自分で考えることは重要ですが、困ったら小さなことでも誰かに相談してください。
「人に助けを求めるのは面倒だ」「自分のやり方でいいんだ」と思い込まず、手伝ってもらいましょう。恥ずかしがらずに話し合いましょう。
②自分のための時間を作る
認知症の人は、認知力こそ低下していますが、介護者の気持ちには敏感な場合があります。
介護保険などを利用して介護の時間を減らしたり、趣味や自分が楽しいことに時間を避ける余裕をもちましょう。 がんばり過ぎず、十分な睡眠と休息を取り、自分のことを大事にすることは、心の安定にとても大切です。③他の人と比べない
認知症は千差万別。原因疾患も、脳のどこに障害を受けるかも、その程度もそれぞれ違います。
比べてしまうと「どうしてお母さんは…」「なぜ私だけこんなことに…」といったネガティブな考え方になってしまいます。ありのままの家族と楽しく過ごすことが一番よいことだと思います。
④不満や辛さなどの弱音を吐く
「介護する人は、いつも明るくいなければならない」などと思って、自分の辛い気持ちに気づかぬふりをしてしまう人もいます。
しかし、実際に介護をする中で生まれる辛い気持ちは、否定されるべき感情ではありません。
悲しかったり辛かったりする自分の思いを、聴いてくれる場所を知っておきましょう。
④いつかは終わる
認知症の介護は「先が見えない」「終わりがない」と思いがちです。だけど、徘徊をしてしまう人は足の機能が衰えれば、徘徊ができなくなります。また、「もの盗られ妄想」は、症状が進行すればなくなっていきます。
寂しいけれど、認知症の介護は「終わりが来る」のです。
介護で感じる苦しみは「いつか終わるもの」と考えることは、今現在のストレスの緩和に役立つかもしれません。
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きっと少し楽になりますよ。
まとめ 「doing(何ができるか)」でななく「being(そこにいること)」
身近な人には、『悲しい』『さみしい』といった気持ちを、素直に言えないことがあるかもしれません。
でも、そんなときこそ『分かってほしい気持ちは何なのか』に目を向けて、それを相手に伝えるにはどうしたらいいのかを、落ち着いて考えるようにしましょう。
感情的になるのではなく、気持ちを言葉にすることをおすすめします。
力を抜いて、いろいろな人の力を借りて自分自身が笑顔になりましょう。
最寄りの包括支援センターでも役所の高齢者担当課でも、ケアマネージャーでも、近くの民生委員さんでも、仲の良い友達でも、話したいと思ったら話してみましょう。
誰にとっても無関係のことではないのです。
そして、そこにその人が居てくれる喜びを、また感じてくださるといいなあと思います。
同じ体験をしている方に向けて「つぶやいて」みませんか?
投稿者プロフィール

- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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