蒸し暑い夏をさわやかにする多肉植物ー メセンブリアントイデス(旧メセンブリアンテモイデス)

-Bulbine mesembryanthoides

今回の’ホッと’ 多肉植物は、管理もしやすく、蒸し暑いこの季節にもさわやかな姿を楽しませてくれる、ツルボラン科ブルビネ属の「メセンブリアントイデス(mesembryanthoides)/ (旧)メセンブリアンテモイデス (mesembryanthemoides) 」のご紹介です!


メセンブリアントイデス(以下、俗称の’メセブリ’と表記)は南アフリカの北ケープ州から西ケープ州にまたがる半砂漠地帯の砂地や岩場に生きる半球根性(semi-tuberous)の植物です。

以前ご紹介したメセンの仲間たち(リトープス*やコノフィツム*など)と同じく、透明度の高い葉先から光を取り込んで光合成を行うおもしろい植物。
※名称が混乱している植物でもあります。詳細は記事のおわりに。

↑左:すりガラスのような葉の上部から取り込んだ光を、葉内部の透明な貯水細胞を通じて奥へ引き込み、右:葉の底部にて光合成に利用するしくみ。


また、その特徴はなんといっても、この葉の幽美な透明感と不思議な「青光り」。


瑞々しい果肉のような葉に宿るこの鮮やかな輝きは他の多肉植物にはなく、この光を見たくて栽培を始める方もいるほどです。

↑折れたのでナイフでカットし直した葉。角度によって葉の内部がキラキラと青色〜ターコイズグリーンカラーに変化する。まさに宝石のよう。


このキラキラとした青光りは、メセブリ特有の独特な形をした貯水細胞や細胞膜での光の反射または干渉によるものと推測されます。

↑ハオルチア属オブツーサの断面図と比較。メセブリは内部の貯水細胞が一部面状になっているため独特の光の反射等を起こしやすいのではと考えられる。


ちなみに、出たばかりの葉や小苗などサイズが未熟な葉の場合はオレンジ色や濃い黄色に光ることもあります。
こちらもとても綺麗です!


こういった興味深い特徴を持ちながらも、苗全体の草丈は4センチ程度・径も同じく4~5センチ程度と、成長してもとても小柄な植物ですので、広いスペースがなくても栽培可能。
季節的な栽培のコツさえつかめば、とても育てやすい植物です。


◯育て方のポイント◯

原産地は冬季にまとまった雨の降る半砂漠地帯で、乾燥)と降雨:年間雨量100~200mm程度)に大まかに分かれているような気候帯です。
(自生地のひとつである西ケープ州ウースターでは、夏は最高気温40℃〜冬は最低気温-1℃ (2021年)という環境で、半砂漠のため1日の日較差も大きめのようです。)

そのなかでメセブリは1年を通して

・雨の量が増える冬の間に青々とした葉をゆっくりと伸ばし(成長期)
・葉が展開しきった後に花を咲かせ
・徐々に暑さが増してくる梅雨頃には地上部の葉をやや萎ませて成長や消耗を抑え真夏を乗り切る(休眠期)

こういったサイクルで育ちます。

ですので日本でもこれに準じた育て方で水やりや置き場の管理などを行うとうまく育ちやすいです。


成長期(初秋/9月 〜 梅雨前/5月頃)
暑さの峠を越した9月ごろから徐々に瑞々しい葉をのぞかせ、成長期が始まります。
メセブリは太い根に水分や栄養を貯められる半球根性の塊茎植物ですので乾燥にはとても強く、夏場の休眠期はほぼ断水しても大丈夫。
休眠があけて新葉が出てくる頃から様子を見ながら少しずつ水やりを再開し、冬季の成長期には週1回~隔週程度たっぷりと潅水を行います。
日照にはさほどうるさくありませんが、陽が弱すぎると葉がだらんと伸びて不恰好になりますので、20~30%ほどの弱遮光でしっかりと陽に当てることをお勧めします。

↑種子から育てて過保護にしていたため、徒長しダランとしてしまった苗。根の塊茎部は順調に育っている様子。


真冬は霜や雪がかからないように注意をし、氷点下になりそうな夜は室内に入れてあげると安心です。自生地では多少の降雪もあり、わが家でも屋外無加温(-4℃まで)でなんとか育てていた時期もありましたが、葉が変に傷んでしまうのでおすすめしません。

休眠期(梅雨時/6月 〜 夏/8月頃)
しっかり陽に当たっている苗ですと、気温が上がる5月あたりから少しずつ葉が萎み始めるので、それに合わせて徐々に水やりの間隔をあけていきます。
夏場は半日陰程度の風通しの良い場所に置き、ほぼ断水しても大丈夫ですが、涼しい夜などに軽く散水すると細根の消耗を防ぐことができます。ただし特に高温時の蒸れはとても苦手ですので、その後しっかり風に当たるようにしてあげてくださいね。(不安な場合は断水を!)

↑休眠が近い苗。よく陽に当てて育てると休眠前には葉上部がしっかりと潰れて地面に潜るような格好に。(弱光で育てたり、まだ小苗の場合は葉が潰れず休眠する場合もあります)。「日光のエネルギーは取り込みつつも気孔からの蒸散(乾燥)は物理的に防ぐ」という、乾燥地帯で進化した植物ならではの構造。


休眠期に入る直前の5月頃がメセブリの花期となります。
細い針金のような花茎を20センチほど伸ばして、黄色い花を下から順番に咲かせます。
(葉が潰れだす頃に花芽が上がるので、夏場の自生地ではこの花茎を目印にどこにいるかを探すのだそう。)


別の株があれば花粉をつけ合って交配することも可能です。(自家受粉はできないようです。)
結実率や種子の発芽率は他の多肉植物に比べてかなり良い方だと感じます。
ただし、ひとつの花自体は基本1日~もって2日程度しか開きませんので、交配のタイミングを逃さないよう気を付けてくださいね。


種子ができると1週間ほどで花の付け根が膨らみます。さらに熟れて乾燥すると鞘が開き種子が風で飛んでいってしまうので、あらかじめテープを張ったりネットを被せるなど保護しておくと安心です。

種まきは成長期が始まる秋がおすすめ
また、多肉植物にしては初開花までの期間がとても短く、播種から一年半ほどで花を咲かせてびっくりすることもしばしばです。

↑播種から丸1年程度の実生苗。画像左下のサイズでも開花します。


「自生地では個体としての長生きはあまりしない」との記事を読みましたが→(参考リンク*)、その分、結実率や発芽率の高さと、この開花までの早い成長サイクルで種を存続させているのかなと想像した次第です。
日本で育てる場合も、夏の暑さに負け休眠から起きずにそのまま枯れたり、うっかり真冬の寒さに当たって枯れてしまったりすることがありますので気を付けて、可能であれば種子から沢山育ててみてくださいね!


最後に、このメセブリはしばしば「mesembryanthemoides メセンブリアンテモイデス」と「mesembryanthoides メセンブリアントイデス」という二通りの名で流通し、名称が世界的にやや混乱しています。

調べてみたところそもそもの原因としては、メセブリの発見者であるイギリスの植物学者 James Bowie氏からその苗を受け取った同じ植物学者のAdrian Hardy Haworth氏が1825年の新種紹介記事(↓下の画像)で使用し、その後も様々な書籍等で使われてきた名前「mesembryanthoides メセンブリアントイデス」と、世界最大の植物園・キューガーデンやハーバード大学などが現在共同運営する植物データベース『IPNI』に後に登録された学名「mesembryanthemoides メセンブリアンテモイデス」が違っていることにあるようです。

↑1825年に出版された、Haworth氏によって書かれた初のメセブリ紹介記事。「Philosophical Magazine and Journal 第66巻P31-32」Biodiversity Heritage Libraryより。


IPNIに確認を取ったところ「確かに元の表記はmesembryanthoidesであるが、筆者は記事の中で明らかにmesembryanthemum/メセンブリアンテマム属との類似性を示しているため綴りの誤りとみなし、国際命名規約(ICN)に基づいて正しい表記(mesembryanthemoides)に訂正し登録した」とのことでした。IPNIの記録に注釈を残すとのことですので、ご興味のある方はご確認ください。
とはいえ、他国では「初めから使われてきたものが正しい」とする意見も未だ多いようです。
日本ではおおむね「メセンブリアンテモイデス」の方で流通することが増えてきているように感じます。

※追記 ↑この確認・記事の投稿から数日後にIPNIより再度連絡があり、今回再調査の結果、当時の記事内の’mesembryanthoides’ 表記は mesembryanthemum -oides を指したもので綴りのミスだと把握をしていたが、実際はmesembryanthus -oides を指したものだったと確認がとれ、綴りのミスではなく意図的な表記だったとして、登録名が当時の記事の名である『mesembryanthoides 』に改めて変更されたとのことでした(2022年7月)。それに伴って掲載された上記注釈も削除されましたので、打消し線にて内容を訂正しておきます。

※Haworth氏の当時のジャーナルは→こちら。(27ページから本文)
IPNIのメセブリ登録情報は→こちら。

話が長く、そしてややこしくなってしまいましたが…読んでくださりありがとうございます!
メセブリはネットショップを中心に苗や種子の購入が可能です、本当に美しい植物ですのでぜひぜひ実際に目で見て楽しんでいただきたいと思います。

こちらを書いている間に記録的な早さの梅雨明けを迎えてしまい、これから人間にも植物にとっても過酷な季節となりますので、無理をせず何卒ご自愛くださいませ!

ー今月のひとことー

朝食は毎回簡単にシリアルと決めているのですが、最近は頂き物の真っ赤なホットサンドメーカーに色んな具を挟んで食べています。すっかり虜です。スーパーでは「挟めそうか否か」という視点でお買い物をしています。
そして毎朝の楽しみが増えホットサンドメーカーに愛着が湧いてしまったせいか、キッチンを通るたび抱っこをせがまれているような気分になります。疲れているのでしょうか。

profile


S.K
広島生まれ広島育ち。進学先の京都で多肉植物と出会いその魅力に触れ、狭小スペースでの栽培に試行錯誤しながらも、父にもらった一眼レフカメラでそれらの栽培記録を収めるように。その後社会人となって10数年、未だ稼いだお金をせっせと緑に変え土に埋める生活が続いている。

関連記事

  1. ランナーを伸ばし群生するセンペルビウム!路地植えも可能で耐寒性抜群

  2. ハオルチア オブツーサ -Haworthia obtusa-

  3. 葉の重なり方が特徴的!幾何学的な造形美が魅力の多肉植物クラッスラ

  4. コチレドン 熊童子 -Cotyledon tomentosa ssp. ladismithiensi…

  5. クリスマスとお正月を多肉植物と楽しむ、おすすめ多肉アレンジ!

  6. リトープスは日光を好み実生や交配が比較的容易!異名「生ける宝石」の魅力

  7. 介護疲れを癒したい人にこそ育てて欲しい多肉植物の魅力と私の介護記録

  8. うさぎシリーズも人気!モケモケな葉や奇妙な色柄が特徴的カランコエ

親の介護が必要となったら利用したい 介護サービスと利用の流れ

家族介護に必要なもの、揃ってます キャプスショップ

介護福祉の文具マーケット キャプス

脳トレブックレット

脳トレブックレット特集バナー

特集コンテンツ

  1. その58 月に一度の便りが頼り
  2. その57 お達者だからクラス替え
  3. その56 生きますからよろしく
PAGE TOP